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【相談】業績好調で大幅上昇したサテライトの個別株、富裕層なら「売る」か「持つ」か?

【相談】業績好調で大幅上昇したサテライトの個別株、富裕層なら「売る」か「持つ」か?

Q. ご相談者様からの質問

資産のベースを固める「コア運用(インデックスや投資信託による国際分散投資)」とは別に、リターン向上を目的とした「サテライト運用」として数年前に購入した個別株があります。

株価は購入後は緩やかな上昇だったものの、ここ最近の企業業績の拡大と良好な市場環境を背景に急激に大幅上昇となりました。業績そのものも改善しているため、このまま保有を続けてさらなる上昇を期待したい気持ちもあります。

一方で、サテライト運用という位置付けや急激な上昇を考えると、「そろそろ利益確定を検討すべきではないか」という思いもあり、売却すべきか保有を続けるべきか判断に迷っています。

何%上昇したら売るべきなのか、一度に売るべきなのか、それとも分割して売るべきなのか。ファミリーオフィスなどで資産運用を行う富裕層が実際に行なっている方法や考え方があれば教えてください。

A. 当社からの回答

まず結論から申し上げると、ファミリーオフィスで資産管理を行うような富裕層の多くは「株価が何%上がったから売る」という単純な数値だけで判断を行うことはありません。

彼らが最も重視しているのは、「その資産が今後も、自分の総資産配分の中で適切な位置付け(比率)にあるか」という視点です。

コア・サテライト戦略において、サテライト銘柄が大きく上昇した場合は素晴らしい成功と言えます。しかし、成功したからこそ、「その利益をどのように管理(コントロール)するか」が重要になります。

洗練された投資家が実践している、3つのアプローチをご紹介します。

1. 富裕層は「利益の管理」を重視する

株価が大きく上昇し、含み益(利益)が膨らんでくると、多くの投資家は無意識のうちにある心理的な罠に陥りがちになります。

行動経済学では、これを「ハウス・マネー効果(House Money Effect)」と呼びます。

投資で利益が出た際、その利益を「自分の大切な投資資金」ではなく、「市場から得た、最悪なくなってもいいお金(=あぶく銭)」のように錯覚してしまい、普段よりも不当に高いリスクを取ったり、大雑把な保有を続けてしまったりする心理傾向のことです。

富裕層はこのバイアス(感情のブレ)を排除するために、あらかじめ売却ルールを設定している方が少なくありません。例えば、「株価が2倍になったら半分売却する」というルールです。

  • 100万円で購入した株が200万円になった場合: 半分(100万円分)を売却すれば、当初の投資元本を完全に手元に回収できます。
  • 残りの半分の株式: 自分の持ち出しリスクが完全にゼロの状態で保有を続けることができるため、「ハウス・マネー効果」による過度な楽観や焦りに振り回されることなく、精神的余裕を持って長期保有の恩恵(配当など)を受け続けることができます。

こうしたルールで「感情の暴走」を管理するというアプローチは、非常に参考になるかと思います。

2. 株価ではなく「割安度(安全域)」が消えていないかを見る

もう一つ重要なのは、「なぜその銘柄を買ったのか」という原点に立ち返ることです。

もし購入時に「業績に対して株価が割安だった」という理由で投資したのであれば、現在も同じことが言えるかを確認する必要があります。

バリュー投資の父と呼ばれるベンジャミン・グレアムは、「マージン・オブ・セーフティ(安全域)」という考え方を提唱しました。本来の価値より十分に安い価格で購入することで、投資の失敗確率を下げるという思想です。

これを今回の局面に当てはめると、逆のことが言えます。 いくら企業の業績が良くても、株価が大幅に上昇し、数年先の成長まで過剰に織り込んでいるような状態であれば、「安全域は極めて小さくなっている(=リスクが高まっている)」ということです。

PERやPEGレシオ、競合企業との比較などを通じて「今でも割安なのか」を確認し、もし安全域がほとんど残っていないのであれば、それは売却を検討するきわめて合理的な理由になります。

3. 一度に売るより、「分割売却」を選ぶ投資家も多い

売却を決断した場合、「一度に売るべきか」「何回かに分けて売るべきか」という技術的な悩みが生まれます。実務上、多くの洗練された投資家が活用しているのが「分割売却」です。

【分割売却(売り上がり)の一例】

  • 3分の1を、今すぐ売却して利益を確定する
  • 3分の1を、次の目標株価到達時に売却する
  • 残り3分の1を、成長を見守るために長期保有する

株価の天井(ピーク)を正確に当てることはプロでも困難です。そのため、一度にすべての判断を下すのではなく、複数回に意思決定を分散させることで、「あのとき売っておけばよかった」という後悔を減らしながら、手堅く利益を確定させることができます。

相場の世界では古くから「売り上がり」という王道のアプローチとして知られており、現在でもヘッジファンドや富裕層の資産運用実務で広く活用されている手法の一つです。

まとめ

サテライト運用で成功した銘柄に対して重要なのは、「さらに上がるかどうかを当てること」ではありません。

重要なのは、「得られた利益を、いかに資産全体の成長(コア資産への還流など)につなげるか」です。

  • 利益の一部を確定して、守りの「コア資産」へ戻すのか。
  • 元本だけ回収して、残りはリスクフリーな資産として長期保有するのか。
  • あるいは、企業価値が拡大し続けると判断してそのまま保有を続けるのか。
  • 売却益をさらに成長性が高いと思われる企業やセクターに振り分けるのか。

投資家のスタンスや目的によって正解は一つではありません。ただし、感情ではなくルールに基づいて客観的に判断することは、長期的な資産形成において非常に重要な考え方です。

富裕層の資産運用とは、銘柄選びの巧拙以上に、「利益が出た後の管理の美学」にこそ特徴があると言えるでしょう。

▼回答者プロフィール
渋谷豊(ファミリーオフィスドットコム 代表取締役)

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