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米CPIインフレ鈍化が誘発する日米市場の地殻変動 ― 株高と円キャリー取引の底力

米CPIインフレ鈍化が誘発する日米市場の地殻変動 ― 株高と円キャリー取引の底力

米7月CPI、市場予想通りの鈍化

2026年8月12日(米国時間)に発表された米7月の消費者物価指数(CPI)は、インフレの着実な鈍化を示しました。総合CPIは前月比0.1%上昇(前年同月比3.4%上昇)と事前予想に一致し、前年同月比の伸びは前月の3.5%から明確に鈍化しました。コアCPIも前月比0.2%上昇、前年同月比2.5%上昇と予想通りで、2021年3月以来の低水準に並びました。

鈍化を主導したのはエネルギーとガソリン価格の2カ月連続下落です。中東情勢の緊迫でガソリンが一時1ガロン=4ドルを超える場面もありましたが、月平均では6月を下回りました。食料品も3月以来の下落となり、寄生虫の集団感染拡大によるレタス価格の過去最大の下落や、牛ひき肉価格の2020年以来の大幅下落(1.6%)が寄与しました。

一方、家賃の主要指標は2つとも0.3%上昇し、「コンピューターインフレ」と呼ばれる財価格の反発も目立ちました。ソフトウェアおよび関連用品の価格は前年同月比21.2%上昇と過去最大を記録し、コンピューターや周辺機器も4年余りで最大の伸びとなりました。データセンター建設競争によるメモリーチップ不足や、人気消費者向け製品の値上げが背景にあります。

金融政策見通しの緩和と米国株の明暗

今回の穏やかな結果はFRBへの早期利上げ圧力を和らげ、金利スワップ市場が織り込む10月の利上げ確率は発表前日の約75%から約60%へ急低下しました。12月までの利上げは引き続き完全に織り込まれています。9月15、16日のFOMCまでに追加の雇用・インフレ統計や、ジャクソンホール会議でのウォーシュFRB議長の発言を見極める時間的猶予が生まれた形です。

米国債利回りは低下し、株式市場は当初上昇して始まりましたが、その後の動きは二極化しました。ダウ工業株30種平均は前日比21ドル58セント安の5万3770ドル27セントと3日続落しました。決算後に高値圏にあった大型ハイテク株への利益確定売りに加え、CEOの病気療養に伴う体制移行懸念からホーム・デポが3%超下落したことが押し下げ要因となりました。対照的にナスダック総合株価指数は3営業日ぶりに反発し、前日比143.042ポイント高の2万6588.488で終えました。エヌビディアや、好決算を受けたAIインフラ関連銘柄の上昇が相場を支えました。

3東京市場の最高値更新と円キャリー取引の強さ

同じ12日、東京市場は米CPI発表に先立つ日中の取引で大きく動きました。TOPIXは前営業日比0.94%高の4139.00と6日続伸し、約1カ月ぶりに終値ベースの史上最高値を更新、東証プライムの時価総額は1363兆円に達しました。日経平均も0.83%高の6万7524円06銭と続伸し、日足では5日移動平均線が25日線・75日線を上抜く「ゴールデンクロス」を形成、4月初旬のAI・半導体ラリー起点以来の強い買いサインとなっています。この東京市場の上昇は、米インフレ指標の結果を待たずに、日銀が10日に公表した7月会合の「主な意見」を受けた国内の利上げ観測強化が主因でした。

株高を牽引したのは銀行株です。利上げペース加速観測を背景に、メガバンクや地方銀行株が軒並み買われました。長期プライムレートの引き上げ発表や、7月のマネーストック(M3)の2カ月ぶり増加も追い風となりました。

こうした株高の底流にあるのが円キャリー取引の強靭性です。7月末の日米協調為替介入で一時1ドル=155円台まで円高が進みましたが、円相場はその後の海外市場も含め12日時点で再び159円台半ばまで円安に戻しました。市場関係者が算出するキャリー取引の投資効率指標は、介入直後のマイナス幅縮小から再び拡大に転じ、2008年のリーマンショック前と同水準のキャリー優位環境を維持しています。海外投資家による為替ヘッジの円売りが円安を助長し、それが再びキャリー取引を誘発する好循環が働いています。

金・原油市場を揺さぶる為替と地政学リスク

米CPI発表後、利上げ停止観測による米長期金利低下見通しを受け、ニューヨーク金先物は4日続伸し、一時1トロイオンス4502.7ドルと約2カ月ぶりの高値を付けました。これに円安戻りの流れが重なり、国内金価格は乱高下しました。国内大手貴金属販売店の店頭小売価格は、介入直後の年初来安値2万2000円台から1週間あまりで1グラム2万5000円台へ約1割急騰し、国際相場の上昇率(8%台)を上回る歪みが生じました。

原油相場(WTI9月物)は1バレル83.27ドルと小幅ながら5日続伸しました。国際的な需要見通しの下方修正にもかかわらず底堅いのは、中東情勢悪化によるエネルギー輸送の停滞が長期化しているためです。米国とイランのホルムズ海峡開放を巡る交渉は停滞し、イラン側は戦闘終結条件が受け入れられない限り封鎖を解除しないと警告、同海峡の通行船舶数は緊迫化前の130〜140隻から8隻へ激減しました。迂回路の紅海でも武装組織による封鎖宣言や攻撃が続き、供給不安が原油相場を支えています。

今後の注目点

米国では13日発表の生産者物価指数(PPI)、26日発表の個人消費支出(PCE)価格指数が焦点です。特に9月に予定されるPCE価格指数の算出方法変更(ソフトウェア、法務サービス、投資助言等)は、現在CPIを上回るペースで推移するコアインフレ率の今後のトレンドやFRBの利下げ議論を左右し得る重要な要素です。日本では日銀の利上げペースと追加の円買い介入リスクが引き続き警戒材料であり、地政学的な供給ショックとあわせ注視が必要です。

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