本日のテーマは「金価格 まだ上がる?1ヶ月で+15%」です。
この1ヶ月で約15%も大幅に上昇した金価格が今後も上昇するのか、ドルインデックスや金融政策、需給面から見ていきたいと思います。ぜひ最後までご覧ください。
急速に上昇する金価格

まず、金価格がどれくらい上昇しているのかを簡単に見ていきます。
黄色いチャートは、ドル換算した金価格です。現在は1オンスあたり4,660ドルほどまで上昇しています。一時5,000ドルを超えた高値までは回復できていませんが、1ヶ月で約15%と急速に上昇しており、マーケットでは高値更新への期待が集まっている状況です。
ベッセント発言で進んだドル安は続くのか?
金価格上昇のきっかけになったと言われているのが、ベッセント財務長官が示した「バイバック」、長期国債の買い戻し政策です。

バイバックは、長期国債を買い取って短期国債を発行し直すというものです。これによって市場参加者の間では、「長期金利が低下するのではないか」という見方が広がりました。
長期金利が低下すれば、結果的に金利低下=ドル安につながります。ドル安は金価格の上昇要因となります。
以前、今後の金価格を見るうえではドルの動きを見ていく必要があるとお伝えしましたが、実際にドル安が進み、金価格も上昇する状況となっています。
赤いチャートのドルインデックスを見ると、ベッセント財務長官の発言以降に下落し、金価格は一段高となっています。
今後はドル安がさらに進むのかに注目する必要があるでしょう。
ドル強気ポジションは発表前から縮小
ドルの先行きを見るうえで、非常に重要なのがドルのポジションです。

ドルの強気ポジションは、今回の発表前からすでに縮小していました。ここが1つのポイントです。
こちらは機関投資家のドルポジションを表したものです。7月時点では、ネットで約2.2万枚のドルロングポジション、ドル買いのポジションがありました。それが8月18日時点では約1.5万枚まで減っています。7,000枚減少したことになりますが、それでも1.5万枚ほどのドルロングが残っています。
過去最高水準ではないものの、まだドルロングが積み上がっている状態です。
今後、何らかの材料によってドルのロングポジションを閉じる動きが強まれば、ドルの下落につながります。結果、金価格が上昇する需給環境になりやすいと考えられます。
ドルポジションから見ると、金価格にはまだ上昇余地があると感じています。
米ドルを左右するのはバイバックではない
ベッセント財務長官が示したバイバックが今後の金利を左右し、結果としてドルの方向性を決めるのではないかという論調も多く見られます。

ただ、私はバイバックそのものの影響は、ほとんどないと考えています。
今回のバイバックは、あくまで長期国債の流動性を改善するための債務管理策です。債務そのものを減らす政策ではありません。
長期国債を買い戻して短期国債を発行するため、債務自体は変わらないわけです。
発表直後は金利が低下し、結果としてドル売り、金買いが進みました。
しかし、バイバックは財政赤字や国債の増発、インフレといった長期金利の構造的な上昇要因を改善するものではありません。つまり、長期的にドルを大きく左右する要因ではないと認識され始めていますし、今後も広がっていくと考えています。
今後ドルを左右する材料としては、ドルのロングポジションに加え、バイバックよりも、今後発表される財政健全化策に具体性があるのかが重要になってきます。
では、財政健全化策とはどのようなものなのでしょうか。
財政健全策でドルは信認回復できるのか?
ベッセント財務長官はCNBCに出演し、歳出と歳入の両面から財政健全化を進めていく方針を示しています。
財政をしっかり健全化することで、ドルへの信認も維持できると暗に示しているわけです。

具体的な金額や政策はまだ示されていませんが、「近いうち」というのは今週か来週だと言われています。おそらく来週までには具体策が見えてくるのではないかと思います。
ベッセント財務長官は、不正や浪費とされている部分を削減することで、数千億ドル規模の歳出を削減できるとコメントしています。
この数千億ドルという金額は非常に重要です。
数千億ドルといっても、1,000億ドルから9,000億ドルまで幅があります。
仮に中間となる年間5,000億ドルを恒久的に改善できた場合、米国の財政赤字のGDP比は1.5ポイント改善する計算になります。
下のチャートは、G7各国のGDPに対する財政赤字の割合を示したものです。
米国の赤いチャートを見ると、財政赤字はGDP比でマイナス7.5%となっており、かなり大きな赤字です。他の先進国と比べても、明らかに財政状況が悪いことがわかります。
こうした状況を背景に米ドルが売られ、結果として金価格が上昇しているのです。
仮にベッセント財務長官が財政健全化策を打ち出し、年間5,000億ドルの恒久的な改善を実現した場合、現在のマイナス7.5%はマイナス6%程度まで改善することになります。
ただ、ご覧いただくとわかるように、マイナス6%でも他国には追いつきません。
さらに削減額を7,000億ドルまで増やした場合、財政赤字のGDP比はマイナス5.3%まで改善します。それでもG7で最下位であることには変わりません。
一方で、7,000億ドルや9,000億ドル規模になってくれば、他国との差はかなり縮まるため、マーケットへのインパクトも大きくなります。
今週から来週に予定されている財政健全化策で、年間5,000億ドルを超えるような具体案が出てくるのか。ここがドルの立て直しの意味でも注目すべきポイントだと思います。
ただ、米国の財政赤字を詳しく見ていくと、社会保障費や医療費、国防費、利払いなどがあります。
2026年時点では、利払い前の赤字だけでもGDP比でマイナス2.6%あることを考えると、何らかの対策を打ったとしても、本当に財政赤字をマイナス5%近くまで改善できるのかという点では、かなり非現実的だと言われています。
財政健全化策は中身をしっかり確認しなければ、マーケットがどのように反応するのかはわかりません。財政健全化策の発表後にマーケットがどう反応し、ドルが上がるのか、下がるのかを確認する必要があります。
これが目先の金価格を大きく左右する要因になるでしょう。
中国は米国債を減らし、金を積み増す
もう少し中期的な需要を見てみます。

米国債の保有額で世界1位だった中国は、現在3位まで保有額を減らしています。現在の保有額は約6,330億ドルです。
特に今年2月、中東情勢の緊迫化以降に600億ドルも減らしており、かなり強いペースで米国債を減らしています。赤いチャートを見ると、その減少幅の大きさがわかります。
その分、中国は継続的に金を買っており、外貨準備に占める金の割合は8%近くまで上昇しています。これは過去最高水準となります。
この流れを考えると、今後も米国債を売って金を買う動きが続く可能性があります。
中国だけでなく、ロシアやインドなど各国の中央銀行でも金の買い需要は強くなっています。こちらが中期的には金価格を押し上げる要因が依然として強いと言われる背景となります。
中国の投資家も金市場に回帰
もう1つ注目したいのが、中国の個人投資家です。現在、金への積極投資が復活していることが知られています。

上海先物取引所における金の建玉は40万ロットまで急増しています。これは2025年9月以来の高水準です。建玉が急増しているということは、新たな資金が金市場に流れ込んでいることを示します。
改めて金市場に興味を持つ投資家が増えている状況で、過去5年間を見ても、2日間の増加額は5位に入るほど大きな資金流入となっています。
かなりマーケットが熱くなっていることが分かり、中国の金需要は今後も強そうだと考えられます。
急速に進むポジション調整には注意
最後に、注意点としてお伝えしたいのが、世界の金ETFへの資金流入です。
2025年9月から2026年3月にかけて、金価格は大きく上昇しました。6ヶ月間で、金ETFには1,850億ドルの資金が流入しています。

一方、直近5週間では680億ドルが流入しています。前回は6ヶ月、今回はわずか5週間です。週平均で比較すると、資金流入ペースは約1.9倍です。前回、金価格が急激に上昇した局面よりも1.9倍のペースで資金が入っていることになります。
それだけに、急速に積み上がったポジションの調整には注意が必要です。
まとめます。
金価格は、短期的には上昇スピードが速いことは間違いありません。
そのため、ポジション調整には注意が必要です。急激に上昇した分、調整が起きた場合には少し深くなる可能性があります。
ただし、ドルロングの縮小によるドル売り・金買い需要があります。
さらに、今回の財政健全化策で米国の財政懸念を解消できなければ、ドル売り・金買いにつながる可能性があります。
加えて、中国の米国債離れや、世界の中央銀行・投資家による金需要もあります。
こうした金需要の高さを考えると、金を買い支える構造はまだまだ崩れておらず、中長期的な強気シナリオは変わっていないと考えられます。
一方で、短期的な過熱には少し注意が必要です。
中長期で上昇基調を描いている方にとっては、短期的な過熱に注意しつつ、短期の調整が起こった場合には、そこをチャンスと捉えて冷静に分析していく姿勢が必要な状況だと言えるでしょう。
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