【債券ETF:LQDとHYG】金利上昇時における債券ETFの選択法

【債券ETF:LQDとHYG】金利上昇時における債券ETFの選択法

米国の長期金利は、世界に先立って年初より上昇を開始しました。⽶国経済の回復は明白で⽶国⻑期⾦利には上昇圧⼒につながります。また、バイデン政権における積極財政政策が控えており、今後、徐々に⻑期⾦利はさらなる上昇になる可能性が高いと思われます。このような債券運用にとっては逆風ともいえる状況で、どのような債券ETFを選択すべきなのでしょうか。

金利上昇時の債券投資の大原則

米国のイールドカーブ

まずは、以下の米国イールドカーブ をご覧ください。

出典:The chart store

通常、景気回復時には先行して10年超の長期金利の上昇からスタートします。その後、景気の過熱感を抑えるために政策金利(短期金利)を引き上げながらコントールをしていきます。

そのため、景気回復時の長期債券は価格の下落(金利上昇)を受けやすくなります。一方で、短期の金利はあまり変動がなく価格の下落は微小に留まります。以上を踏まえて、以下の二つがベストな選択となります。

債券ETF選択法(1)短期債での債券運用

金利上昇局面では、金利の影響を受けにくい短期債券への運用が得策となります。また、運用期間の短期化の方法としては、現在運用のデュレーション(金利変動に関する価格の感応度)を短くすることもコツです。デュレーションを短くすればするほど、金利上昇による価格の下落を回避することができます。

債券ETF選択法(2)クレジットリスクでリターンを得る

クレジットリスクを備えた債券、例えば、ハイイールド債券などは、低格付けのものほど、⾦利上昇には耐久性があるとされています。つまり、クレジットリスクが、金利上昇の初期段階のバッファーとなります。それは、良好な経済環境で⾦利が上昇するような環境下では、信用リスク(クレジットリスク)が改善しやすく、つまり、低格付けの発行体(会社)の倒産リスクが低下することから、国債とのクレジットスプレッドが縮⼩することでリターンの低下を避けることができます。

代表的な債券ETF、LQDとHYGでパフォーマンスを比較

米ドル建て投資適格社債 ETFのLQD米ドル建てハイイールド社債 ETFのHYGが、ここ1年間の金利上昇局面におけるトータルリターンを比較してみました。そのパフォーマンスの差を、1)デュレーション、2)クレジットで比較してみます。

LQD(米ドル建て投資適格社債 ETF)

出典:ブラックロック社より

信用リスクが比較的低く、過去10年の年換算あたりのトータルリターンが5.45%と安定していることから、ETF投資家から絶大な人気を誇るLQDですが、直近1年は3.11%とあまり成績は好調とはいえません。

HYG(米ドル建てハイイールド社債 ETF)

一方、信用リスクが若干高く、その代わりにクーポンが高く、過去10年の年換算あたりのトータルリターンが5.32%とLQDに劣らず人気の高いHYGは、直近1年は11.53%と突出して良いパフォーマンスを残しています。

パフォーマンスの違い

では、過去10年間同じようなパフォーマンスを残してきた各ETFがこのように明暗を分けたのでしょうか。それは、金利上昇時におけるポイントとなる、1)デュレーション、2)クレジットの違いです。

まずは、デュレーションの比較です。

LQDの実効デュレーションは9.52年、HYGの実効デュレーション3.66年と大きく異なります。つまり、金利上昇局面ではHYGの方が金利感応度が低く、価格の下落が少ないことが分かります。

次に、信用リスクです。

以下は、LQDの信用格付け構成比です。全て投資適格社債で格付けが高くなっています。格付けの低いHYGの方が、金利上昇時にパフォーマンスがよかった理由がここにもあります。

以下は、HYGです。全て非投資適格社になり、低格付け社債です。

まとめ

このように金利上昇局面での債券運用では、デュレーションとクレジットリスクを考慮した選択が必要になります。今回の金利上昇局面で大きなパフォーマンスの差を生まれました。単純に過去の実績だけで比較すると、格付けの高い安定感重視でLQDを選びがちですが、金利上昇局面では実際には異なった結果になりえます。

資産運用では、各アセットクラスの特徴を正確に把握し、アセットアロケーション(資産配分)に活かすことで、長期に渡り安定した負けない運用が実現できるようになります。

続きを読む

「資産を守るために、着実な資産管理を」

ファミリーオフィスドットコムでは無料で⾃信で⾏っていただける資産管理から、
エキスパートによるオーダーメイド型の資産管理まで、様々なサービスを提供しています。

メディアでご紹介いただきました

関連記事

米国決算シーズンの前半を振り返り 〜今後、想定しておくべき市場展開について〜

米国決算シーズンの前半を振り返り 〜今後、想定しておくべき市場展開について〜

今週の米国の主要企業の決算発表を踏まえて、今後の米国株式市場の見通しについて解説します。 [ 目次 ]1 &n …

グロース株急落!今買うべきか、それとも待つべきか?

グロース株急落!今買うべきか、それとも待つべきか?

東証グロース市場250指数(グロース250)が年初来安値を更新するなど、グロース株の下落が目立っています。4月 …

【第1回】半導体銘柄への投資戦略  〜 半導体が切り拓く未来と投資機会 〜

【第1回】半導体銘柄への投資戦略 〜 半導体が切り拓く未来と投資機会 〜

近年、世界の株式市場の牽引役は間違いなく半導体企業でした。ただ、全ての半導体企業に対して広がった成長神話は、こ …

【第2回】半導体銘柄への投資戦略  〜 半導体業界の概要と市場動向 〜

【第2回】半導体銘柄への投資戦略 〜 半導体業界の概要と市場動向 〜

今回は、半導体業界を理解するために業界の概要と市場動向を見ていきます。 [ 目次 ]1 半導体業界の概要と市場 …

日本企業を動かすアクティビストの台頭 – アクティビストが狙う銘柄の特徴と対策

日本企業を動かすアクティビストの台頭 – アクティビストが狙う銘柄の特徴と対策

近年、日本企業の株主構成が変化し、外国人投資家の保有比率が増加傾向にある中で、企業に積極的に意見を述べるアクテ …

【米国株】‌‌下落が続く米国株は、今回も普通の調整か、それともまだまだ下落が続くのか。【4/22 マーケット見通し】

【米国株】‌‌下落が続く米国株は、今回も普通の調整か、それともまだまだ下落が続くのか。【4/22 マーケット見通し】

本日はテーマは米国株です。先週は、米国株で下落が続きました。今回の下落も、通常の調整なのか、それとも、まだまだ …

日米金利差が招く円安リスク〜日本経済への影響と日銀の舵取り〜 今後の見通しと注目ポイント

日米金利差が招く円安リスク〜日本経済への影響と日銀の舵取り〜 今後の見通しと注目ポイント

1990年6月以来、34年ぶりの1ドル=154円台に到達した力強い動きが続く米ドル円の今後の見通しは? [ 目 …

原油価格の高騰がインフレ再燃の引き金に?米国経済への影響は

原油価格の高騰がインフレ再燃の引き金に?米国経済への影響は

原油価格が再び上昇傾向にあり、米国を中心にインフレ再燃への懸念が高まっています。2022年後半から下落傾向にあ …

【米国株】‌‌米大手金融機関が決算悪化。今後への影響が大きそうだと思われる理由。【4/15 マーケット見通し】

【米国株】‌‌米大手金融機関が決算悪化。今後への影響が大きそうだと思われる理由。【4/15 マーケット見通し】

12日からアメリカの決算発表がスタートし、アメリカのJPモルガン、シティグループ、ウェルズ・ファーゴなど大手金 …

金価格が史上最高値を更新!急騰の背景と今後の見通しを解説

金価格が史上最高値を更新!急騰の背景と今後の見通しを解説

金(ゴールド)の国際価格が急上昇し、1トロイオンスあたり2,300ドルを超える史上最高値を記録しました。金は従 …

日経VI:今後の日経平均や株式市場への影響と注意点

日経VI:今後の日経平均や株式市場への影響と注意点

最近、中東情勢の緊張と原油価格の上昇によってリスクオフムードが高まり、日経平均ボラティリティ・インデックス(日 …

【米国株】‌今週末から米国企業決算が本格的にスタート。S&P500の現状分析と注目点。【4/8 マーケット見通し】

【米国株】‌今週末から米国企業決算が本格的にスタート。S&P500の現状分析と注目点。【4/8 マーケット見通し】

本日のテーマは米国株です。12日から米国金融機関を中心に、2024年度第1Qの決算発表がスタートします。 今年 …

【2024年最新】NISA口座開設・利用状況から見える投資家動向 

【2024年最新】NISA口座開設・利用状況から見える投資家動向 

2024年に入ってから、NISA(少額投資非課税制度)の利用が大幅に拡大しました。本記事ではまず、NISA口座 …

バブル期の高値を更新し、44%の上昇率を記録した日経平均株価:2023年度のマーケットを振り返る

バブル期の高値を更新し、44%の上昇率を記録した日経平均株価:2023年度のマーケットを振り返る

2024年4月から新年度に入りました。2023年度のマーケットを振り返ると、改めて日本の株式市場は記録的な1年 …

【米国株投資】‌なぜ今年は米国小型株に注目する人が多いのか?【4/1 マーケット見通し】

【米国株投資】‌なぜ今年は米国小型株に注目する人が多いのか?【4/1 マーケット見通し】

本日は、米国株投資を取り上げます。今年に入り、米国小型株、ラッセル2000に注目する人が増えています。最近は、 …

おすすめ記事