【米雇用統計】米2年金利とインフレ率の動向に注目

【米雇用統計】米2年金利とインフレ率の動向に注目

超保守的な資産管理チャンネルで配信中

はじめに

本日はアメリカで雇用統計の発表があります。マーケットは、今晩の雇用統計がどうなるのか、かなり注目が集まっています。集まっている背景は、これから金利が正常化していく出口戦略にどう向かっていくのかについて、今回の雇用統計が関係していることにあります。もし、雇用統計で強い数字が出てくると、これから利上げのスピード、テーパリングのタイミングが前倒しになるのではないかということで、注目を集めているのです。

ですが、私は発表された後の2年債とインフレ率の動きが、マーケットの考えを読み解く材料だと思っていますので、そこに注目しているということを、本日はお伝えしたいと思っています。

最近の雇用状況

早速こちらの記事をご覧ください。こちらはロイターに出ている記事となります。21年ぶりにアメリカの失業保険申請件数が36.4万人まで下がりました。失業保険の申請件数が減っているということは、雇用が順調に進んでいる証拠となります。今晩発表される雇用統計も、強いのではないかとマーケットは捉えています。

アメリカで進む失業給付の打ち切り

また、アイオワなどの12州で、特例措置の300ドルを追加した失業給付は、既に打ち切られています。テキサスを含めた13州も、6月26日~7月10日までに打ち切るということで、計25州が7月10日までに手厚い失業給付を終了する形になります。働かなくても多くのお金がもらえるという状況は、アメリカの半分程度の州で、7月10日までになくなるということになります。そのため、8月の雇用統計に注目が必要かと思っています。

というのは、雇用統計は前月12日前後の統計を基にして発表されますので、25州が打ち切りになった後、仕事を求める人の数が増えているかどうかに注目が集まります。今回の雇用統計も注目が集まるのですが、仮に強い結果が出ても、弱い結果が出ても、マーケットは8月の雇用統計を見ようとする可能性も十分にあります。あまり一喜一憂することなく、今回の雇用統計を見る必要があると、私は考えています。

労働不足を示すグラフについて

次に、こちらをご覧ください。とはいえ、アメリカの各セクターにおける労働不足は明らかになっています。モルガン・スタンレーも発表していますが、いろいろなセクター、業界において、人手が足りていないというのは事実です。

2023年末まで利上げはないと言っていたのが、2023年に2回利上げを行うことになりました。絶対に利上げをしないというFRBのスタンスが変わったことによって、今後の内容によっては、22年に利上げがあるのではないかとの議題が再燃する可能性が出てきています。今回、雇用がすごく強ければ、22年にも利上げがあるのではないかとの議論が出てきかねないことに、注意が必要です。

雇用統計後の金利動向

そうなってくると、何が起こるかをご説明します。こちらをご覧ください。強い雇用統計が出て、22年まで利上げが前倒しになった場合、FFレート、政策金利の変更前に、アメリカ2年金利が上昇する傾向があることを改めて確認いただけます。

赤い丸部分は、FFレートが上昇する前に、2年金利との差が広がっていることを示します。FFレートが上がる前から、2年金利は上昇することになります。今は、FFレートと2年金利の差がほとんどありませんが、これから徐々に広がってくると予測されます。

今後発表があった後、今は0.15~0.25でとどまっているような2年金利が、徐々に上がってきて0.5に近づいてくるようなことがあれば、いよいよ前倒しが近づいてきたと考える必要があるかと思います。

FFレートに先行して米2年金利が上昇するのか

次にこちらのスライドをご覧ください。FFレートはいずれ上がるでしょうが、2年金利が急激に上昇した場合、インフレ率が恐らく低下してくるだろうと、私は考えています。つまり、急激な雇用の回復に伴って、短期金利を上げる必要が出てきます。

そうなってくると、2年金利が先走って上がってくるという、ここ数カ月で全く予期していなかった状況を、わずか1カ月でドンドン消化している状態になります。

2年金利が上がるということは、将来のインフレ率を下げる効果があります。それに伴い10年金利も下がり得ると思っています。ですから、予想を大きく上回る80万人、100万人が出て、そこに加えて2年金利が上がってくるようであれば、恐らくインフレ、10年金利も下がってくる可能性が高いです。

インフレ、10年金利が下がった場合はどうなるか

もしインフレも10年金利も下がった場合、マーケットはグロース株が成長するだろうと考え、株価は上がっていくでしょう。しかし、冷静に考えると、短期金利が上がり、長期金利がとどまっている、もしくは下がってくると、ツイストフラットという金利の横ばい状態になります。そうなると、将来の景気がどうなるのかとマーケットはいずれ我に返り、マーケットが急に、株価が割高だと言ってくる可能性があるのです。

さらに、短期2年金利が上がるということは、過去の経験から言えば、10年金利もいずれ上がることを示します。今回はインフレ率の低下に伴い、10年金利は下がりました。しかし、冷静になると10年金利は上がっていくんだということによって、今度は10年金利が上がっていく、今度はインフレが低いままとなると、実質金利がプラスに推移するということで、株価のバリエーションが割高だということで、今度は株価の調整を招きかねないということもあります。2年金利が上がってきた場合、マーケットが好感したとしても、中期的にはそういった反応が出てくる可能性がありますので、注意が必要です。

モルガン・スタンレーの2022年のS&P500の予想EPS

いずれにしても、短期金利が上がっていくと、これまでのような政策金利による期待値や、財政出動によるマーケットの期待というのは徐々に薄れてきます。そうなれば、アメリカの企業業績はどうなるのかに注目が集まります

しかし、モルガン・スタンレーのレポートを見てください。薄い青色がコンセンサス、マーケットがこのぐらいの利益が出るのではと予測しているものです。S&P500 1株当たりの利益は、2022年213ドルぐらいではないかと、マーケットは言っています。しかし、モルガン・スタンレーはそこまで行かない、1株当たり200ドル程度と言っています。そうなってくると、今のS&P500は21倍を超えるPERとなり、マーケットが割高なのではないかと考えてくる可能性があります。

7月中旬から始まる企業決算発表において、1株当たり22年度利益が200ドルを超え、213ドル、220ドルと上方修正されてくれば、株価は堅調に上がってくることになります。しかし、2年金利が上がり、10年金利も下がるという短期的な動きがあったとしても、いずれ10年金利や実質金利は上がります。

市場のコンセンサスに対するモルガン・スタンレーの予想が低いように、低い予測が強まってくると、ダブルパンチのような形で、株価の上値に対する重しとなる可能性があります。

本日のまとめ

ということで、本日のまとめです。これから業績相場に移るにあたって、もし今回強い雇用統計が出て、2年金利がグッと上がったことで、将来のインフレ率の低下を招き、10年金利が低下した場合、強い雇用と強い経済見通しができ、10年金利も低いということで、株価が上がる可能性があります。

ただ、改めて冷静に考えると、イールドカーブがフラットニング化している可能性がありますので、将来の経済見通しが悪化するのではないかということが織り込まれています。

また、長期金利がいずれ短期金利と連動して上がってきた場合、今度は実質金利がプラス化し、バリエーションの低下を招く可能性があります。短期的なマーケットで浮かれることなく、しっかりと金利動向、インフレ動向を引き続き見ていただきたいと思います。来週以降も、指標を見ながら分析したいと思います。

続きを読む

「資産を守るために、着実な資産管理を」

ファミリーオフィスドットコムでは無料で⾃信で⾏っていただける資産管理から、
エキスパートによるオーダーメイド型の資産管理まで、様々なサービスを提供しています。

メディアでご紹介いただきました

関連記事

【米国株】今週の注目材料、企業業績と長期金利、そして需給環境を現状分析【10/15 マーケット見通し】

【米国株】今週の注目材料、企業業績と長期金利、そして需給環境を現状分析【10/15 マーケット見通し】

本日のテーマは『米国株今週の注目材料 企業業績と長期金利そして需給環境!』です。 アメリカの大統領選挙を3週間 …

金購入の真意とBRICS共通通貨の可能性―2024年のBricksサミットで何が起こる?

金購入の真意とBRICS共通通貨の可能性―2024年のBricksサミットで何が起こる?

世界が注目するBRICSサミットの概要 2024年10月22日から24日まで、ロシアのカザンでBRICSサミッ …

世界の注目を集める中国株市場の急騰とリスク

世界の注目を集める中国株市場の急騰とリスク

中国株市場が再び脚光を浴びています。国慶節連休が明けた直後から上海総合指数は連日上昇し、10月8日には上海総合 …

【日本株・ドル円 週間見通し】 10月12日号(10月15日〜10月18日)

【日本株・ドル円 週間見通し】 10月12日号(10月15日〜10月18日)

[ 目次 ]1 日本株先週の振り返り2 日本株今週の見通し3 来週の為替注目点 日本株先週の振り返り 先週の株 …

米大統領選まで残り1ヶ月!ドル円相場はどう動く?注目の影響と予測を解説!

米大統領選まで残り1ヶ月!ドル円相場はどう動く?注目の影響と予測を解説!

米大統領選まで1ヶ月を切りました。2024年11月5日に投開票、2025年1月20日に就任式と約3ヶ月後には新 …

衆議院の解散・総選挙が株式市場や為替市場に与える影響

衆議院の解散・総選挙が株式市場や為替市場に与える影響

10月9日に衆議院が解散し、27日の総選挙が近づく中、市場では「選挙は買い」というアノマリーが再び注目されてい …

【米国株】もしもソフトランディングが実現した場合、S&P500とセクターを選択して投資をする場合、どちらがリターンを狙えるのか?【10/7 マーケット見通し】

【米国株】もしもソフトランディングが実現した場合、S&P500とセクターを選択して投資をする場合、どちらがリターンを狙えるのか?【10/7 マーケット見通し】

本日は『ソフトランディングの場合、S&P500とセクターへの投資のどちらがリターンを狙えるか』をお伝え …

【日本株・ドル円 週間見通し】 10月5日号(10月7日〜10月11日)

【日本株・ドル円 週間見通し】 10月5日号(10月7日〜10月11日)

[ 目次 ]1 日本株先週の振り返り2 日本株今週の見通し3 来週の為替注目点 日本株先週の振り返り 先週の日 …

【日本株・ドル円 週間見通し】 9月29日号(9月30日〜10月4日)

【日本株・ドル円 週間見通し】 9月29日号(9月30日〜10月4日)

[ 目次 ]1 日本株今週の振り返り2 来週の日本株市場の見通し3 来週の為替注目点 日本株今週の振り返り 今 …

【米国株】‌‌利下げ開始後に期待できる投資対象とは【9/24 マーケット見通し】

【米国株】‌‌利下げ開始後に期待できる投資対象とは【9/24 マーケット見通し】

本日は、米国株利下げ後に期待できる投資対象をお伝えします。先週のFOMCにおいて0.5%の利下げが決定されまし …

ついにFRBが0.5%の利下げ決定。FRBが示す新たな景気シナリオが意味すること

ついにFRBが0.5%の利下げ決定。FRBが示す新たな景気シナリオが意味すること

2024年9月18日、米連邦準備理事会(FRB)はFOMCで予想を上回る0.5%の利下げを決定し、市場に衝撃を …

米8月CPI発表~物価上昇の勢い鈍化でFRBの次の一手は?

米8月CPI発表~物価上昇の勢い鈍化でFRBの次の一手は?

米8月消費者物価指数(CPI)は、前年同月比で2.5%の上昇となり、市場予想の2.6%を下回る結果となりました …

【米国株&ドル円】‌‌過去の利下げ開始後のドル円相場は、ドル高?それとも円高?【9/9 マーケット見通し】

【米国株&ドル円】‌‌過去の利下げ開始後のドル円相場は、ドル高?それとも円高?【9/9 マーケット見通し】

本日のテーマは米国株とドル円です。 一般的に米国の利下げ局面では、米金利が下がるため、ドル安/円高になる、とい …

米株式市場に広がる不安:雇用統計から見える景気減速の兆候とは?

米株式市場に広がる不安:雇用統計から見える景気減速の兆候とは?

6日に発表された8月の米雇用統計は、非農業部門の雇用者数が前月比で14万2,000人増加したものの、市場予想を …

【米国株&GOLD】‌‌過去の利下げ開始後の金価格のパフォーマンスと米国株との相性について【9/2 マーケット見通し】

【米国株&GOLD】‌‌過去の利下げ開始後の金価格のパフォーマンスと米国株との相性について【9/2 マーケット見通し】

本日のテーマは米国株と金価格です。 今月17~18日にはFOMCが開催されます。そこでの利下げをマーケットは織 …

おすすめ記事