【米国株】‌米11月CPIは高止まり。利下げ期待への影響は?【12/13 マーケット見通し】

【米国株】‌米11月CPIは高止まり。利下げ期待への影響は?【12/13 マーケット見通し】

超保守的な資産管理チャンネルで配信中

本日のテーマは、昨日発表された米11月のCPIです。物価に関する指標ですが、高止まりしています。今後の米利下げ観測への影響について見ていきたいと思います。ぜひ最後までご覧ください。

米国12月CPIの結果は高止まり

米12月CPIほぼ予想通り

こちらをご覧ください。まずCPIとコアCPIについて見ていきたいと思います。結論から言いますと、市場のほぼ予想通りのサプライズなしということで、マーケットが大きく動くことはありませんでした。

CPIはエネルギーを含みますが、前年比3.1%で予想は変わらず、前回からやや低下となっています。一方、前月比で見ると、前回が0%で横ばいだったものが+0.1%でした。予想も横ばいでしたので、やや上昇となっていますが、前月比で急激に伸びた一時期と比べると少し落ち着いてきていることから、インフレが進んでいる印象は持たれませんでした。

次にFRBが注目しているコアCPIです。前年比で+4%と変わらずです。一方で、コアCPIは前月比で前回が0.2%に対し、今回は0.3%。予想も0.3%でしたので、予想通りとなります。

やや前回よりも上がっていますが、一時期0.5%を軽く超えるような前月比だったところから比べると、やや落ち着きが見られます。そのためマーケットとしては、いい、悪いの判断材料とするのは難しい状況でした。

次に、マーケットが今後どういったところに注目しているか、2つの数字をご覧いただきたいと思います。

サービスインフレが高止まり

1つ目はサービスインフレです。CPIから財を抜いて、サービスに絞ったものです。サービスインフレはFRBが注目していますし、パウエル議長も「サービスインフレが高止まりしていることは、金融政策を高く長くしている背景にある」と言っています。ですから、サービスインフレがどうかを確認することが重要となります。

サービスインフレの中には、住宅が大きな割合として入っています。住宅のコストが上がっていく状況においては、サービスインフレが高いことになります。現状は、サービスインフレがまだまだ高止まりしていることが分かりました。FRBが利下げを正当化するには、今回の内容は少し及ばなかったと思っています。

下のチャート、青で示したコアのCPIは3ヶ月の平均を年換算したものです。まず、コアのCPIは年率換算で上昇しています。一方、赤い部分のGoodsはサービスを除くと下がってきています。では、何が一番上がってきているかというと、サービスです。サービスの価格がすごく上昇しており、一時期は3ヶ月の年間算でマイナスになった時期もありました。ただ、現在は再び5%を超える水準になっています。

この数字はFRBも理解しているわけですから、これを見て利下げが正当化できる状況ではないというのが1つ目です。

スーパーコアCPIは未だに高い水準

次に、こちらをご覧ください。サービスインフレの中から住宅を除いたスーパーコアにも、FRBはかなり注目しています。

スーパーコアというのは、サービスのCPIからエネルギーサービス、住宅などを抜いたものです。この価格が上がってくるようであれば、なかなか利下げに転じることができないということで、投資関係者はスーパーコアに非常に注目しています。結論から言えば、スーパーコアのCPIは、FRBの早期利下げを根強く正当化できる状況にはありませんでした。

前年比で+4.08%、前月比で+0.5%ということで、先ほどまでのCPIやコアのCPIを見ると、前月比の部分が少し落ち着いてきたイメージがあると思います。スーパーコアに関しては高止まりしているというか、一時期の沈静化から再び上昇傾向にあるようです。サービス価格で、インフレが続いていることが確認できました。

さらにスーパーコアを3ヶ月年率換算で見ると、5.2%と大きく上昇しています。なかなか鎮静化できていないことから、利下げを行うのが難しい状況にあると言えます。

スーパーコアは住宅を除くものですから、名目労働コストが上昇すると、スーパーコアが上がりやすい傾向があります。スーパーコアを下げるとなれば、労働コストが低下しなければなりません。しかし、先週の雇用統計、最近の雇用状況を見ると、まだまだ堅調な状況ですから、スーパーコアが大きく低下するまでには時間がかかると、マーケットは感じ取ったはずです。利下げが3月よりも後ろに倒れると感じ取った中で13日のFOMCを迎え、ヒントを探る状況になっています。

この状況の中で利下げ先送りのニュアンスが伝わってくれば、マーケットが動く可能性があるやもしれません。ぜひ理解していただければと思います。

今後の金融政策への影響

CPIの結果を受けた金利動向

次に、CPIの結果を受けた金利動向です。以前の記事でもお伝えしたように、CPIやFOMC後の2年と10年の金利の動きを見ると、マーケットの捉え方が分かります。

青いチャートが2年金利で、黄色いチャートが10年金利です。CPIの発表後、インフレが高止まりということで利下げの先送りが予想され、金利が上昇しました。その後、2年金利はほぼ横ばいで終わりましたが、10年金利は下降傾向があります。

この背景は、2年金利は政策金利の影響を受けやすいため、利下げが先送りになる可能性が高いと考えられています。また、FOMCで出てくることを控え、金利が上昇して終えています。一方で、10年金利は景況感や受給の影響を受けやすいため下がっています。

なぜ10年金利が下がったかと言いますと、今週の注目の1つである米国債の入札が関連しています。11~12日に行われた3年、10年、30年の米国債の入札では、応札倍率が前回を上回る、かなり活発な応札が行われました。金利も事前予想と変わらずであったため、サプライズはありませんでした。

CPIの結果を色濃く反映したのは2年金利ですから、13日のFOMCに注目が移っている状況です。

CPIの結果を受けてFOMCの最重要ポイント

それを受けて、今晩のFOMCはどこに注目すべきなのでしょうか。コアPCEに対し、24年の2.6、25年の2.3に対し、大きく下げることができるかといえば、大きく下げられない可能性がありそうです。ここに対してあまり下げないということは、物価の沈静化に対して自信が持てていないことになります。そうなれば、フェデラル・ファンド・レートは5.1から下がるでしょうが、市場予想の4.6以下の実現は難しくなります。

12日のCPIを受けても、PCEがしっかりと下がる自信があり、利下げが可能であるという自信を持っている場合、FRBはインフレに対する対応がうまくいくと思っていることとなります。

数字があまり変わらない、上方修正となれば、マーケットにとってはサプライズになります。利下げ、利上げを行わなかったかだけでなく、SEPをしっかりとご覧いただければと思います。

12日のCPIを受け、今後の金融政策にどういう影響を与えるかを確認しました。スーパーコア、サービスのインフレを見ると、まだまだ鎮静化できていないことが分かりました。スーパーコアは、名目の労働賃金が下がらない限り、なかなか下がりません。現状のある程度強い経済が維持されているから、金融政策を緩和することは難しいと判断されれば、来年のソフトランディングシナリオにも影響が出てくる可能性があります。

ぜひ13日のパウエル議長の発言、SEPの中身をしっかり確認し、来年の投資戦略に役立てていただければと思います。

続きを読む

「資産を守るために、着実な資産管理を」

ファミリーオフィスドットコムでは無料で⾃信で⾏っていただける資産管理から、
エキスパートによるオーダーメイド型の資産管理まで、様々なサービスを提供しています。

メディアでご紹介いただきました

関連記事

【第6回】半導体銘柄への投資戦略〜半導体を支える材料産業~日本企業の強みと投資の着眼点

【第6回】半導体銘柄への投資戦略〜半導体を支える材料産業~日本企業の強みと投資の着眼点

半導体は現代社会を支える重要な基盤技術であり、スマートフォンやパソコン、自動車など幅広い分野で使用されています …

【第5回】半導体銘柄への投資戦略 〜半導体製造に欠かせない装置と部品『装置・部品メーカーの業績動向と投資のポイント』〜

【第5回】半導体銘柄への投資戦略 〜半導体製造に欠かせない装置と部品『装置・部品メーカーの業績動向と投資のポイント』〜

半導体は現代社会を支える重要な基盤技術であり、スマートフォン、パソコン、自動車などさまざまな分野で使用されてい …

インドへ世界が熱視線、株式市場はバブルか?それとも持続的成長か?

インドへ世界が熱視線、株式市場はバブルか?それとも持続的成長か?

インド株式市場は、世界の投資家から大きな注目を集めています。若い労働人口の増加と旺盛な消費に支えられた力強い経 …

【米国株】‌‌好決算で株価好調も留意すべきポイント【5/7 マーケット見通し】

【米国株】‌‌好決算で株価好調も留意すべきポイント【5/7 マーケット見通し】

米国株の決算発表では好決算が続き、株価も好調に推移しています。先週、ナスダックは1.43%、ダウは1.14%、 …

ファミリーオフィスとは  〜 資産運用や資産管理で注目を集める理由 〜

ファミリーオフィスとは 〜 資産運用や資産管理で注目を集める理由 〜

ここ最近、「ファミリーオフィス」という言葉を、新聞や雑誌記事などで見かけることも多くなってきました。そこでは、 …

【第4回】半導体銘柄への投資戦略 〜半導体の製造工程②後工程:日本企業はリードを保ち成長できるのか?今後の展望〜

【第4回】半導体銘柄への投資戦略 〜半導体の製造工程②後工程:日本企業はリードを保ち成長できるのか?今後の展望〜

半導体製造の工程は、ウェーハ上に電子回路を形成する「前工程」と、完成したウェーハを個々のチップに分割し、外部と …

日本株の浮沈を握る決算シーズン到来!注目セクターはココだ!

日本株の浮沈を握る決算シーズン到来!注目セクターはココだ!

日本株の浮沈のカギを握る決算発表シーズンが始まりました。歴史的な賃上げと円安というコストアップ要因が企業にどの …

富裕層が資産運用で一番大切にしていること

富裕層が資産運用で一番大切にしていること

資産運用においては、金額に限らずマイナスになるのは、誰でも避けたいものです。ただし、資産の額が大きくなればなる …

【第3回】半導体銘柄への投資戦略 〜半導体の製造工程①前工程。日本企業の将来は?今後の展望〜

【第3回】半導体銘柄への投資戦略 〜半導体の製造工程①前工程。日本企業の将来は?今後の展望〜

半導体は現代社会のあらゆる分野で重要な役割を果たしており、その複雑かつ高度な製造工程は、現代のテクノロジーの基 …

米国決算シーズンの前半を振り返り 〜今後、想定しておくべき市場展開について〜

米国決算シーズンの前半を振り返り 〜今後、想定しておくべき市場展開について〜

今週の米国の主要企業の決算発表を踏まえて、今後の米国株式市場の見通しについて解説します。 [ 目次 ]1 &n …

グロース株急落!今買うべきか、それとも待つべきか?

グロース株急落!今買うべきか、それとも待つべきか?

東証グロース市場250指数(グロース250)が年初来安値を更新するなど、グロース株の下落が目立っています。4月 …

【第1回】半導体銘柄への投資戦略  〜 半導体が切り拓く未来と投資機会 〜

【第1回】半導体銘柄への投資戦略 〜 半導体が切り拓く未来と投資機会 〜

近年、世界の株式市場の牽引役は間違いなく半導体企業でした。ただ、全ての半導体企業に対して広がった成長神話は、こ …

【第2回】半導体銘柄への投資戦略  〜 半導体業界の概要と市場動向 〜

【第2回】半導体銘柄への投資戦略 〜 半導体業界の概要と市場動向 〜

今回は、半導体業界を理解するために業界の概要と市場動向を見ていきます。 [ 目次 ]1 半導体業界の概要と市場 …

日本企業を動かすアクティビストの台頭 – アクティビストが狙う銘柄の特徴と対策

日本企業を動かすアクティビストの台頭 – アクティビストが狙う銘柄の特徴と対策

近年、日本企業の株主構成が変化し、外国人投資家の保有比率が増加傾向にある中で、企業に積極的に意見を述べるアクテ …

【米国株】‌‌下落が続く米国株は、今回も普通の調整か、それともまだまだ下落が続くのか。【4/22 マーケット見通し】

【米国株】‌‌下落が続く米国株は、今回も普通の調整か、それともまだまだ下落が続くのか。【4/22 マーケット見通し】

本日はテーマは米国株です。先週は、米国株で下落が続きました。今回の下落も、通常の調整なのか、それとも、まだまだ …

おすすめ記事