本日のテーマは、年始からの株価の続落についてお伝えします。年初からNASDAQが大きく下落しており、今年の株式市場の動向について心配されている方も多いと思います。今回の下落が単なる調整なのか、それとも継続するのかについて見ていきたいと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
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今回のような年初日から2日連続の下落は、2015年以来、約8年ぶりのことです。また、下落幅の大きさも2019年以来です。このような状況から不安を感じている方も多いかと思いますが、過去のデータを見ると、この2日間の下落が市場に大きな影響を与える可能性は低いと思われます。
上の図表は、初日から2日間の騰落率です。もちろん下落した年もあれば、上昇した年もあります。年始から2日連続でスタートした年の下落を見てみましょう。2019年には大きく下落しましたが、年間では28.9%の上昇を記録しています。また、1991年には26.3%、1980年には25.8%上昇しました。2日間で下落したからといって、その年の株式市場が悪いとは言えません。つまり2日間の騰落率で今年の見通しを立てるのは無理がありそうです。
ちなみに一般的には、年始5営業日目である1月8日の終値が年初より上昇しているかどうかは分析の対象になりがちです。それは、年始の5営業日目と1月末のパフォーマンスにある程度相関が高いことが知られているからです。尚、1月末のパフォーマンスが良い場合は、年間を通じてパフォーマンスも良くなる傾向が確認されています。そのため、1月末が年始からプラスになっているか、マイナスになっているか注目されることが多いです。ぜひ、ご注目ください。
では、なぜ1月のパフォーマンスが市場に大きな影響を与えるのでしょうか。それは、1月は株式市場のファンドにお金が最も多く流入するからです。流入時に株式市場が下がるようであれば、1年の流れが悪いと見られます。逆に、1月にお金が入ってくる際に株価が上昇するのであれば、株価に対する楽観している証左であり、年間のパフォーマンスにも良い影響を与えやすくなります。ちなみに、これは絶対的な法則ではありません。あくまでも比較的に確率が高いアノマリーということでご注目いただければと思います。
重要なのは、株式市場がなぜ下落しているのかでしょう。それは、英金融機関バークレーズがAppleの株価目標を161ドルから160ドルに引き下げましたことが関係しています。1ドルのみの引き下げですが、現在の株価が184ドルだと考えると10%以上のマイナス予想となります。さらに、2024年に発売されるApple製品の売上は鈍化すると予想されており、そのコメントが市場に相応のインパクトを与えています。
左の図表をご覧ください。EV(エンタープライズバリュー)、株式の時価総額に対するAppleの売上は、7.3倍まで過大評価され懸念されています。
2022年12月末、約1年前の状況を振り返ると、売上高に対するEVは5倍程度でしたが、その後に時価総額が上昇したことで、倍率が上がってきました。もし、このような状況で赤いチャートの売上が鈍化するようであれば、連れて株価も下落するのではないかと市場は連想しました。これが1つ目のポイントです。
次に、右の図表をご覧ください。現在、アメリカの株式市場において、AppleとMicrosoftはS&P 500の14.7%を占めています。トップ2の時価総額が14.7%を占めるというのは、やはり過去から見ても非常に高い割合です。その中の1つの銘柄が下落すると、全体の指標は大きく下落しやすいため、今回のような大きめの下落につながりました。
さらに、現在はバリュエーション的にも調整が入りやすい状況にあります。左の図表をご覧ください。ここには、様々なカテゴリー(グロース、S&P 500、ローボラティリティなど)における、過去10年間の平均予想PERが示されています。
縦軸は24年、今年の1月3日の予想PERを表しています。現在の状況を見ると、グロース株式は、過去10年間の平均が約21倍に対し、現在のバリュエーションは26倍近くまで上昇しており、5倍近く高い状況にあります。元々割高に評価されていたこともありますし、S&P 500についても似た状況です。過去は約17倍だったものが、現在は約19倍を超える状況です。これも割高と言えるでしょう。
2つが割高な状況であるため、バリュエーション的には調整が入りやすい局面であったと考えられます。また、利益確定が行われやすい時期でもありました。
右上のデータは、2022年12月30日から2023年12月29日までの1年間のパフォーマンスを見たものです。S&P 500よりもグロース株やハイベータ株が市場平均をアウトパフォームしている状況が確認できます。
年明けには利益確定の動きも見られています。その意味では利益確定が出やすく、バリュエーション的にも売りやすい状況でした。そのタイミングで、Appleが目標株価の下方修正を行ったこともあり、株価が下落しています。
下の図表は、今年のM7の株価上昇率がどのくらいか、マーケットコンセンサスを出したものです。Alphabetが10%、Amazonは18%程度の上昇が予想されています。
しかし、Appleは元々、2024年は株価が2~3%しか上がらないと考えらえれていました。Teslaほど低くはありませんが、それ以外と比べると非常に期待値が低かった状況です。Appleは時価総額が大きく、利益確定の売りが出やすい状況にありましたし、元々業績に対する期待が大きいということではありませんでした。
そのため、今回の目標株価の下方修正によるインパクトは、ある程度限定的であると考えられます。
一方で注意すべきことは、1月下旬に控えているAmazon、Microsoft、Alphabetなど、期待を背負っている企業が見通しを下回ると、本格的な調整、下落に向かう可能性があります。ですが、その段階には至っていませんので、現在の下落は一過性の調整である可能性があります。
また、2月下旬にはNVIDIAの決算が控えています。今年、非常に決算期待が高い中で、これが外すようなことがあれば大きなインパクトとなります。1月下旬の決算発表を見るまでは、市場は探り探りとなるでしょう。下落がずっと続くというのは、メインシナリオではなさそうだと言えるでしょう。
こちらはAppleの株価が黄色のチャート、NASDAQが紫のチャートです。非常に相関が高いことが分かります。今年に入ってNASDAQは大きく下落していますが、Appleの株価が市場の材料を消化していけば、NASDAQも再び上昇しそうです。このまま大きく下落するというのは、メインシナリオではないでしょう。
これを踏まえたうえで、もう1つ材料をご紹介します。それは1月2日、3日に発表された、製造業に関する米国PMIやISM製造業指数です。
1月2日に、S&Pグローバルが米製造業PMIを発表しました。アメリカの製造業PMIは先月の49.1から47.9に低下したと報じられました。この結果に加えてAppleの株価目標の下方修正が入ったことで、株価が下落しました。
製造業PMIは予想の48.4に対して47.9と悪化し、50を下回っています。製造業が良くないうえ、過去6ヶ月間で生産量が最も速いペースで減少しています。製造業はやや苦しい状況で23年の第4四半期の経済にとって足かせとなった可能性があり、GDPに対する注目も少し高まりました。
また、雇用状況の悪化も報告されており、景気減速の兆しが見え始めています。このことで2日の株価は下落しました。
一方で、3日には製造業の先行きを見通すソフトデータであるISM製造業景況感指数が発表され、市場予想の47.1を47.4と上回る結果になりました。ただし、景気の境目を示す50を下回る状況は14ヶ月連続となっており、製造業の業況は依然として縮小圏にあると言えます。しかし、1月2日のS&Pグローバルの資料と比べて、内容に若干の違いがあります。
新規受注については16ヶ月連続で縮小しており、左側のデータをご覧いただければ分かるように、新規受注は前回の48.3からさらに低下し47.1となっています。新規受注が下がっており、16ヶ月連続で50を割っています。
過去に新規受注がこれだけ悪化した時は、リセッションに突入しています。そのため、景況感が厳しいと分かりますが、一方で雇用や生産などの分野では、やや改善傾向が見られます。例えば生産では、48.5から50を超えていますし、雇用ではPMIでは悪化していましたが、ISM製造業では45.8から48.1とやか持ち直しています。バックオーダー(注文)についても、39.3から45.3へと改善しています。
確かに新規受注が減少していますが、一部の他のサブインデックスでは改善傾向が見られ、先に述べたPMIと比較しても結果はまちまちとなりました。製造業が悪いと判断できるような内容ではなかった印象です。
本日はAppleの目標株価の下げに、売られやすいタイミングや利益確定をしたいタイミングが重なった結果、2日連続で株価が下落したという事実をお伝えしました。
ただ、2日連続の株価下落が、その年の全体的な業績に悪影響を及ぼしたことは、過去にはあまり例がありません。M7にリストされている他の企業の業績がどうなのかを見ていかなければなりません。
また、年始から注目されている製造業関連のPMIについても、S&Pグローバルが発表したデータとISMが発表したデータとで内容が異なるため、製造業の業績に関しても決算発表を待って判断する必要がありそうです。
1月中旬から始まる決算シーズンで今年一番の材料であるEPSがどうなるかの方向感が出てくるでしょう。それで今年前半の方向感が徐々に見えてくると思います。
この2日間の下落に焦ることなく、企業の業績がどうなるのかをしっかりと見定める必要があると思います。
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