本日分析する投資信託は、日本株の投資信託、東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンです。このファンドは、オーナー企業に投資を行います。オーナー企業は、意思決定が迅速で、株価が上昇しやすい傾向があります。このカテゴリーは、昔から世界の投資家に注目されてきました。このファンドがどのようなパフォーマンスなのか、皆様がNISAの成長枠投資として検討できるかどうかを見ていきたいと思います。ぜひ、最後までご覧ください。
お願い
この動画は情報提供を目的としており、投資の勧誘や売買の推奨を目的とはしておりません。投資をされる場合は、ご自身で判断いただきますようお願いいたします。
また、投資信託はランダムに抽出しており、運用会社や販売会社との業務提携等は一切ございません。あくまで中立な分析としてお伝えしたいと思います。
投資信託の概要
概要
概要です。このファンドは、オーナー企業にフォーカスを当てているという、非常に興味深いコンセプトに基づいた日本株ファンドです。
経営者が主要株主であることをポイントとして、それをオーナー企業と定義しています。その中で成長性や割安性などを考慮して銘柄選定を行っていることが、ファンドの特徴になっています。
企業評価においては、定性面を重要視し、目標やミッションなどを評価します。経営者が会社の将来について明確なビジョンを持っているか、経営を通じて社会の役に立とうとしているか、経営戦略について合理的に説明できるかどうかを重視しています。
本日のチェックポイント
・このような運用スタイルで実際にパフォーマンスが向上するのか、
・スタイルリスクとしてオーナー企業に焦点を当てた結果、そのスタイルがリスクを伴っているのではないか、
・そしてインデックスファンドと比較してどのような違いがあるのか、
という3つの観点から分析を進めたいと思います。
投資信託の投資戦略
投資戦略を見ていきましょう。オーナー企業の株価パフォーマンスは平均的に高いとされており、これは国内外の多数のデータや論文によって裏付けられています。
その理由は、株価と経営者の利益が直結しているため、株価が上がることは自分の利益の増加につながり、さらに短期間での退任がないため、長期的な視点で経営を行い、株価を上げていくことがモチベーションとして働きやすいです。そのため、オーナー企業は株価パフォーマンスが平均的に高いということは国内外で知られています。そこに着目した、このアクティブファンドが、パフォーマンスがベンチマークを上回るのでしょうか。
販売用資料によると、直接オーナーと話をして、その企業の強みが発揮できるかどうかという観点から定性面を非常に重視しています。最終的には定量的な分析も加えていますが、定性面を非常に重要視していることが明らかになりました。
パフォーマンス分析
パフォーマンス1年
まずはパフォーマンスです。1年間のパフォーマンスを見ると、大きくアンダーパフォームしていることがわかりました。オーナーズ株式は、TOPIXや日経平均と比べて、大きくマイナスのパフォーマンスであることが明らかです。
パフォーマンス3年
次に3年間です。3年間という中期間で見ても、TOPIXや日経平均に比べて大きくマイナスという結果になっています。例えば、日経平均に対しては過去3年間で15%程度低いパフォーマンスを示しており、TOPIXに対しても3年間で22%も低いパフォーマンスとなっています。
パフォーマンス5年
5年間でも、同様にパフォーマンスがあまり優れません。先ほどまでのデータと同じで、アンダーパフォームであることが確認できます。このように、1年、3年、5年ともに、TOPIXや日経平均に比べてアンダーパフォームしている状況になっています。
パフォーマンス10年
一方で、10年間というスパンで見ると、オーナー株式が非常に良いパフォーマンスを残しています。つまり、5年前から10年前の間では、非常に大きく株価が上昇したことがわかりました。それは、アベノミクスがスタートした後にそれまで割安に放置されていた株式が一気に買い進められたという背景があります。この時は、オーナー企業が大きく買われる局面がありましたが、しかし、それ以降の直近5年間は、インデックスに対してもパフォーマンスが良くないという結果です。
このように割安銘柄に資金が流れ込むという恵まれた状況ではリターンが上げやすいものの、通常の状態ではパフォーマンスが優れないということが、1年、3年、5年、10年のパフォーマンスを見ることで理解できました。今後投資を検討する方は、オーナー企業などが割安に放置されている局面か、そうではないのかという点が1つの判断軸になるのではないでしょうか。
資金流出入
資金の流出入です。2020年以降、資金の流出が増加しています。ファンドのコンセプト自体は非常に魅力的であり、国内外でも理解されているオーナー企業ですが、パフォーマンスが伴わないため、資金の流出が続いていることがわかります。
パフォーマンス
次に、詳細な分析に移ります。まず、組み入れ上位には中小型株の組み入れが目立ちます。大型株であれば、ファーストリテイリングやソフトバンクなどが組み入れられますが、オーナー企業は大型株にはそれほど多くないため、ポートフォリオの中心は、中小型株が中心になっています。
オーナー企業の経営判断は非常に迅速であり、株価がオーバーパフォームする傾向にあるものの、このファンドの銘柄選定を見ていくと、過去5年間およびそれ以降のパフォーマンスを見ると、成果が出ていないということが、残念ながら言えるのではないかと思います。
コンセプトは非常に良いのですが、期待外れと言えます。このファンドの売買の回転率は約1.3程度であり、あまり頻繁な売買は行われていないことから、購入後はある程度ホールドされる傾向があると言えるでしょう。
売り替え頻度を上げるよりも、購入したものが適切に評価されるまで保持するという方針が取られているようです。
ファンドのパフォーマンスは、銘柄選定による運用の成果というよりも、中小型株が強くなる局面でのパフォーマンスが際立つと言えます。2014年から2018年ごろまでの中小型株が注目を集めた時期には力を発揮していますが、そうでない時期には苦戦しているようです。
2020年から2021年の中小型株が強かった局面では、このファンドが日経平均を10%上回る期間がありましたが、その後、グローバルな経済情勢により大型株が優位となると、このファンドのパフォーマンスは劣ることがわかりました。ファンドのコンセプトは魅力的ですが、パフォーマンスとは必ずしも連動していないようです。
積極的な投資行動もあまり行われておらず、売買の回転率を上げてリターンを細かく積み上げる戦略も採られていないと思われます。
この点を踏まえて評価すると、投資ポートフォリオに積極的に組み入れるべきとは言い難いです。少なくとも現在のパフォーマンスはコンセプトが目指すものとは異なるようです。オーナー企業は通常の企業よりもパフォーマンスが高いとされています。そのコンセプト通りに進めばいいパフォーマンスが期待できるかもしれません。しかし、そのような時期が来たとしても、他の中小型株ファンドと比較して優位性があるかは、現段階ではやや疑問が残ります。銘柄選定に少し難があるように思えます。
他の中型アクティブファンドと比較しても劣後
他のアクティブファンドと比較して優れていれば検討対象ともなるのですが、黄色の中小型株を集めたJPMのザ・ジャパン、緑のTOPIX、赤の日経225と比べても、青のオーナーズ株式が下回る状況が3年間でも見てとれます。小型株が堅調だった時期が2021年にありましたが、その後も大きくザ・ジャパンと比べて劣後していることから、優位性がないのと言えるでしょう。
評価
評価は1.5ということで、厳しい評価をさせていただきました。コンセプト自体は間違っていないと思いますし、特に2021年頃は非常に評判が高かったファンドでしたが、その後の銘柄の選定において、戦略と結果があまり連動していません。中小型株に注目が集まる局面が来ても、他のファンドとしっかりと比較した上で、優位性があるかどうかを確認する必要があると思います。
本日は、日本の上場企業の中でも、特にオーナーシップの強い企業で、中小型企業に特化したファンドを見てきました。基本的には、オーナー企業は株価が上昇しやすいと世界的に知られていますが、残念ながら最近の結果を見ると、成果が出ていない状況になっています。また、中小型株の他のファンドと比べても、劣後しているパフォーマンスになっていることから、現段階で積極的に検討する価値があるかどうかは疑問です。
中小型株自体は、今後市場において非常に重要な役割を持つ局面が来ると思いますが、このファンドがその役割を果たすかどうかは、今後も他の中小型株ファンドと比較しながら冷静に判断していただきたいと思います。