本日は、AI(人工知能)活用型の世界株ファンド「ディープAI」を取り上げます。ディープラーニングを利用し、世界株への投資を行うファンドです。AI関連株ではなく、ディープラーニングを用いて銘柄選定を行い、運用を行うファンドとなっています。
現在の高いパフォーマンスが今後も続くのかどうか、多くの方が興味を持っていることでしょう。本日は、AIを駆使した分析の蓋然性が高いかどうかまで分析しますので、ぜひ最後までご覧ください。
お願い
最初にお願いです。当記事は情報提供を目的としており、投資の勧誘や売買の推奨は目的としていません。また、銘柄についてはランダムに抽出されており、運用会社や販売会社との間に業務提携等は一切ございません。あくまでも中立な立場からお伝えします。
投資信託概要
概要
AI(人工知能)活用型の世界株ファンド「ディープAI」は、アセットマネジメントOneの運用で、国際株式に投資しています。NISA成長枠投資での投資が可能で、信託報酬は1.58%です。純資産総額は327億円ですが、今後さらに増加するのではないでしょうか。
今回取り上げた理由は、AIのディープラーニングを活用したアクティブファンドであるためです。AI関連企業と言われる半導体企業への集中投資ではなく、AIの能力を利用した企業の銘柄選定を行うファンドです。世界各国の経済状況や個別銘柄の決算状況を含め、様々なデータを活用し、AIによる分析で銘柄選定を行っています。
銘柄選定にとどまらず、割安感、価格変化など、AIによる定量的な判断が最初に行われます。その後、ファンドマネージャーが最終的な判断を加える、AIとファンドマネージャーが力を合わせた運用が特徴です。
チェックポイントです。AIのディープラーニングを用いた運用スタイルは、パフォーマンスに繋がっているのでしょうか。また、投資信託は長期的な運用が基本です。長期的に安定したパフォーマンスを生み出せるかどうかという観点で分析します。
過去のパフォーマンスです。同じカテゴリーと比べて1年、3年、5年の年率で見ても上回っており、優秀なパフォーマンスだと言えます。また、標準偏差も全てカテゴリーを下回っています。低めのリスクで高いリターンを狙い、結果も伴っていますから、非常に期待のできるパフォーマンスです。
投資戦略
様々なニュース情報やアナリストレポートなど、人の手によって分析されるデータについては、ファンドマネージャーが判断を行います。
ステップ1として、アセットマネジメントOneが独自に開発したAIモデルを用いて銘柄選定を行います。ステップ2ではAIで魅力度の判定を行い、期待リターン、リスク、銘柄間の相関関係(どう組み合わせればいいか)を分析し、推奨のポートフォリオを構築します。ステップ3では、AIが作成した情報を用いて、ニュースやアナリストレポートなど人間の介入可能な部分に個別の企業のファンダメンタルズ分析などを融合させ、最終的な判断をファンドマネージャーが行っています。
AIによる機械的な運用を主体としつつ、ファンドマネージャーの判断を加え、お互いに補完し合うような運用を行っています。
銘柄戦略
運用ポートフォリオ自体は、世界株平均と似通っています。7割程度が米国にアロケーションされており、業種でもテクノロジーやサービス業が多くなっています。世界株ファンドと大きく異なるようなカントリーアロケーション、セクターアロケーションはなされていません。大半が欧米の先進国の大型株である一方で、インドや中国など新興国の銘柄も一部含まれています。
銘柄選定を見ている限り、独自な銘柄を選んでいるわけではなく、世界的に知名度の高い大型株を選定しています。AIで選んだディープラーニングに、ファンドマネージャーが知識や判断を加えると聞くと、独自のポートフォリオを組んでいるイメージを持つかと思いますが、そういったことはありません。
次に、2023年の3月31日、2024年の3月29日のレポートを比較してみましょう。情報技術が1位であることに変わりありませんが、1年前は金融が2番目のセクターアロケーションでしたが、今回はサービスが2番目に来ていますから、セクターの入れ替えが適宜行われていることがわかります。一方で、国別割合はあまり変わっていません。
1年前には、1位の銘柄がAppleでしたが、今回はMicrosoftとなっています。ただ、1年前にはAppleとMicrosoftの順番だったものが入れ替わった形ですから、大幅な入れ替えというよりは、細かなリバランスだと言えるでしょう。
1年前にはMetaが3位でしたが、今は5番目です。1年前と比べてMetaは大幅に上昇しています。上昇した分、少し割高になっているため、アンダーウェイトしたのだと推測されます。そういった状況をAI、ファンドマネージャーが判断していることから、銘柄を大きく入れ替えるよりも細かくリバランスを行う戦略だとわかります。
ファンドパフォーマンス
パフォーマンス
パフォーマンスを見ると、少しずつ超過リターンが積み上げられています。AIのディープラーニングを使った判断、ポートフォリオの作成を行いつつ、最終的には人の投資判断を入れた結果、運用パフォーマンスは非常に好調です。チャートを見ると、基本的には世界株平均に追随していますが、5年間、3年間では上回るパフォーマンスを挙げています。このことから、時間をかけて超過リターンを積み上げられていると言えるでしょう。
信託報酬を抜いた後の円ベースでは、過去3年間で+8%、5年間では+15%の超過リターンとなっていますから、インデックスを上回るパフォーマンスが残せています。
短期的には指数と類似していますが、値動きは抑えられています。短期的な指標と同じような動き、チャレンジングなアロケーションではありませんが、値動きを抑えることでリターンをしっかりと積み上げられています。
リスクは年率16%程度と平均よりも若干低く、リターンの積み上げに繋がっていることがわかります。シャープレシオも運用開始以来1を超えているため、非常に効率的な運用がなされていると言えます。
ファンドの歴史はそこまで長いわけではありませんが、激動の時期でも1を越えてきていることから、しっかりとしたパフォーマンスが出せていると言えるでしょう。
ファンドの最も優れた特徴はリバランスで、売買回転率は3.8と非常に高くなっています。過去の実績を見ると、短期的な売買、大胆な銘柄入れ替えは行っていません。先ほど取り上げたように、1位、2位のMicrosoft、Appleを入れ替えてはいるものの、大幅に銘柄が変わっているような印象はありません。にもかかわらず、売買の回転率が3.8ということは、かなり多くの売買を繰り返していることがわかります。
銘柄の入れ替えではなく、業種比率の調整、銘柄間のパーセンテージの調整を中心に行っているのです。全売却、新規投資よりも、AIの判断によって、細やかな一部売買、買い増しを繰り返し、頻繁にリバランスを行いながらパフォーマンスを追求しています。
人の手による運用であれば、大胆な投資行動が行われやすいですが、細かな調整はAI運用に特徴的です。人間のみではできないことが実現できていると想定されます。
日々の運用は非常に効率的に行われており、結果としてインデックスを少しずつ上回り、5年間の累積では15%の超過リターンを得られています。
ファンドの設定が2017年であり、そこまで長期的な実績はありませんが、少なくとも設定以来の動きや投資行動を見ている限り、非常に優秀だと感じました。効率的でリバランスがしっかりと行われているため、アクティブファンドらしいアクティブファンドだと言えるでしょう。
ご参考までにファミリーオフィスのような保守的な運用主体でも、今後はAIで分析されるようなファンドをサテライト運用に組み入れされることが予想されています。
資金流出入
どのように判断されたかはわかりませんが、意外と流出が続いています。
評価
評価は星4つです。銘柄選定のみならず、細やかなリバランスと高い売買回転率で着実に収益を積み上げるファンドとなっています。インデックスに対して大きくブレ幅があるわけではなく、しっかりと上回って着実に積み上げている点から、長期で預けるには適したファンドだとの印象を受けました。
本日は、ディープラーニングを活用して銘柄選定を行い、ファンドマネージャーが最終判断を加える世界株ファンドを取り上げました。インデックスに対して大きく上回るわけではなく、地道に上回るところが魅力です。過去のパフォーマンスを見る限り、これからも預けるに値するファンドだと感じます。他にも良いファンドはいろいろありますから、横比較をしながら、判断、分析をしていただければと思います。