本日分析する投資信託はSMBC円資産ファンドです。このファンドは円建てで運用を行い、日本の金融資産に投資するファンドとなっています。
最近、ドル円の水準がドル高で推移しています。そのため、ドル円の水準を気にして円建てで良い運用先を探している方が多い印象を受けます。
円建て運用でこのファンドが高いパフォーマンスを示せば、そのような悩みを解決する救世主となります。このファンドが皆さんの悩みに対する救世主となるかどうかを見ていきたいと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
お願い
最初にお願いです。この記事は情報提供を目的として作成しています。投資の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。また、取り上げている投資信託はランダムに抽出しています。運用会社や販売会社と当社との間に業務提携等は一切ございません。中立の立場でお伝えしていきます。
投資信託概要
概要
SMBC円資産ファンドは、三井住友DSアセットマネジメントが運用しています。後ほど詳しく見ていきますが、このファンドは国債や株式に分散投資を行うバランスファンドです。信託報酬は0.91%で、純資産総額は481億円です。
このファンドは、主に日本国債と日本株式の2つのアセットクラスに投資を行っています。さらに、ここに異なる運用戦略を組み合わせることによって、信託財産を着実に成長させることを目的として運用されています。
各運用戦略の資産配分は、日本国債50%、絶対収益30%、そして日本株式20%を基本としており、このアロケーションはある程度固定されています。
市場環境に応じて、日本株式の実質組入比率を0~20%程度の範囲で機動的に調整します。日本国債が50%、どんな状況でも収益を上げることを目的として運用を行う絶対収益が30%、そしてマーケットの変動を受けやすい日本株式が20%です。日本株式に関しては、状況に応じてポジションをゼロとしたり、先物を使ってリスクを低減しています。リスクが高まったときにはリスクを低くすることができるファンドです。
本日のチェックポイントです。投資信託の投資先が米国の場合、特にヘッジなしではドルの変動リスクを受けることとなります。ドルの水準を気にして運用を探す方にとって、円建て運用の救世主となるかどうかを見ていきたいと思います。また、長期で預ける価値があるかどうかも確認します。
簡易パフォーマンスです。5年間で年率1.73%、3年間で2.35%ですから、年間で約2%のリターンが見込めるファンドです。年間の標準偏差も2%を下回り、リスクとしても2%以下となっています。
投資戦略
ポートフォリオは日本国債50%、絶対収益30%、日本株が20%の配分を基本としています。国債は、ラダー型運用を行うファンドと短期国債への投資を行うファンドに分かれています。
ラダー型運用は、日本国債の長期債を、償還までの期間をラダー(梯子)のように組みわせて運用をおこないます。このような運用をマチュリティ・ラダー運用ともいいます。このマチュリティラダー運用とは、例えば10ある投資資金を1年後の満期に1、2年後の満期に1、・・・10年後1というように、満期を1年から10年までに均等に配分する手法です。これにより、満期が梯子(ラダー)のように来るため、満期までの償還期日を均等に分けることができます。このように、偏った年月で多く持つことで金利の変動リスクで集中的に受けることを避けるためにラダー運用を行っています。
また、もう一つの債券運用は、金利の影響を受けにくい超短期債を持ってリスクを抑えています。
ポートフォリオは50%が短期の日本国債を持つことで、ファンド全体の値動きは非常に抑えられ、安定的にパフォーマンスを向上させることを目指しています。日銀が利上げを行い金利が上昇するところについては、ラダー運用によってできる限りリスクを軽減させているのです。
絶対収益型の運用については、まず現物株を保有すると同時にインデックスの先物をショートします。例えば、TOPIXが上昇する局面で、現物株がTOPIXを上回るパフォーマンスを示せばプラスになります。また、全体が下落する局面ではTOPIXを売るいることで利益が上がりますが、現物はマイナスになります。しかし、現物の下落がインデックスよりも小さければ利益になります。このようにして株式市場の上下の影響を最小限に抑えつつ、リターンを得られるマーケットニュートラルという戦略を採用しています。この運用で絶対に収益が上がるわけではありませんが、絶対収益を求めた運用手法だとお考えください。こちらがポートフォリオの30%を占めています。
残りの20%は日本株式の減配リスクが少ない高配当銘柄に投資しています。具体的な銘柄としては、武田薬品やKDDIなど、安定的で高配当の銘柄を持っています。基本的にはブルーチップ銘柄を持つことでボラティリティを抑えています。
しかし、マーケットが崩れそうなときには先物をショートしてネットポジションを実質的に0まで減らすこともあります。リスクの低い高配当銘柄をロングポジションで保有しつつ、景気が悪くなってくるとショートポジションと組み合わせてポジションを0にしているのです。このような戦略を用いながら、絶対収益と株式のリスクをコントロールしています。
資産の構成比率としては、50%、30%、20%という比率を維持しながら運用し、先物などをうまく活用しています。
銘柄戦略
日本の短期債は、デュレーションが0.15と非常に短い日本国債を保有しています。金利の上昇の影響をほぼ受けませんが、リターンも同じようにほぼ期待できません。ラダーファンドと呼ばれる日本国債の運用は、デュレーションが4.9です。残存年数の平均が5年間で、ラダーに各年数に配分されています。詳細を見ると、残存期間が1年~9年にバラけていることがわかります。
次に、絶対収益型です。トヨタや三菱UFJ、三菱商事などを保有し、インデックスを上回るパフォーマンスを目指してヘッジをかけて調整しています。
高配当銘柄については、武田薬品工業などを中心に保有し、マーケットリスクが高まったときには先物のショートポジションを取ることでリスクを管理しています。
少し難しい運用ではありますが、利益をコツコツ積み上げるためにヘッジ手段を兼ね備えたファンドであることが特徴です。
ファンド・パフォーマンス
パフォーマンス
特徴的なパフォーマンスを示しています。安定性を特に重視しつつ、絶対収益部分と高配当株式部分が収益を確保する手法を採用しており、パフォーマンスは少し特徴的です。リターンは年率2%前後、リスクも2%前後で、数字は長期的に安定しています。
5年チャートと3年チャートの基準価格を見ると、直線に近いイメージです。長期的なパフォーマンスは、ファンド全体では安定型バランスファンドの目的通りの結果が出ています。
それぞれの運用スタイルを見ると、国債部分のリターンはほぼ得られていませんが、ファンド全体に対する安定性を提供しています。絶対収益部分では大きなリターンはないものの、年数%のリターンを安定的に得ています。高配当の部分は主にファンド全体の収益を確保するエンジン部分となっていますが、その割合は20%です。パフォーマンスが反映された結果、安定的なパフォーマンスとなっています。
年2%の利益の積み上げということで、定期預金の運用などよりもパフォーマンスがいいと言えます。今後の為替動向を踏まえると、円資産で何か探したい方にとっては1つの選択肢になるのではないかと思います。
リターンだけを見ると、株式や海外債券には劣るパフォーマンスですが、その分リスクも2%前後と低く抑えられています。その結果、シャープレシオが1を超えており、非常に効率性の高い運用だと感じました。主に低リスク型の安定運用を求める投資家にとっては、検討に値する十分なファンドと言えるでしょう。
資金流出入
資金の流入が続いています。円資産での運用を求めている方に一定の評価を得ていることがわかります。
評価
評価は3.5です。円建てでの安定資産を求める投資家には、検討の価値があると思います。円建てで、株式のような大きなリスクを取りたくない方、例えば年齢的な問題やリスク許容度の問題を抱える方にとって、このファンドは円建ての1つの選択肢となります。ただ、収益性に関しては、日本の現在のインフレ状況を考えるとやや低いと感じます。そのため、評価が0.5ポイントほど下がっています。
本日は、円運用を探している方に向けた分析として、円資産で運用する日本国債と日本の株式市場、そして株式については絶対収益型と高配当型に分けて運用したファンドを紹介しました。
エンジン部分の2割程度で高配当株に投資、残りの8割はなるべくボラティリティを抑えた運用となっています。パフォーマンスは年率2%ほどですが、リスクも2%となっています。このようなファンドを探している方は、ぜひ比較分析をしていただければと思います。