米商務省が2月28日に発表した1月の米個人消費支出(PCE)物価指数は、前年同月比2.5%の上昇となり、2024年12月の2.6%から鈍化しました。市場予想と一致する結果であり、米連邦準備制度理事会(FRB)が目指すインフレ率2%への収束が進んでいることを示唆しています。
米国PCE物価指数前年比

出所:investing.com
エネルギーと食品を除いたコアPCEも2.6%の上昇となり、前月の2.9%から伸びが抑えられました。特に、サービス価格の上昇率が3.9%から3.4%へと縮小した点は注目されます。これは、インフレ圧力の緩和を示す兆候として、金融政策の判断材料となるでしょう。
一方、前月比では総合指数・コア指数ともに0.3%の上昇となり、市場予想と一致。これは、インフレが大きく加速することなく、緩やかに推移していることを示しています。しかし、1月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.0%上昇と市場予想を上回っており、FRBがより幅広い指標であるPCEを重視しているとはいえ、インフレ警戒感が完全に払拭されたわけではありません。
また、1月の実質個人消費支出(PCE)は前月比0.5%減少し、約4年ぶりの大幅な落ち込みを記録しました。これは、大型ハリケーン後の自動車買い替え需要が落ち着いたことが主な要因とされていますが、消費の減速が一時的なものなのか、今後も続くのかは不透明です。ただし、ここ最近の個人消費に関する経済指標を見ている限りでは、景気後退に対する懸念の高まりが優勢になるように感じます。また、米国内ではスタグフレーションという単語の検索数が急激に上昇しており、今後の米経済の柱である個人消費の動向次第では、景気減速リスクが市場で強く意識される可能性があり、株価の上値を抑える要因になりそうです。
次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)は3月18~19日に開催予定で、現時点では政策金利の据え置きが有力視されています。ただ、トランプ政権が推進する関税引き上げや不法移民対策がインフレに与える影響は依然として不透明であり、FRBの金融政策に新たな変数となるかもしれません。
PCE物価指数は、米国の家計が消費するモノやサービスの価格動向を示す指標であり、FRBの金融政策判断において最も重要視されています。消費者物価指数(CPI)と異なり、実際の消費行動を反映しやすい特徴があり、CPIよりも遅れて発表されるものの、より安定したインフレ指標としての役割を担っています。
今後、PCE物価指数がFRBの目標に近づけば、利下げの可能性が高まり、逆に上昇すれば引き締め政策が続く可能性があります。市場関係者は、次回FOMCに向けてPCEやCPIの動向を注視し、FRBの金融政策の行方を慎重に見極めていく必要があります。
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