2025年に入り、金貨価格が史上最高値を更新し、米国株式指数も過去最高水準に迫っています。このような状況の中で、長期的な資産保全を考える際に、個人の投資判断をポートフォリオにどの程度反映させるべきかについて検討する必要があります。
米国市場の現状
近年、従来の伝統的な資産分散(株式・債券・不動産)型ポートフォリオだけでは、COVID-19以降の生成AIやデジタル関連企業の急激な成長スピードに追いつくのが困難になっています。また、世界的なインフレの落ち着きに伴い、金融引き締め策から緩和策への転換期を迎えており、今後も高成長企業の強いパフォーマンスが続くことが予想されます。
機関投資家の影響力
米国の代表的な株式指数であるS&P 500は、毎年指数銘柄の入れ替えを行っており、産業構造の変化を反映する重要な要素となっています。例えば、2020年11月にS&P 500に採用されたテスラの株価は当初133ドルでしたが、2022年の3分割を経て、昨年末には488ドルを超え、4年間で約10倍に成長し、S&P 500の中でも大きな構成銘柄となりました。
S&P 500やNASDAQの成長には機関投資家の影響が大きく関わっています。以下は、主要企業における機関投資家の保有比率のデータです(2024年2月17日現在、出典:Capital IQ)。
- Tesla:保有比率54.22%(機関投資家 5,116社)
- Microsoft:保有比率83.58%(機関投資家 8,131社)
- Apple:保有比率70.74%(機関投資家 7,547社)
- Amazon :保有比率73.05%(機関投資家 7,410社)
- Google:保有比率69.78%(機関投資家 5,826社)
- Meta:保有比率91.05%(機関投資家 6,488社)
- NVIDIA:保有比率74.35%(機関投資家 7,119社)
このデータからも、大型成長株の大半が機関投資家によって保有されていることが分かります。
新NISAと米国市場の影響
昨年から新NISAの導入により、日本からの資金が米国株に流入していると報じられています。しかし、実際には米国の成長株は、前述の通り機関投資家による保有比率が圧倒的に高いため、個人投資家の影響は限定的です。
また、ここ最近の日米株のパフォーマンスの違いを把握しておく必要があります。昨年、日経平均が34年ぶりに4万円を超えたことが大きなニュースとなりましたが、米国のS&P 500はその間に為替を除いても18倍に成長しています。このような成長の違いを考慮すると、投資戦略の見直しが求められます。
ポートフォリオの見直しと新たな戦略
私はアセットマネジメント会社に勤務していた経験があり、伝統的なポートフォリオで資産形成をサポートしてきました。しかし、現在は個人としてデジタル時代の成長企業を長期保有する必要を強く感じ、ポートフォリオに加えるべき銘柄選択を日々行っています。
過去40年間を振り返ると、日本株に集中しすぎたために、米国市場の成長機会を十分に活用できなかったと感じています。また、市場環境についてファンドマネージャーと継続的に意見交換を行なっていますが、そのミーティングでは、技術革新や基軸通貨の変化を考慮し、従来の資産三分割によるリスク分散に加え、産業構造の変化に対応したテクノロジー銘柄を組み入れる必要性が常に話題になります。そのため、指数の入れ替えを考慮しながら、成長性の高い銘柄を組み入れることが重要です。
未来の投資環境と技術の進化
今後数年で、無人タクシーが普及し、人型ロボットが労働力を補完する時代が到来する可能性が高まっています。また、AIの計算能力向上に伴う電力需要の増加により、SMR(小型モジュール炉)などの新エネルギー技術も注目されています。このように、技術革新は加速しており、一度デジタル社会に突入すると後戻りはできません。そのため、現在の投資において産業構造の変化を適切に取り込むことが重要な時期にあります。
2025年の展望
2025年はディスインフレ環境がグロース企業にとって追い風となる可能性があります。特に、
- AI
- 半導体
- バイオテクノロジー
- クリーンエネルギー
- 自動化技術
などの分野が引き続き長期的な成長を見込めます。
個別企業の業績は安定した成長が見込めますが、金利低下のタイミングや景気後退リスクを慎重に見極めながら、「コア・サテライト戦略」のサテライト部分にテクノロジー銘柄を取り入れ、リスクを抑えつつ高リターンを狙うことが賢明な投資手法となります。
まとめ
2025年以降、テクノロジーの進化が加速し、新たな投資機会が生まれる時代に突入します。これからの資産運用においては、従来の分散投資に加え、指数の変化や最新技術の進展を考慮したポートフォリオ戦略が必要です。時代の変革に対応し、未来に向けた適切な投資判断を行うことが、長期的な資産成長の鍵となるでしょう。
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