米国経済は物価上昇の鈍化傾向を示す一方、トランプ政権の積極的な関税政策による不透明感が市場に影を落としています。2月の消費者物価指数(CPI)と卸売物価指数(PPI)と株式市場の動向から、今後の展望を探ります。
インフレ圧力に改善の兆し
米労働省が発表した2月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.8%上昇と、1月の3.0%から鈍化し市場予想の2.9%を下回りました。食品とエネルギーを除くコアCPIも3.1%と、1月の3.3%から減速しています。
米国 消費者物価指数 (前年比)

出所:Investing.com
しかし、依然として高水準が続いており、特に注目すべきは鳥インフルエンザの影響による食品価格の上昇です。卵価格の高騰が食品全体を2.6%押し上げる要因となりました。一方、エネルギー価格は0.2%の下落となっています。
卸売物価指数(PPI)も市場予想を下回る結果となり、2月は前月比で横ばいでした。ただ、サービス料の0.2%低下が全体を押し下げる一方、鶏卵価格が53.6%も急騰するなど、品目によって大きな差が見られました。また、詳細を見ていくとPCE(消費支出)に関する項目が下げ渋っており、FRBの利下げ予想に反動が見られました。よって、CPIで期待が高まった利下げに対してPPIでやや期待後退ということになり、引き続き関税の影響度が高い状態が続きそうということになります。
関税政策がもたらす新たな不確実性
トランプ政権の関税政策が市場に新たな不透明感をもたらしています。2月4日に発動された中国製品への10%追加関税はまだCPIに反映されておらず、3月には20%への引き上げも実施されました。さらに12日には鉄鋼・アルミ製品に25%の追加関税が適用されています。
トランプ大統領は関税の引き上げが物価に与える影響を否定していますが、市場では物価圧力の長期化や景気減速への懸念が広がっています。これはFRBの利下げ時期にも影響を与える可能性があります。
株式市場の動揺と国際的緊張
米国株式市場はこうした不透明感を反映し、13日のダウ工業株30種平均は4日続落して前日比537ドル安の4万0813ドルで取引を終えました。これは昨年9月以来の安値であり、特にハイテク株を中心に主力株が下落しました。
関税政策に対するカナダやEUの報復措置表明も市場心理を冷やす要因となっています。トランプ大統領はEUが米ウイスキーへの関税を撤廃しなければ、フランス産ワインなどに200%の関税を課すと警告し、貿易摩擦の激化が懸念されています。
さらに政府機関の一部閉鎖リスクやウクライナ情勢の不透明感も投資家心理に影響を与えています。ロシアのプーチン大統領は米国提案の停戦案に即時合意せず、協議継続の姿勢を示しました。
今後の展望
インフレ指標は改善の兆しを見せていますが、関税政策による新たな物価上昇圧力が懸念されています。家賃などのサービス分野は価格調整に遅れが見られ、アトランタ連銀の粘着物価指数も高水準を維持しています。
市場は関税の影響を見極める動きを続けており、貿易摩擦の長期化や政治的不確実性が経済成長とインフレ率に与える影響に注目が集まっています。米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策判断に、これらの要素がどう影響するかが今後の焦点となるでしょう。
また、バリュエーションにも変化が出てきました。ヤルデニリサーチは年始時点で25年末のS&P500予想を7000ポイントに設定するなど最も強気でしたが、早速6400ポイントに下方修正。ゴールドマンも年末目標を6200と従来の6500から下方修正しています。彼らが修正することは想定内ですし、逆張り指標(リバースインディケーター)としても有名な金融機関なので、今後は予想EPSがどこまで鈍化するかどうかを冷静に見て判断すべきだと思います。その意味では、本日14日のミシガン大消費者信頼感指数が意外に注目される展開になります。ガソリン価格が落ち着いている中で消費者マインドが低下するようであれば徐々に予想EPSにも影響が出て可能性が高まるので要注意です。
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