中東情勢や国際的な緊張が高まるたびに、「今回はこれまでとは違うのではないか」と感じるのは自然な反応です。特に資産規模が大きくなるほど、その不安は意思決定に影響を与えやすくなります。ただ、その不安に基づく判断が、長期的にどのような結果をもたらすのかについては、一度冷静に整理する必要があります。
相談内容
地政学リスクで株価が大幅に下落するという記事などを多く見かけますが、時間分散して積立をしている投資をやめるべきでしょうか。
当社回答
結論として、積立投資を止める合理性は極めて限定的です。
むしろ、その判断は長期的な資産形成において不利に働く可能性が高いと言えます。
まず確認すべきは、株式市場の構造です。
S&P500は過去約100年で、年率平均約9〜10%のリターンを記録しています。
一方で、その過程では
10%以上の下落は平均して年1回程度、
20%以上の下落も約4〜5年に一度発生しています。
さらに、リーマンショックでは約▲57%、
ITバブル崩壊では約▲49%、
コロナショックでは約▲34%の下落がありました。
ここから分かるのは、
下落は「異常」ではなく「前提」であるということです。
一方で回復局面を見ると、
リーマンショック後は約5年で高値を更新し、
コロナショックでは約5ヶ月という短期間で回復しています。
つまり市場は、
短期的には大きく変動するものの、
長期的には成長してきたという事実があります。
ここで重要なのは、積立投資の本質です。
積立とは単なる時間分散ではなく、
「価格変動を利用して取得単価を平準化する仕組み」です。
価格が下がる局面では、
同じ投資額でより多くの資産を取得できます。
したがって、長期的にはむしろ合理的な状態と言えます。
しかし実務上、多くの投資家はこの局面で行動を変えます。
価格が下がるとリスクを強く意識し、
積立を止める。
この判断は短期的には安心をもたらしますが、
長期的には最も有利な取得機会を見送る結果になりがちです。
この背景には、人間の認知バイアスがあります。
損失は利益の約2倍強く感じられるため、
下落局面では将来のリターンよりも、
目先の不安が優先されやすくなります。
チャーリー・マンガーは
「優れた投資は気質の問題である」と述べています。
つまり、投資成果は知識の多寡ではなく、
どのような局面でも行動を維持できるかに依存します。
さらに重要なのは、市場リターンの構造です。
過去の分析では、
年間リターンの大部分は
ごく限られた上昇日に集中しています。
上昇率の高い上位10日間を逃すだけで、
長期リターンが大きく低下するケースも確認されています。
これはつまり、
「一時的に市場から離れる」という行動が、
最も重要な局面を外すリスクを含んでいることを意味します。
投資の鉄則は極めてシンプルです。
・長期で考える
・分散する
・感情によって行動を変えない
・タイミングを狙わない
しかし現実には、
この原則を継続して守れる投資家は多くありません。
重要なのは、
「今は危険かどうか」ではなく、
「下落局面でも予定通り行動できる設計になっているかどうか」です。
まとめ
地政学リスクを理由に積立を止めるという判断は、
長期的な資産形成において合理的とは言えません。
むしろ、そのような局面で行動を変えること自体が、
リターンを損なう要因になり得ます。
資産形成において重視すべきは、
相場の見通しではなく「行動の一貫性」です。
環境に応じて戦略を変える限り、
結果は安定しません。
投資戦略は、
「平常時に正しいか」ではなく、
「不確実な局面でも維持できるか」で
評価されるべきです。
その視点が欠けている場合、
問題は市場ではなく設計にあります。
多くの投資家はこの点で判断を誤ります。
そして、その差が
長期的な成果の差として現れます。
長期投資とは、
未来を正確に予測することではなく、
どのような局面でも
一貫した行動を維持できるかどうかにかかっています。
▼回答者プロフィール
渋谷豊(ファミリーオフィスドットコム 代表取締役)
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