相談内容
元会社経営、60代男性からの相談です。この方は、創業者兼代表取締役として5年前まで会社を経営されていました。現在は、第一線を退かれ、株主として退任後の生活を送られています。後継者の代表取締役はお子様が引き継いでいます。家族構成は、奥様とお子様一人の3人家族です。今回は、現在全く手つかずになっていた生前対策と資産運用についての相談となります。
相談者ご自身が、生前対策として気になっているのが、
・年々価値が上昇していく自社株の扱い
・資産管理会社の設立について
・将来を見据えた資産運用の方針について
・不動産評価を活用した相続対策
などでした。
主な資産は、ご本人名義の自社株の価値がおおよそ5億円、預貯金が3億円、ご自宅が1億円です。最近では、いろいろな金融機関や仲介業者から提案型営業を受けており、何から始めるべきか判断がつかないということがご相談のきっかけでした。ご希望としては、できる限りお子様に資産を継承したいというものでした。
結論として、以下のように取り組みを行うことになりました。
解決案
自社株対策
自社株は、業績が好調で増収増益を続けているため今後も株式価値は上昇していく一方です。この株式を、今後もご自身で保有していくと相続発生時に税額が大きくなる懸念があるため、今回、お子様へ時間をかけて生前に贈与を行うことを検討しました。色々と検討した結果、信託を活用したスキームにて極力税額を抑えつつ、全株式の受益者を変更することにしました。想定される時期に相続が発生した場合の相続税と比較すると、何十分の1に納税額が抑えられる効果が見込めます。
資産管理会社設立
現預金の額は自社株よりも少ないものの、預金は相続評価額100%となることから、お子様へ生前でシフトしたい金額を決めて対応策を検討しました。結果、資産管理会社を設立し活用することにしました。お子様を株主とし、資産管理会社を設立します。その会社で社債の発行など資金調達を行い、お父様の資産を活用して徐々にお子様の資産を増やしていく案を導入しました。正しい方法で資産を移行していくため、どうしても年月はかかりますが、それでも、ほぼ希望の額をほぼ税負担なしでシフトすることが出来ました。60歳代という若い年齢であったことも有効な対策が行えた理由の一つです。
資産運用
資産運用も大事な課題でした。多くの資産を生前対策としてお子様へシフトする一方、ご夫妻が使う現預金の運用がほぼ手つかずの状態でした。投資経験がほとんどないことから、超保守的に運用することを希望されていました。資産運用でリスクを抑える方法、長期の国際分散投資の有用性、資産配分が運用成績のほとんどを占めることをお伝えし、保守的に行う資産配分比率をアドバイスさせていただきました。この内容を携えて、今後ご自身で金融機関と相談しながら運用を開始していただきますが、経済状況の変化を踏まえて適切な資産配分については、今後も当社が随時アドバイスをお伝えしサポートしていきます。
不動産を活用した対策
今回は、上記3対策でまずは十分な対応が実現できました。不動産の相続時の評価を利用した対策も検討しましたが、現在の不動産取得の価格と利回りなどを勘案すると適切な時期ではないという判断になり今回は見送りとしました。
まとめ
このように相談内容によっては、資産管理会社や信託の活用などが多用されます。相談時にご自身では想定していなかった対策も世の中には数多くありますので、幅広に情報を集め判断することがとても大事なポイントになります。