相談者は、資産運用を検討しており金融機関に相談に行かれたそうです。「日中仕事をしているため投資を考える時間があまりない」と金融機関に話をしたところ、投資がスタートしたあとはほとんどメンテナンスの必要ない投資、富裕層の方が多く実践をしているという運用手法を聞いたそうで、それについての相談でした。
債券担保のレバレッジ投資
その方が、もともと投資資産として保有していた債券を担保にして、新たにローンを借りて、さらにその資金で債券を購入して投資をするという提案だったようです。その方は、どこにリスクが有るかはある程度理解できましたが、もっと専門的に気をつけるべき点などを教えて欲しいという相談でした。
富裕層の資産管理をおこなうプライベートバンクなどでは、資産価値のある有価証券を担保にローンを活用し期待利回りを高める投資手法があります。銀行や証券会社によってその呼び名はことなりますがレバレッジなどの言葉を使うところが多いようです。
スキームのポイントは調達通貨の低金利
さて、このスキームのポイントは、調達する通貨の金利が低金利であることで、有価証券担保ローンを低金利で借り入れができることです。 その上で、相談者に以下を聞いてみました。
相談者への質問
1)お借入の金利は何%だと聞いていますでしょうか?
2)すでに保有している債券の種類はどのようなものでしょうか?
3)借入資金で運用する債券の種類はどのようなものでしょうか?
相談者からの解答は以下の通りでした。
1)借り入れの金利は、円建てで約1.0~1.5%だと聞いています。まだ、社内で調整が必要だけどできるだけ低く調達してくれるということでした。
2)既に保有している債券の利回りは約6%程度だと思います。中身ですが、米ドル建てで外資金融機関が発行する優先出資証券という債券です。私はその債券を100万ドル(約1.1億円)保有しており、担保の掛け目は約50%にして5000万円のローン借り入れを起こしてはどうかと言われています。
3)購入する債券は、やはり同じような6%程度の米ドル建ての高利回りの債券が見つかればと言われています。
このレバレッジ投資についての分析
提案された内容によると、ローン金利が円建てで1.50%程度として、投資元本1.1億円とした実質利回が6%から8.25%に上昇するため投資効率が高くなるのは事実です。 ただし、投資効率が良い反面、判断の際にしっかりと確認と理解をしていただく必要があるのはスキームのリスク管理です。
おそらく担当の方から、為替の変動リスク(外貨リスク)、ローン金利上昇リスク、債券価格の変動リスク、発行体の信用リスクなどの説明はすでに受けているとは思います。
私達は金融商品を紹介することは業務として行っていませんが、他のところに相談してもあまり教えてくれないであろう「本当の資産管理」についてことをお伝えし、さらに、以下の点をプライベートバンクの担当者に質問をしてみることをアドバイスさせていただきました。
担当者への質問
1)担保の掛け目は経済状況次第では当初の設定から変更になるのか?ちなみにリーマンショックの際は、このような債券の掛け目は当初から変わらないのか。また、変更をする際は金融機関が一方的に変えられるようになっているのか?さらに、今のようなボラティリティの低い投資環境が急変したときも担保として認めてくれ、保有している債券を担保として認めなくなることはないか?
2)今後、為替リスクのヘッジするためにドル建てのローンを変更できるのか?また、金融情勢が急変しドルや円の調達コストが上昇した場合、どうすれば良いのでしょうか?
このような不測の事態を確認することは資産管理において欠かせないことです。その上で最終的なご判断頂きたいととお伝えしました。ちなみに質問の趣旨は、ITバブル崩壊やリーマンショッククラスのイベントが発生した際に起こった事実に対する確認です。このような事をきちんと把握して経験したような担当者とお付き合いされるることが大事です。実は、これ以上にさらに押さえておくべきポイントは数多くありますがそれでも最低限確認しておきたいポイントです。
もう一つ加えるとすれば、優先出資証券とか劣後債券などの少しリスクの高いハイイールドの商品は、市場の価格変動が高い時、つまりVIXと言われる指数が高く推移している場合は、売却希望者と購入希望者のオファー価格とビット価格が大きく乖離することが多く、時価から乖離した価格で売買される可能性があることにもご注意が必要です。
まとめ
投資にはすべてリスクが伴います。リスクのない投資はありません。資産運用においては、リスクの所在を把握することがとても大切です。しつこいと思われるぐらいに納得行くまで担当者へ相談と質問をしてください。