現在、定年後の生活を送っている方からの質問です。退職後は、ご両親から相続した資産に加え、ご自身で貯蓄をした資金を合わせて資産運用を行われているようです。ご両親から相続した金額が比較的にあり、これからはきちんと管理しないといけないと思い資産運用は未経験で一からのスタートだったということでしたが、自分なりに調べつつ試行錯誤しながらどうにか今までやってこられたとご自身でおっしゃっていました。
現在は、投資用不動産、投資信託、日本株などに徐々に資産運用の幅を広げつつ、この資産をできるだけお子様子やお孫さんたちに相続していきたいとお考えのようですが、最近特に日本のインフレについて心配していると常々おっしゃっています。
そこで一部を外貨で保有しようかと考え始めたものの、最近は外貨預金の金利が低いため保有する必要があるのかどうか悩んでのご相談でした。円で生活する日本にいるため、外貨は必要ないようにも感じているようです。
資産管理で最も大事なのは資産保全
資産管理において一番の目的はといえば、それは資産を保全することです。つまり、資産の価値が値下がりすることは最も避けなければいけません。それを避けるために資産の一部を外貨で保有していると、インフレで日本国内の物価が上がった場合でも資産の目減りを最小限にすることができます。
また、将来突発的な出来事が起こって急な円安になった場合でも、外貨を保有していると資産価値を保つことができるので、資産を守ることにつながります。円高になった場合は逆に資産が目減りするというリスクもありますが、日本における「インフレリスク」「円安リスク」は年々高まってきています。
外貨を保有するメリット
外貨を保有して分散投資を行うことは、急なインフレや円安から資産を守るために有効な投資方法のひとつです。 日本円の価値が下がってインフレになると輸入している物の値段が上がり、結果として国内で流通物価が上がるため、現在と同じような生活水準を守るのが難しくなりえます。今までと同じ生活費で、同じものを買い、同じサービスを受けることが難しくなってしまうことに注意が必要です。インフレになるということは「日本円の価値が下がる」ということなので、外貨に対して円安になり、海外輸入 も大きく値上 がりすることになります。
このように、インフレになると国産・輸入品のどちらの物価も上がり生活が厳しくなりますが、円の価値が下落するということは、相対的に外貨の価値が上がることを意味します。そのため、資産の一部に外貨を組み入れていれば、急な物価上昇が起きても資産の目減りを減らすことができ、その結果生活を守り、資産を守ることにもつながります。
円安も不安、円高も不安
前述のようにご説明をしたところ、「もし外貨を保有してインフレにならなかった場合は、将来は円高になるのでしょうか。せっかくインフレ対策したら、結局円高で損したということにならないか心配です」といったご心配や、「日本はお金をばらまき過ぎで日本円の価値が将来に渡り維持できるのか不安ですし、どちらに転んでも良いようにする方法かとあるのでしょうか」といったご質問を受けました。初めて外貨に投資をする方には、多かれ少なかれこのような心配は共通のように感じます。
予測は困難、でも備えることが大切
2000年以降、日本は「国に膨大な借金がある」「少子化で働く人口が減少している」「ここ20年経済成長が停滞している」という現状もあり、「日本の国力がますます低下していくのではないか」と心配する声が増えています。そのようなこともあり、日本はいずれ円安に見舞われるといった本や記事を見かけることも多く心配をされているのではないかと思います。
例えば、リーマンショックの時のように世界で経済危機などが起こった場合「円の買い戻し」ということで円が買われ、円高になることもありました。一方では、最近では「危機のときにドルが買われ円が売られる」という現象がみられることもあります。
このようなことから明確に将来円安になるとか円高になると断定するのはとても難しいといえます。 ご指摘の通り、アベノミクスの長期の実施にも関わらず日本のGDPがなかなか上がらないこと、日本が金融緩和策で日本円をどんどん刷って増やしていること、その日本円で株を大量に購入しているため、株価に対する信頼性が薄くなっていることから、日本という国に対する信用が低下し円が安くなる可能性はあります。
今までは日本円は「信頼性が高く、何らかの危機の折には資産を逃がすことができる通貨」と考えられて世界中から買われてきましたが、今後その認識が変わって日本円が「売られやすい通貨」に変化し、急激な円安になる可能性があります。
また、円安になると輸出企業の業績は良くなるものの、電気やガス、ガソリンなどの燃料関連、食料品などの物価は上がり、家計を圧迫することになります。企業はメリットを享受できるところもありますが、少なくとも一般市民の日常生活では様々なコストがあがり、生活が苦しくなります。
保有資産がすべて円建ての場合は、このような急激な円安による物価高の影響を受けてしまうため「老後30年分の充分な資産があったのに、物価が上がったので今では10年持たない」といったことが起こりえます。
しかし、このような状況でも資産に外貨を組み入れていれば、円安になればなるほど外貨の価値は上がる仕組みのため、結果的に資産の価値を守ることに繋がります。 外貨を保有していれば、「日本売り」と呼ばれるような急激な円安が発生しても、大切な資産を守ることができます。
このようなことから円高になるリスクはあるものの、それよりも円安のリスクを回避する方法をしっかりと確保することが今の状況下では大切でなないかと思います。 長年に渡ってポートフォリオの中に外貨を組み入れて運用してきた、アセットマネジメントを専門とする 星野さんに外貨の保有ために確認しておくことと保有割合について確認します。
為替変動リスクには注意が必要
資産に外貨を保有すると、将来のリスクに備えることができるいっぽうで、「為替変動リスク」も発生するため注意が必要です。
外貨レートは常に動いているため、外貨を購入した時点よりも円高になった場合は保有している外貨の価値が下がり、その結果資産全体の価値も目減りしてしまいます。外貨の短期売買を前提としている場合は、円に換えるタイミングによっては損失を出してしまうこともありますので注意しましょう。
資産の一部として外貨を保有すると、将来のインフレリスク・円安リスクに備えることができますが、この場合は長期保有が前提となりますので、短期の為替変動を気にすることなく外貨をもつことができます。資産に外貨を組み入れるときには、運用益を狙うのではなく「将来何かが起こったときのためのリスクヘッジ」としての長期保有を検討するようにしましょう。
また、円高が進行した時に焦らないように、外貨の資産を持つ割合、専門的にいえば「アロケーションの割合」に注意が必要です。例えば、円資産が〇〇%、外貨資産が〇〇%とか。あくまでも原則ですが、全資産における外貨比率は50%を超えないようにするのが目安になります。さらにポートフォリを強固なものにするには、その外貨の年間変動率を把握すること、また外貨建で購入する資産の価格変動率も把握することが大切です。
例えば株式、REIT、国債、社債などの変動率に外貨の変動率を乗じてリスクを算出することができるようになれば安心して長期投資ができるのではないかと思います。長期投資をすることで、外貨の短期の変動を許容することができ、最終的に外貨の本源的価値に収斂していくことで運用が最適化されるようになります。
まとめ
外貨資産を保有することは、インフレ対策にも円資産価値の減価対策にもなることから保有することが大切です。また。為替の変動リスクを回避するために、長期で保有することが大切です。