ご実家が所有されていた土地が再開発の対象になり市場価値より高く売れてまとまったお金が入った方からのご相談です。
このまとまったお金を今後どうするかなど、これから家族会議を開いて決めていくのですが、家族会議の前に整理しておくべきポイントなどについてアドバイスのご要望です。
状況確認
まずは、売却時期、売却は今年でしょうか。それとも昨年以前でしょうかというご質問をしました。そうしたところ、売却は今年で売却代金も既に手元に入ってきているようです。
その上で以下のようにお話をしました。
家族会議で話すべきこと
家族会議に臨む前にしておくべきことは、来年の確定申告で支払う税金を確保しておくことです。顧問税理士さんかお知り合いの税理士さんに相談して金額を確保しておいてください。 また、その納税資金についてそのまま預金で保管するか、運用をするかをきちんと方針をきめておいてはいかがでしょうか。
おそらく、今のように年度の早い時期に売却した場合にはの納税資金を来年まで運用したいという意見が出る可能性がります。 加えて、新型コロナの影響で株式市場が大幅下落してしているので短期で運用チャンスだというコメントもあるかもしれません。
もちろん上手くいくと納税資金の有効活用にもなりますが、反面、支払時期を運用資産が下落して迎える可能性もあります。 家族会議で納税資金を運用すべきか意見のすり合わせを行うことが必要です。
このようなお話をした後に、このような質問がありました。納税資金の運用は考えてもいませんでしたが、私はリスクを取りたくないので預金で確保しおくべきかなぁと思いましたが、ちなみに私達と同じような方はどのようにされている方が多いのでしょうか?
このような質問はとても多くいただきますが、答えはご家族それぞれです。それでも、少し具体的にお答えしタイト思います。
納税資金の運用についての確認事項
納税資金を運用される方には、以下の確認が不可欠です。
1.納税資金の運用商品は、納税時期が過ぎても長期間保有して価値が高くなる見込みのものでしょうか
2.納税時期にその運用商品を売却しなくても納税できる資金を同額お持ちでしょうか
これが可能であれば、納税資金を運用して良いとアドバイスしています。 でも、この質問をよくよく考えるとあることが分かります。 それは、もし納税資金を投資するにしてもその同額の資金を保有していないといけないということです。つまり、納税資金を運用しているのも、納税資金以外の余剰資金を運用しているのも私のアドバイスを聞いていただけるのであれば同じことであるということです。
納税資金の運用には時間的な制約というリスクがある
なぜそのようなアドバイスになるかといえば、それは、納税まで約1年程度の運用期間においては、運用手段が限られているため、それ相当なリスクを背負わなければ運用が不可能だからです。 現在のような低金利では、円建ての預金では運用には値しません。だからといって納税資金を外貨に円転してもさほど金利も得られず、為替変動リスクのみ背負うことになります。
もし、為替の変動をヘッジをするとなると、おそらくマイナス金利になります。それではと債券で運用してみても1年程度の債券では高金利は見込めませんし、高金利を得られるとすると信用リスクを背負います。 さらに、仕組債と言われる商品で運用してはといわれても、いまのような円建てのベース金利では、円が低金利であるため複雑なオプションを内包した仕組みで組成しないとクーポンはでません。最後に株やヘッジファンドではどうかと考えても、変動率が高いのでやはり期限を区切った運用にはあまり適していないといえます。
このような観点から、資産管理は長期ではリスクを回避する手段はありますが、期限の制限を伴う運用は現在の低金利の環境下ではとても難しいということを是非、家族会議でお伝えいただければ良いのではないかと思います。
これを機会に金融機関に相談してみる手も
折角の機会なので、取引のある金融機関などに納税資金の納税時までの運用を提案してもらっても良いかもしれません。 おそらく担当者にとってはとても難しいリクエストになるとは思いますが、その金融機関の提案力などが良く見えてくると思います。
いずれにしろ今後は金融機関に相談をしつつ提案してもらいながら運用を進めて行くことになりますので、良い機会だと思います。
仕組債券の提案があったら
取引のある金融機関に相談したら、仕組債券を提案されることがあるのではないかと思います。 すこし専門的になりますが、今の相場環境は、資産の動きが大きい、つまりボラティリティがとても大きい状態なのでオプションの価格も高く、その結果それを活かして仕組債の金利(クーポン)が高く組成することは可能になると思います。
しかし、その高金利のトレードオフ(何かを得ると、別の何かを失う、相容れない関係)として仕組債券には何かしらの条件が内包されていると思われますので、その条件(トリガー条件、ノックアウト条件)などをしっかりと理解して分析することをおすすめいたします。
投資家自身でその投資に対してリスクや仕組みを把握していない投資は避けることが鉄則です。
運用以外にも課題はあります
納税資金に加えまして、余剰資金をご実家にてご両親名義で運用をされるのか、それと資産承継などを考えているかなどの大方針が決まりましたら、今一度ご相談ください。 おそらく、やるべきことと、やれるべき対策が多数あると思います。
まとめ
資産を売却した際、納税資金を確保しておくことが重要です。また、短期間でも運用で確実な収益を確保するのはとても難しいので慎重にご検討しましょう。