相談者は、家業として投資用不動産を複数所有しています。家業ということもあり、元々保有していた不動産だけでなく、タイミングをみて積極的に物件を取得されてきました。物件取得のスピードを上げるために不動産投資ローンを活用してきましたが、キャッシュフローを重視してすべて変動金利で組んでいます。
今は低金利でも
現在は低金利で全く心配はしていませんが、先日、友人から「世界的に量的緩和が行われているから将来はインフレになるかもしれない、そして変動金利が大幅に上がるかもしれないから気をつけたほうがいいよ」と言われ不安になっているということでした。
そいったことから、不動産投資が家業なので、インフレに対してとても心配になってきたようで、そもそもインフレになる可能性があるのでしょうか?というご相談でした。
インフレと金利の話
家業が不動産投資となると、気になるのは運用面での利回りと調達面での金利だと思います。その調達において金利をいかに低く抑えるかが資産管理では大事になります。
それではまず、インフレの可能性についてですが、日本はバブル崩壊以降、総じてデフレ傾向が続いている特異な国です。そのため、日本銀行や政府はこのデフレから脱却することを目指し積極的な金融緩和政策や財政政策を行ってきましたが、それでもなかなか目標である年率+2%の物価上昇率を実現することができませんでした。つまり、日本という国の目標には、ゆるやかな物価上昇が念頭にあるということです。
インフレの可能性
次に、経済環境においても将来日本においてインフレが訪れる可能性は多くの識者から発信されています。その主な理由は、次の4つです。
1)バブル後の経済の立て直しのために日銀から大量に供給された資金がインフレの起点となる可能性があること
2)日本の貿易構造に変化が生じており以前ほどの貿易黒字額ではなく、その黒字額が縮小傾向で今後円安が進行する可能性があること
3)原油は輸入依存度が高く、食物自給率も低く輸入国であることから今後世界需要の高まりによりコスト・プッシュ・インフレになる可能性があること
4)社会保障費の増加などによる財政危機などによる円安によるインフレ懸念 細かなものも見ていくと、上記以外にもインフレが起こる要因は様々存在します。
このようなことから、インフレは起こりうると考えて、資産管理策を考えることは必要なことだと言えます。
インフレ対策として固定金利への変更
相談者は、将来、インフレが起こりえるということを踏まえ、すぐに変動金利から固定金利へ変更すべきかどうか、また、 そのタイミングを図るために何を参考に判断をすれば良いでしょうかといったご質問がありました。
今すぐに変動金利を固定金利に変えるタイミングでなないものの、しかしながら、金利が上昇する兆候がある、もしくは、インフレ率が上がりつつあるなどの変化は把握し、その変動が生じたら固定金利へ変更を検討すべきかと思います。
確認する方法
それを確認方法として、1)消費者物価指数、2)日本の10年金利など日頃から注意しておく必要があります。
ところで現在の日本がおかれている環境は、日銀が金利を高く誘導する政策に舵を切るには難しい経済環境にあり、かなり経済が好転しない限り金利上昇は見込みが薄い状況にあります。
また、もし今後緩やかな金利上昇になったときは、それは景気がよくなっている影響である場合もあります。その時は、おそらく不動産価格も同時に上昇しているかと思います。その際は、不動産の収益利回りと借入金利のイールド・ギャップを考慮して固定金利か変動金利化を判断することが良いと思います。
金利上昇対策としての金(GOLD)投資
相談者は更に、金利上昇になっても資産を防衛する方法として、金(GOLD)を保有すれば良いと本で見かけたので、どのぐらい金を保有すればいいのでしょうかというご質問を受けました。
確かに、金が資産運用に欠かせないのは事実です。また、金(GOLD)が金利上昇への防衛策として有効かというこというのはとての良い視点だと思います。世間的には金はインフレにつよいと認識されていますので、そのような話を見かけたのだと思います。 金は、インフレには基本的には強いといえます。
詳しく説明すると金が上昇する条件は米国の実質金利がマイナスになったときに価値が大きくなる傾向があります。少しむずかしいのですが、金価格と米国の実質金利の間には強い相関性があり、米国の実質金利がマイナス圏へ突入する過程では金は上昇しやすいのです。実質金利とは、名目金利 – 予想物価上昇率で算出されます。
さて、変動金利にどう対応するかですが、そうなると、変動金利は日本の金利に連動するものです。日本の金利上昇をヘッジ(回避)するための目的で金を購入するためには、金価格の上昇と日本の変動金利の上昇が連動(相関)している必要があります。しかし、残念ながら連動性(相関)はあまり高くありません。
結論としては、借り入れ金利の上昇の回避として金は有効であるとは断定できないということです。とはいえ、世界的なインフレ傾向になった場合は話が別になります。日本も含む世界的にインフレになった場合は、おそらく日米共に予想物価上昇率も名目金利も上昇している可能性があるといえます。その際は金価格が上昇しているはずです。 そのため、借り入金利の上昇に対するヘッジとしては一部効果があるかもしれません。
しかし、それでも金価格と住宅ローン金利の相関が必ず連動するとは言えず、やはり、国内の金利上昇時に利益や値上がりが期待できる資産(アセット)を保有することで、相殺する分析を行うことが必要かと思います。
まとめ
日本がインフレにならないという理由はないので、対策を考えることは資産管理を行う上でとても大切です。