相談者は、数年前からスイスの銀行に口座をもっています。最初の担当者とは相性も良く安心して口座の管理を任せていました。たどたどしい日本語でしたが定期的に電話も頂いていたようです。しかし2年程前に担当者が突然かわり銀行とのコミュニケーションが取れなくて困っています。
銀行の担当者が変わる
年末に手数料変更に関する手紙が届いたそうで、正直内容がよく分からなかったようです。運用は銀行に任せていますがコロナの影響で大きく資産が減っているのではないか心配でしょうがありません。(相談時は2020年3月)
また、その銀行にはもう日本語が話せる方がおらず、新しい担当者に連絡しても言葉が通じないのでどうしていいか分からないという相談でした。
担当者で異なるサービスの質
残念ながらバンカーが他行に転職するのはよくあることです。プライベート・バンキングの利用において担当バンカーとの信頼関係は大変重要です。そしてバンカーによって提供される銀行サービスの質は大きく違います。
まずは至急、現担当のバンカーと連絡をとり現在のポートフォリオの状況、手数料に関する説明を受ける事をお伝えしました。コロナの影響で市場がここまで大きく動いている状況下、一任勘定で運用されているお客様に連絡がないのは通常ではありえないという銀行のあるべきスタンスをお伝えして背中を押しました。
報告書についての依頼
相談者へ質問したのは、
・報告書はどの頻度で送られてきますか?
・ebankingはお使いでしょうか?
この2点です。報告書は毎月届けらるように指定する事をお勧めいたしましたし、また一任勘定では報告書とは別にリポーティングを要求する事も可能だとお伝えしました。リポーティングとは専属のポートフォリオマネジャーが各ポートフォリオの運用状況、今後の見通し、パフォーマンスの分析などをまとめた資料です。是非、資料を要求して現在の状況をご確認することをご説明しました。
近年進む手数料の改定
ここ数年、多くのプライベート・バンクが手数料の見直しを行っています(上がっています)。銀行によって手数料体系は複雑で不透明な部分も多く、大変分かりづらくなっています。手数料表を確認しポートフォリオを拝見する必要はありますが、もしかして手数料の交渉余地があるかも知れません。
A様のメールアドレスが銀行で登録済みであればメール対応をしてもらえます。以下の文章を参考にバンカー宛に連絡をお取りください。
Dear Sir, I hope all is well. My name is XXXXXX and my account XXXXXX. I would like to receive the latest portfolio statement and the Portfolio Reporting/Review, including performance analysis, as soon as possible. Could you also check how often my portfolio statements are produced and sent by post mail ? I would like to receive them every month. Regarding the new fee schedule, could you please explain the impact on my portfolio ? Best regards,
銀行に連絡してみたら
相談者は、ご主人が他界されて以来スイスは訪問しておらず、新しい担当者とは話した事も顔を見た事もないそうです。また、英語が話せないということで、前述の文章をコピーしてメールで連絡したところ最新の報告書が届きびっくりしたとのご連絡をいただきました。預かり資産は年初17.7%下がっており、Reporting は来週届くようですが口座を閉めた方がいいのか悩んでいるという相談に変わりました。
ここ直近のマーケットの下げは激しく、急速、そして正直なとこ逃げ場が非常に限られており、ポートフォリオへの悪影響は避けられないというのは事実だと思われます。基準通貨にもよりますが、もし米ドル・ポートフォリオで年初来の下げが幅が約18%という事は高いリスクが設定されているグロース・ポートフォリオ、もしく想定許容度を超えたリスクを取っているバランス・ポートフォリオ運用だと考えられるということをお話しました。
報告書の見方
報告書の1ページ目、もしくは2ページ目にBalance, Growth, もしくはAggressive などと書いてあると思うと伝え、ご確認をお願いしました。一任勘定のバランス・ポートフォリオは、銀行にもよりますが年初10%~15%程下がっています。 詳しい状況が分からないことも含め、具体的なアドバイスをする事なく、口座開設当時と現在の状況はかなり変わっているのではないかというご意見をお伝えしていました。
さらには、ポートフォリオ戦略(リスク尺度)も含めた運用方針の見直しを相談されてははいかがでしょうかとお伝えし、更には、 また引き続きスイスの銀行で資金を運用する意味はあるのか、担当者とのコミュニケーションが改善する余地はあるのか、口座を閉鎖した際に資金をどうするのかなど総合的に考えて、今後の方針を決める事をお勧めいたしました。
まとめ
銀行口座は目的を持って維持管理してください。また、当初の目的が損なわれた場合は、無理に維持をする必要はないかもしれないと考えています。