昨年、ご自身で創業した会社を売却した方からのご相談をいただきました。売却額は約3億円で、手数料や税金を差し引いて約1.5億円手元に残っています。
会社をご売却したことで今後の収入は無くなりましたが、その方は将来の備えとしては十分なお金ではあるので、必要な資金を都度引き出しつつ生活するのも良いと思いながらも、全く運用しないと資金は減る一方になるのでどうすべきか、更に、そもそも資産を運用をすべきか、それとも無理をしないほうが良いか、といったご質問でした。
運用しないことも運用
先ずは、絶好のタイミングで売却出来た事は、素晴らしいと思います。 結論から申し上げれば運用しない事も運用となります。今後は地球規模で、人間の基礎行動や各アセットの信用力や価値が大きく変化する事となります。お金は安心・安全・信頼感に集いますが、この定義が大きく変わると言う事です。
各国で活躍している友人の現役ファンドマネージャーとは、既に何時間も話をして来ておりますが、共通して現時点でもキャッシュポジション(資産に占める現預金の割合)を増やしており、今後の経済成長の主軸と資産価値の見直しを必死に続けております。
一般に、色々な金融機関に相談されるとコロナ収束後を見据えた風潮として今まで通りに運用する事を前提に、運用想定期間とリスクと期待収益を聞かれて運用が開始されると思います。しかし、今後は上記の変化を踏まえた慎重な資産運用のスタンスが欠かせないと思います。
慎重に運用を開始すべきこととタイミングを図りすぎると収益機会を逃す心配について
このように一通り説明したのちに、その方は、株式より安全だと言われている国債や社債で運用すれば確実に金利を稼げるので良いのではないかと考えているようで、ネットで調べると債券のETFとか投資信託で良さそうなものがある気がしているというご質問をされました。そこで以下のように回答を続けました。
債券にご興味をお持ちと言う事ですが、債券の基本的な概念をもう一度精査される事をお勧め致します。
リスクの観点からは、お考えのように株式に比べて、為替を考慮しなければ価格変動や償還の観点から安全と思われがちです。しかしながら、債券はその発行元の信用力と現在の金利水準が投資判断の重要なポイントとなります。
上記リンクを見て頂くと、主要国先進国の金利は極めて低い状況です。
債券の収益獲得は高い金利収益と債券価格差益となりますが、金利の歴史的な低水準は、今後の金利の下げ余地は殆どなく逆に金利の上昇要因が高まって来ている現況です。 投資のタイミングについては、もう少しお話しをお聞きしなければなりませんが、投資機会については投資家のリスク許容度となります。
資産運用は中長期で
中長期の資産運用は、最終的に振り返ると一番成果が出やすい投資戦略です。今回、5年程度の運用をお考えなのは良い結果につながる可能性が高いと思います。
一方で、債券の運用で5年間となると、検討していただきたいことがあります。それは、インフレ及び、今後の金利上昇に対する備えです。 現在のコロナウイルス蔓延による経済悪化に対し世界の各国が財政出動、金融緩和をおこない世の中には大量のお金がばらまかれている状況です。お金の量が増えすぎるとお金の価値が減価しインフレ(物価上昇)になりえます。そのため、今後はインフレに対する備えをしておくほうが合理的な投資戦略になると思います。
現時点では、物価上昇、つまり金利上昇の兆しは見えていませんが、その兆候が出る前に備えることも大切な資産管理術です。 運用戦略を立てる時に、インフレに強い金やインフレ債券、実物資産などをポートフォリオや資産の一部に組み込むことも検討してはいかがでしょうか。強固な資産を築くことが出来ると思います。
まとめ
債券での運用を検討する際は、金利動向、インフレ動向などを加味することが大切です。