企業オーナーや資産家にとって、個人ではなく資産管理会社を利用することは、税率の最適化と相続・承継リスクの回避を両立させるための最重要戦略です。しかし、「どのような人が活用すべきか」「法人化の具体的なメリットとリスクは何か」といった疑問は尽きません。
本記事では、資産管理会社を核としたファミリーオフィス型の資産運用戦略を解説します。所得税・相続税を賢く圧縮する活用事例から、最適な会社形態の選び方、そして設立時の税務上の注意点まで、専門的かつ実践的な視点から徹底ガイドします。
[ 目次 ]
1. 資産管理会社の戦略的活用:税制最適化とリスク防衛
1-1. 現役の企業オーナーおよび金融資産家における活用例
所得が集中しやすい富裕層の場合、法人を活用することで、個人と法人の税率差・報酬体系・役員構成などを踏まえた全体最適の税務設計が可能となります。
※あくまで適正な役務提供および経済合理性が前提となります。
- 上場企業オーナーの株式管理
創業者一族の保有株式を資産管理会社へ集約することで、安定した議決権構造の確保や、将来の承継設計を行いやすくなります。 - 中小企業オーナーのリスク管理
資産管理会社を別軸とすることで、事業会社の損益と投資活動のリスクを切り分け、財務・経営上の健全性を保ちやすくなります。 - 金融資産家における承継計画
長期的な資産形成が見込まれる場合、推定相続人が出資する法人で資産運用を行うことで、将来的な評価設計や承継方針を事前に構築しやすくなります。
1-2. 不動産投資家における活用例
資産管理会社を活用することで、収支管理・修繕計画・借入・保全・承継設計などを法人単位で行える点がメリットです。
- 税務および会計処理の設計
必要経費の管理や欠損金制度、役員報酬設計等を踏まえ、長期的な資金繰りおよび利益平準化を図りやすくなります。 - 承継および分割設計
不動産を法人保有にすることで、将来の承継時には株式として持分割合で承継・分割できるため、争族対策にも有効となるケースがあります。
2. 資産管理会社の規模・形態:最適解を選ぶための比較
資産管理会社は対外的な信頼を得る必要がないため、資本金の規模や形態を柔軟に設計できます。一般的には、株式会社か合同会社のいずれかを選択することが多いです。
2-1. 会社形態の比較:株式会社 vs 合同会社
| 比較項目 | 株式会社 | 合同会社(LLC) |
| 信用力 | 高い(一般的に広く認知されている) | 低い |
| 設立時の手間 | 高(定款認証、機関設計が必要) | 低(定款認証が不要) |
| 経営と出資 | 分離が原則 | 社員(出資者)が経営者が原則 |
| 議決権 | 出資比率に応じて決まる | 原則として社員(出資者)は平等 |
2-2. 設立の流れと法務上の注意点(HowTo)
資産管理会社として法人を設立する際の流れは、以下の通りです。
- 【STEP 1】定款の作成: 会社の根本規則を定めた「会社の憲法」を作成します。合同会社の場合、定款認証は不要です。
- 【STEP 2】定款認証: 株式会社の場合、公証人に認証してもらいます(合同会社は不要)。
- 【STEP 3】資本金の払い込み: 資本金を個人の口座に払い込みます。
- 【STEP 4】設立登記申請: 法務局で設立の登記を申請します(この申請日が会社設立の日となります)。
法人の設立にあたっては、登記実務は司法書士、税務面は税理士などの専門家に相談し、事前に会社の形態を設計し計画的に進めることが重要です。
3. 設立時の税務上の注意点:資本金と法人住民税
資産管理会社を設立する際、資本金をいくらにするかによって、国税(法人税)と地方税(法人住民税)の税制面で影響があります。
3-1. 法人税における優遇措置(資本金1億円の基準)
法人税において、資本金が1億円以下の場合、中小企業者等として税制上の優遇措置を受けることができます。資産規模が大きい富裕層であっても、税務戦略上、資本金は1億円以下に抑えるケースが多いです。
3-2. 資本金が影響する法人住民税(均等割)
法人住民税は、利益が出ていなくても課税される均等割があります。この均等割の金額は、主に資本金と従業員数によって区分され、資本金の額が大きくなるほど、均等割の金額も高くなります(例:東京都の場合)。
- 戦略: 法人設立にあたっては、これらの税制上の影響を理解し、資本金の金額を慎重に決定する必要があります。

4. まとめ:最適な活用法は専門家との「統合設計」から
資産管理会社を活用することで、節税やリスク防衛など、個人運用よりも多くのメリットを享受できます。しかし、その設立には、資本金の金額、会社形態の設計、税務リスクの回避といった事前の計画が不可欠です。
リスクを事前に知り回避するためにも、会社の設立での登記実務は司法書士、税務面では税理士などの専門家に相談することが、富裕層の資産管理戦略における鉄則です。
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