緊張緩和で市場ムード一転、日経平均株価が過去2番目の大幅上昇
4月10日、東京株式市場では日経平均株価が大幅反発し、前日比2894円高の3万4609円で取引を終えました。この上昇幅は歴代2番目の大きさを記録。市場の急変を引き起こしたのは、トランプ米大統領による関税措置の一部緩和発表でした。発動直後の関税上乗せについて、一部の国に90日間の猶予を与えるという方針転換が市場を驚かせたのです。
この発表を受け、過度な貿易摩擦がひとまず和らぐとの期待から市場心理が急転換。空売りポジションを持っていた投資家が一斉に持ち高を解消したことで「踏み上げ」現象が発生し、株価を押し上げました。特にハイテク株や機械株が目立って上昇し、東京エレクトロン、アドバンテスト、ファナックなどの銘柄が急騰。朝の取引では多くの銘柄で買い注文が殺到し、一部はストップ高に迫る勢いを見せました。
米国市場の「トリプル安」が引き金に
この急展開の背景には、米国市場での異例の「トリプル安」現象がありました。4月9日、トランプ政権の関税政策発表直後、米国株・ドル・米国債が同時に売られる状況が発生し、市場に深刻な動揺が広がったのです。特に米国債市場ではヘッジファンドの換金売りが連鎖的に発生し、10年債利回りは一時4.5%を突破する事態に。この状況に、元財務長官ローレンス・サマーズ氏が「金融危機の兆候が見られる」と警告するほどの緊張状態に陥っていました。
金融引き締めが続く環境下で米国債の保有構造に変化が生じており、相場の不安定さが顕在化。さらに、中国による報復的な米国債売却リスクも意識され、債券市場は混乱の様相を呈していました。この異常事態を受け、トランプ政権はわずか13時間で相互関税の一部凍結という異例の政策転換に踏み切らざるを得なくなったのです。
アジア通貨にも波及する緊張
貿易摩擦の影響は通貨市場にも波及しています。人民元は17年ぶりの安値を記録し、中国当局が通貨安を容認しているとの観測も強まりました。さらにインドネシアルピアやベトナムドンも下落するなど、東南アジア諸国の通貨にも影響が広がりつつあります。市場では、単なる貿易摩擦にとどまらず、通貨・債券市場を巻き込む「金融戦争」へと発展する兆しが大きな懸念材料となっています。
東京市場での今回の急反発は、前日までの下落相場でリスク回避姿勢を強めていた投資家が、トランプ政権の想定外の方針転換に対応する形でポジションを急速に巻き戻した結果といえます。とりわけ輸出企業株や半導体関連銘柄に買いが集中し、市場全体を押し上げる形となりました。東証プライム市場の時価総額は一日で約70兆円増加したと推計されています。
しかし、今回の株価上昇が持続的な回復につながるかには慎重な判断が必要です。米中の貿易対立は依然として継続しており、中国には最大125%の追加関税が課される方針が示されています。また、世界経済においてはスタグフレーションリスクや米経済の下振れ懸念も残存しており、警戒感を解くには時期尚早でしょう。引き続き米中関係の動向と、それが世界経済や金融市場に与える影響を注視していく必要があります。
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