金価格の史上最高値更新と株式市場の構造変化
2025年4月、金融市場は大きな転換点を迎えています。金価格が史上初めて1トロイオンスあたり3500ドルを突破し、S&P500の10年間パフォーマンスを上回る成長を示す一方、「マグニフィセント7」と呼ばれる大型テック企業の勢いに陰りが見え始めています。
金価格は4月22日までに4営業日連続で最高値を更新し、週間では8%もの急騰を記録。JPモルガンは2026年に金価格が4000ドルを超えると予測しており、この上昇トレンドが一時的ではなく構造的な要因に支えられていることを示唆しています。
急騰の背景には、トランプ大統領による「予防的利下げ」発言やパウエルFRB議長解任説など中央銀行の独立性を揺るがす政治的圧力がありました。
LSEGのデータによると、金の過去10年間の上昇率(2015年4月比)は181%で、S&P500の154%を上回っています。投資家が「紙の資産」より「現物資産」に価値を見出す傾向が強まっており、特にスタグフレーション懸念下では金がより選好される傾向にあるといえるでしょう。
マグニフィセント7からS&P493へのシフト
マグニフィセント7(アルファベット、アマゾン、アップル、メタ、マイクロソフト、エヌビディア、テスラ)は、米国株式市場の牽引役でした。2024年までの過去10年間でこれら7銘柄の時価総額は約800%成長し、S&P500の残りの493銘柄の150%を大きく上回りました。そして、S&P500は2023年と2024年に大きな上昇を見せたものの、マグニフィセント7を除くとほとんど上昇はありませんでした。
しかし2025年に入り、マグニフィセント7の成長に陰りが見え始めています。2025年3月18日時点で、米国の主要ハイテク企業7社(マグニフィセント7)の株価は、2024年12月17日の直近高値から平均で20.9%下落し、一般的に「弱気相場」とされる20%以上の下落に達しました。この下落は、目標株価の引き下げやAI関連の成長鈍化への懸念などが背景にあります。
そして、LSEGの「2025 Year-Ahead US Outlook」レポートでは、2025年のS&P500全体の利益成長率は14.2%と予測し、マグニフィセント7の成長率は18.9%(前年の34%から減速)、S&P493は13.0%(前年5.3%から加速)と見込んでいます。

出典:LSEG
マグニフィセント7の平均PERは50を超え、S&P500全体の2倍以上という高いバリュエーションは修正圧力が高まっています。マグニフィセント7の利益成長への寄与度は、2024年の約57%から2025年には28%に低下し、投資の裾野が広がることが予想されます。
新たな投資環境と戦略
高い市場集中リスクに対応するため、投資家はポートフォリオの見直しを検討すべき時期にあります。より幅広い銘柄に分散したインデックスファンドや、金などの実物資産への配分も重要性を増しています。
2025年は、金価格の上昇と米国株式市場の構造変化という大きな転換点を迎えています。地政学的不安定さやインフレリスクが金価格を支える一方、米国株式市場ではマグニフィセント7への依存度低下と、より広範な業種への資金流入が期待されます。
貿易戦争や中央銀行の独立性懸念、AIバブルの冷却など複数の要因が絡み合う中、投資家はリスク分散と長期的視点に立った資産配分の重要性を再認識する時期に来ています。市場環境の変化を理解し適切に対応することが、今後の投資成功の鍵となるでしょう。
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