関税違法判決が市場に安心感をもたらす
5月29日の東京株式市場では、日経平均株価が前日比710円高の3万8432円まで大幅に上昇し、力強い反発を見せました。この急騰の背景には、米国際貿易裁判所による重要な判決があります。
同裁判所は28日(日本時間29日)、トランプ政権が実施した一部関税措置について「大統領権限を逸脱している」として違法と判断し、差し止めを命じました。具体的には、中国、カナダ、メキシコに対する追加関税や「相互関税」について、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく権限を超えていると指摘。10日以内に関税停止の行政命令を出すよう求めています。
この判決により、これまで市場を重く覆っていた通商政策への不透明感が一時的に和らぎ、投資家心理の大幅な改善につながりました。トランプ政権は控訴する姿勢を示していますが、市場では強硬な通商政策の影響が軽減されるとの期待が高まっています。
円急落とドル買い戻しの連鎖反応
為替市場では、この判決を受けて大きな変動が発生しました。円相場は一時1ドル=146円台前半まで急落し、約2週間ぶりの円安・ドル高水準となりました。前日比で約2円という大幅な円安は、これまでトランプ氏の強硬政策を警戒して進んでいたドル売りの巻き戻しが一気に進んだことを示しています。
投資家心理の改善により「リスク回避」姿勢が後退し、安全通貨とされる円から資金が流出。一方でドルは買い戻されることとなり、為替相場にも大きな影響を与えました。この円安進行は、輸出関連株の上昇にも寄与する要因となっています。
AI関連株と輸出株が牽引役に
株式市場では、複数のセクターが同時に上昇する幅広い買いが観測されました。特に注目されたのは、AI関連銘柄の東京エレクトロンやアドバンテスト、そして円安メリットを享受する輸出株のトヨタやホンダなどです。
米エヌビディアが発表した2〜4月期決算も市場にプラス材料となりました。売上高と純利益がいずれも市場予想を上回り、粗利率の改善も示されたことで、AIセクター全体に対する安心感が広がりました。対中輸出規制の影響も当初懸念されたほど深刻ではないとの見方が支えとなり、関連銘柄の上昇を後押ししています。
「TACOトレード」という新たな投資戦略
市場関係者の間では、「TACOトレード(Trump Always Chickens Out)」という造語が注目を集めています。これは、トランプ氏が強硬な発言を繰り返しながらも、最終的には政策を撤回したり軟化させたりする傾向があることを皮肉った表現です。
この考え方は、短期的な政治発言に過度に反応するのではなく、中長期的な視点で投資判断を行う戦略として、一部の投資家に共有されています。今回の関税差し止め判決も、こうした見方を裏付ける事例として受け止められている面があります。
今後の注意点と市場の慎重姿勢
ただし、市場が完全にリスクオンモードに転じたわけではありません。トランプ氏が今後も通商強硬路線を維持する可能性は十分に残されており、控訴審の行方も不透明です。また、米国の財政赤字問題や日本の参院選など、今後注意すべき不透明要因も山積しています。
このため、多くの市場参加者は当面神経質な値動きが続くと予想しており、慎重な姿勢を崩していません。今回の上昇も一時的な反発に留まる可能性があり、継続的な株価上昇には更なる好材料が必要との見方が一般的です。投資家は引き続き、政治・経済情勢の変化を注意深く見守る必要があるでしょう。
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