FRB議長への刑事捜査が引き金に
2026年1月、世界の金融市場は歴史的な転換点を迎えました。安全資産の代表格である金(ゴールド)価格が、史上初めて1トロイオンス4600ドルを突破するという驚異的な急騰を見せたのです。
この背景には、米連邦準備理事会(FRB)の独立性を揺るがす深刻な政治的混乱があります。2026年1月11日、FRBのジェローム・パウエル議長が、米司法省による刑事捜査の対象になったことを自ら公表しました。司法省は、FRB本部の改修工事に関連してパウエル氏が2025年6月に連邦議会で行った証言が虚偽であった可能性があるとして、大陪審への召喚状を送付したのです。
パウエル議長は動画を通じて「刑事訴追の脅しは口実に過ぎず、政権による継続的な政治圧力の一環だ」と猛烈に反論しました。パウエル氏は、自身の金利設定がトランプ大統領の意向に沿わなかったことへの報復であると示唆しており、市場では中央銀行の独立性に対する深刻な懸念が広がっています。金融政策のかじ取りが政治に歪められることへの不信感から、実物資産である金へのリスク回避の動きが加速しました。
連鎖する地政学リスク
金価格を押し上げているもう一つの大きな柱は、世界的な緊張の高まりです。
中東では、イランで反政府デモ隊と治安部隊の衝突により500人以上の犠牲者が出る事態となっています。トランプ大統領は「非常に強力な選択肢」として軍事攻撃の可能性を示唆し、イラン側も米軍基地への報復を警告するなど、地域紛争が全面衝突に発展するリスクが意識されています。
また、米国は戦略的立地と豊富な鉱物資源を求め、デンマーク自治領のグリーンランドへの関与を強めています。この動きはNATOの結束を揺るがす事態に発展しており、さらには中国による日本向けのレアアース輸出規制強化という「資源の武器化」も相まって、市場に強い供給不安を与えています。南米のベネズエラでも米国の軍事的な関与が報じられるなど、これらの不安定な国際情勢が「有事の金」への需要を強力に支えています。
経済指標とドル安の相乗効果
マクロ経済の側面からも金買いの好条件が揃っています。2025年12月の米雇用統計では、非農業部門の雇用者数が予想を下回る5万人増にとどまり、労働市場の冷え込みが鮮明となりました。これを受けて、FRBが2026年中にさらなる金融緩和を進めるとの見方が強まり、米ドルが下落しました。ドル指数が低下したことで、他の通貨を持つ投資家にとって金が割安になり、価格上昇に拍車をかけています。
金価格の歴史的高騰は、他の貴金属や関連銘柄にも波及しています。銀先物も最高値を更新したほか、東京株式市場では住友金属鉱山や三菱マテリアルなどの非鉄金属株が軒並み高値を付けました。投資家は単に金を保有するだけでなく、資源高の恩恵を受ける企業への投資も強めています。
平和の祭典と混沌の市場
2026年は冬季五輪やワールドカップといったスポーツの祭典が相次ぐ年です。本来、スポーツの場で競われる「金・銀・銅」のメダルは、人類の努力と平和な協調を象徴するものです。しかし、現在の金融市場が血眼になって追い求めている「金・銀・銅」は、世界の分断と緊張、そして未来への不安を映し出す鏡のような存在となっています。
この歴史的な金価格の上昇は、五輪が掲げる理想とは対照的な、混沌とした国際社会の現実を如実に物語っています。パウエル議長を巡る法廷闘争が長期化すれば、金融市場の不透明感はさらに増し、金は今後も「不安な世界の唯一の避難所」として注目され続けることになるでしょう。
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