本日のテーマは、『米国株 結局、テック株は買い? 最新データで確認』です。
先週、NASDAQをはじめとするアメリカの主要3指数は、テック株がけん引する形ですべて下落しました。市場では「AIバブルが崩壊したのでは」との意見が見られる一方で、「絶好の買い場なのではないか」という意見も出るなど、大きく意見が分かれている状況です。
下の図表をご覧ください。こちらはテックセクターのETF、XLKのショートポジションを示したものです。XLKのショートポジションは非常に積み上がっており、2020年以来の大きなショートポジションとなっています。今後さらに下がると見込む投資家が多く、マーケットは依然として不安定な状況だと言えるでしょう。

AIバブルについては、感覚的な判断に基づいたコメントも多く聞かれます。そこで本日は、最新のバリュエーション、ボトムアップの業績予想を踏まえ、どのような歪みが生じているのかを整理し、投資戦略の判断基準となる客観的なデータをお伝えしたいと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
[ 目次 ]
米テクノロジー企業のバリュエーション
データで確認!過去5年平均を大きく下回る「割安感」
アメリカの11セクターでバリュエーションがどうなっているのか、PERやEPSなどを一覧にした、こちらの図表をご覧ください。

結論としては、テクノロジー株が調整の終盤を迎えつつあると考えられます。絶対そうだとは当然断言はできませんが、バリュエーション面からは、そのような面が垣間見えます。
3つのポイントに分けて確認してみましょう。
1つ目、ハイテク株、テクノロジー企業のPERに注目すると、PERは22.02倍となっています。過去の予想PER平均が25倍であることを考えると、かなり低下してきた印象で、バリュエーション的には割安感が出てきたと言えます。
ただ、PERという指標は、あくまで業績見通しに対して何倍かを示したものです。ですから、これから企業がどれだけ成長するのか、利益がどの程度伸びるのかが非常に重要です。
2つ目のポイントはPEGレシオです。1.33と、過去平均である1.35〜1.5倍の下限に位置しており、かなり割安な水準に近づいています。
テクノロジーのEPSは年率換算で27.75%、評価を示すPERは22.02倍です。EPSの27.75%をPERの22.02で割ると、PEGレシオの1.33という数字が算出されます。PERが高いのか安いのかを評価する際には、EPSの成長率がどの程度あるのかを考慮しなければ、単純な比較はできません。そのために用いられる指標が、このPEGレシオです。
1.33という水準は、歴史的に見ても下限に近いです。過去5年間の平均1.5倍と比較しても、かなり割安な水準だと言えるでしょう。ここ最近の株価下落によって、テクノロジー株は利益成長に対して、相当な割安感が出てきていると言えます。
さらにPEGレシオを他のセクターと比較してみましょう。1.33を下回る水準で割安に放置されているセクターとしては、マテリアル、素材関連が1.21となっています。しかし、それ以外のセクターを見ると、すべてテクノロジーセクターよりも高い水準です。セクター間の比較から見ても、テクノロジーはやや割安な位置にあると言えそうです。
3つ目のポイントが利益成長率です。テクノロジーセクターは27.75%の成長が見込まれていまが、20%を超える成長率を持つセクターは、マテリアルの23.66%だけですから、テクノロジーの成長率は依然として高い水準だと言えます。
こうした点を踏まえると、バリュエーション面では割安感が出てきており、そろそろ調整の終盤に差しかかっている可能性も、検討材料として考えておく必要があるでしょう。
ファンダメンタルズ面にもそこまで逆風ではない
20年という長期スパンで見た場合はどうでしょうか。こちらのJPモルガンの資料をご覧ください。過去20年の平均と比べると、テクノロジーセクターの過去20年間における12ヶ月EPS成長率は12%でした。JPモルガンが予想する今後1年間のテクノロジー株のEPS成長率は29.3%ですから、かなり高い水準にあることが分かります。

過去20年の平均を大きく上回っているセクターは、公共事業とメタルです。ユーティリティを見ると、過去20年は4.7%の成長に対して、現在は9.5%とほぼ倍の成長率です。また、マテリアルも過去20年の11.3%に対して22.9%と、非常に高い水準となっています。
3つのセクターはいずれも高い成長率ですが、他のセクターと比較すると、テクノロジー株は過去20年と比べて大きな成長を維持していることが分かります。テクノロジー株は依然として割安に放置されていると言えるでしょう。
2つ目のポイントとして、金利とのコリレーション、相関関係を見てみましょう。
テクノロジー株を見ると、トレジャーイールドとのコリレーションは-0.1となっており、相関はほとんどありません。
金利が上昇するとテクノロジー株が売られるイメージがありますが、長期で見ると、金利の影響はそれほど大きくない、あまり相関がないことが分かります。
5月から新FRB議長が選任されるわけですが、バランスシートの縮小、利上げ・利下げをどうするかは、まだまだ不透明な部分があります。ただ、不透明要因があっても、金利にそこまで大きな影響が出ていないことを考えると、政策不安の影響は、現時点ではあまり加味しなくてもいいと考えられます。
他のセクター、例えば不動産と比較すると、不動産は-0.8ですからかなり強い逆相関があります。比較的テクノロジー株は金利の影響を受けていないことは、マーケットとして知っておくべきポイントでしょう。
3つ目のポイントは海外売上高です。テクノロジー株は56%と、非常に高い水準にあります。今のトランプ政権は、ベンセント財務長官のもと、これまでアメリカ政府が掲げ続けた強いドル政策を引き継いでいますが、実質的にはドル安志向も垣間見えています。
ドル高志向とドル安志向の両面が見られることを考えると、新しいFRB議長が極端な政策を取らない限り、現在のドル安基調が急激にドル高へ転じる可能性は、あまり高くないと考えています。
海外売上比率の高いテック企業で、ドル高による業績悪化がすぐに表面化するとは考えにくく、為替の影響についても、現時点ではそれほど大きくならないと考えられます。
こうした点を踏まえると、ファンダメンタルズの観点から見ても、テクノロジー株は極端に割高な状況ではないと言えるでしょう。
米テクノロジー企業の業績見通し
26年、27年の業績見通しは上方修正

次にファクトセットが出した、ボトムアップを確認してみましょう。こちらは2026年と2027年の各セクターの最新の業績予想です。
2026年、テック企業は30.8%の利益成長が見込まれています。注目すべきは、昨年末時点で28.7%と見込まれていたものが、上方修正されていることです。
足元の業績をもとにボトムアップ予想を行っているわけですから、AI導入による収益化が着実に数字に反映され始めているとアナリストが判断しているからこそ、上方修正が行われているのではないでしょうか。
2027年も19.9%と高い成長率が維持されています。一番高い成長率を示しているのは公共事業や不動産関連ですが、テクノロジーセクターも上方修正が入り、引き続き高水準の成長が見込まれています。
こうした点を総合すると、現在の状況はバブル崩壊というよりも、調整局面と捉えるほうが妥当なのではないかということが、業績面からも見えきました。
4月後半に発表される1〜3月期の決算で、ボトムアップリサーチが示したような業績予想が本当に達成されるのを確認して、ようやく市場の疑念が解消されることでしょう。
バリュエーションの観点では、すでに十分に安い水準まで下がってきていると言える状況です。売りポジションから買いポジションへと切り替える投資家が、徐々に出てくる可能性もあることは、念頭に置いておくべきでしょう。
テクノロジー株の受け皿にやや過熱感
最後にこちらをご覧ください。ここまでは業績面、バリュエーションを中心に確認しましたが、最後に需給環境を確認します。

テクノロジー株がやや軟調に推移した場合、S&P500のイコールウェイトやラッセル2000に資金が流れやすくなることを、先週の記事ではお伝えしました。実際こうした分野へ資金が流れていることは、最近の動きからも確認できています。
一方で、テック株から大量の資金が流出した影響で、一部のセクターではやや加熱感、資金の偏りが出てきているのも事実です。
下のチャートをご覧ください。不動産、公共事業のセクターでは、RSIで見ると70〜80%の水準まで上昇しており、やや過熱感が見られています。
2027年にはユーティリティ、リアルエステートの収益が高くなる見込みで、見直し買いが入っている側面もあります。ただ、短期間で急速に資金が流入して過熱感が出てくると、先行きが明るいセクターであっても一旦は資金の巻き戻しが起こり、セクター間のローテーションが発生する可能性があります。
テクノロジー株から公共事業や不動産へ移動した資金が、過熱感を受けて再び別のセクターへ移る動きが起こり得ます。
こうしたセクターローテーションの可能性を把握しておくことで、4月の決算発表までの間、どこに狙いを定めるべきかが見えてくるでしょう。
こうした文脈の中で、テクノロジー株は相対的にやや割安な水準まで下がってきている、という点も、ぜひ念頭に置いていただきたいと思います。
以上の点を踏まえながら、今年の投資戦略を進めてていただければと思います。
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