今回のテーマは、「株価反転に重大な注目すべき材料」です。
現在、米国株の上昇を抑えている主な要因は、次の2つだと考えています。

1つ目は、ハイパースケーラーやM7を中心とするテクノロジー企業が、データセンターなどへの設備投資(CAPEX)を積極的に進めていることです。投資額が過大になり、将来的に回収できないのではないかという懸念が、株価の重荷になっています。
2つ目は、米国金利の上昇です。政策金利が高い水準で維持されるとの見方から、株式のバリュエーションが圧迫されています。S&P500の予想PERが20倍を割り込んだことで、株価の下落が確認されています。
チャートを見ると、S&P500が横ばいに近い動きをしている一方で、テクノロジーセクターとM7は大きく下落しています。これは設備投資への懸念に加え、金利上昇の影響を強く受けているためです。
今週の重要な材料が、2027年7月28日~29日に開催されるFOMCです。実際に利上げが行われるかどうかだけではありません。より重要なのが、FOMCを受けて実質金利がどのように動くかです。
実質金利は、今後の株式投資を考えるうえで非常に重要な指標です。年内の金利が高止まりする、もしくはタカ派的な態度が改めて確認できた場合、マーケットへの影響が大きくなるとして警戒感が高まっています。
また、実質金利の上昇が続いており、警戒すべき材料となっているため、反転できるのかどうかも注目材料となります。
FRBによる利上げ・高金利政策が警戒されています。
現状はどうなっているのでしょうか。結論としては、年内の利上げ・高金利政策が警戒されています。

チャートを見ると、2026年内に利上げが行われる確率は約90%まで上昇しています。一方、7月29日のFOMCで利上げが行われる確率は30%程度です。
7月の利上げ確率が一定程度残っている背景には、ケビン・ウォーシュFRB議長が今後の金融政策について明確な方向性を示していないことがあります。
サプライズ利上げの可能性を織り込んだ結果だと考えられますが、実際に7月会合で利上げが行われる可能性は低いと考えていいでしょう。
FOMCにおいて今年後半の利上げが強く示された場合、もしくは高水準を保つとのニュアンスが提示されることへの警戒感があることが重要です。
2年金利の動きから見るFRBのタカ派予想

マーケットの反転を見極めるために、最初に確認したいのが米国2年金利です。
下の図表を見ると、米国2年金利が4.29%まで上昇しています。これに対して、FF金利の誘導目標レンジは3.50~3.75%で、中央値は約3.63%です。
両者の差は約0.66%ポイントですから、利上げの金利差0.25%ポイント刻みで考えると、2~3回分の利上げに相当します。
米国2年金利が、今後2年間の金融政策を見越したものだと考えると、現在の上昇は、市場が年内1回の利上げに留まらず、2026~2027年にかけて約3回の利上げがあるのではと先読みした動きと言えます。
年1回の利上げは約90%で織り込まれていますが、それ以上の利上げが米国2年金利にも織り込まれていることになります。ここが今後どうなるのかが、非常に重要なポイントとなります。
過去には、米国2年国債利回りが先に上昇し、その後、実際のFF金利が追いかけるように上昇する傾向がありました。今後FFレートが2~3回利上げするのではないかとの警戒感が高まっている中で、今後どうなるのかが注目されます。
名目長期金利上昇の真相:「実質金利」の分解
次に確認したいのが、米国10年国債の名目利回りと実質金利です。
米国10年国債の名目利回りは4.68%となっています。2月以降の中東情勢の悪化を受け、4%前後から0.7%上昇しました。

名目金利=実質金利+期待インフレ率です。
今回の上昇分を見ると、0.7%のほぼすべてを実質金利の上昇が占めています。一方、期待インフレ率は低下しており、名目金利を押し下げる方向に働いています。
中東情勢の悪化によって原油価格が上昇すれば、インフレが再燃する可能性があります。しかし市場は、FRBが政策金利を引き上げてでもインフレを抑え込むと考えているようです。結果、期待インフレ率は低下した一方で、金融引き締めによって実質金利が上昇しました。
つまりFOMCのスタンス次第で、実質金利が上昇するかどうかが決まるのです。今回のFOMCで利上げを行う可能性は低いものの、中身を受けてマーケットの実質金利が上がるかどうかが大事なポイントとなります。
なぜ10年「実質金利」が株価の鍵となるか?
米国10年実質金利が2.43%台まで上昇しています。この数値はコロナショック後のインフレに対応するため、FRBが急速に利上げを行った時期の水準を上回ります。当時は、金利上昇を受けて株価が軟調に推移しました。
現在も、実質金利の上昇に伴って株価が弱含んでいます。今後、実質金利が2.43%を超えて上昇する場合、株価にとって大きなマイナス材料になる可能性があります。
今回のFOMCで実質金利が上昇するようであれば、株価に大きな影響を与えます。
今年の名目金利上昇は実質金利がほとんどを占めており、FRBの政策に大きく左右されることとなります。実質金利が現在の水準を上抜けるのか、低下に転じるのかは、FOMCの声明やウォーシュFRB議長の発言次第です。
今週FOMC後の3つのメインシナリオと株価への影響

FOMC後には、3つのメインシナリオが想定されます。
シナリオAはタカ派。年内の追加利上げが強くにおわされた、もしくは高金利を維持する姿勢が強く示されたケースです。
この場合、実質金利が2.5%を超える可能性があります。株式のバリュエーションがさらに圧迫され、株価が調整・下落する公算が高まります。
シナリオBは中立。
経済指標に加え、中東情勢を確認しながら金融政策を判断する姿勢が示されるケースです。
現在は中東情勢や原油価格の見通しが不透明です。そのため、FRBが明確な方向性を示さず、データ依存を強調し、様子見する可能性があります。
この場合、実質金利は横ばいとなり、株価も一定の範囲での保ち合いになると考えられます。
かなり確率が低いのはシナリオCのハト派です。
景気配慮から金利据え置きを示唆することになれば、実質金利は低下し、企業業績の底堅さを反映して株価が上昇する可能性があります。
今回のFOMCでは、政策金利が据え置きとなる可能性が高いです。30%の利上げを織り込んでいることから、やや金利が低下する要因となるでしょう。
一方で、ローリー・ローガン総裁とベス・ハマック総裁が利上げを主張し、政策金利の据え置きに反対票を投じる可能性も指摘されています。この2人以外も反対票を投じるようであれば、金利上昇要因となりシナリオAに近付く可能性も出てきます。
インフレ警戒の姿勢が示されることは確実でしょう。ただ、フォワードガイダンスがなく、金利低下までは至らないでしょうから、シナリオCにはなりにくいと考えられます。
原油価格が低下していることは、インフレ懸念を和らげる材料です。そのため、タカ派一辺倒ではなく、中立的なシナリオBに落ち着く可能性が高いと恐らくマーケットは考えています。
シナリオAやCになればサプライズとなりますから、株価、金利、為替が大きく動く可能性があります。
FOMC後は、次の3つの指標を確認してください。
1つ目は米国2年金利。さらに上昇するのか、横ばいになるのか、低下に転じるのかに注目です。
2つ目は米国10年実質金利。2.4%の水準を上回るのか、低下に転じるのかをご確認ください。
3つ目はドルインデックス(DXY)。現在は政策金利の利上げを見越して101.27前後まで上昇していますが、ドルの買い持ちポジションがかなり増えています。
FOMCのコメント、マーケットの雰囲気を見て、ドルの買い持ちするポジションを減らす動きが起これば、100を割り込む可能性があります。そうなれば実質金利は恐らく下がります。
ドルインデックスが弱含めば、株価反転の兆しとなりますから、こちらもしっかりとチェックいただければと思います。
企業業績は底堅いものの、株式市場では金利の影響が非常に大きくなっているのが現状です。
今週はハイパースケーラーの決算発表も予定されており、設備投資が過剰ではないかという懸念は続くでしょう。
ただ、もう1つの株価下落要因である金利が落ち着けば、市場の雰囲気が変わる可能性があります。
ぜひ金利、FOMCにご注目ください。

