米連邦準備理事会(FRB)は28日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利であるフェデラルファンド金利の誘導目標を3.75〜4.0%に据え置くことを決めました。9月会合で3年2カ月ぶりとなる0.25%の利上げを実施して以来、2会合ぶりの据え置きです。決定は賛成10、反対2の多数決で、反対したクックFRB理事とクリーブランド連銀ハマック総裁は、インフレ抑制に向けて0.25%の連続利上げを行うべきだと主張しました。なお、反対票を投じたクック理事については米大統領が解任を試みており、住宅ローン詐欺疑惑に関する公聴会が11月初旬にホワイトハウスで予定されていますが、クック理事は異議を唱え、出席できない意向を示しています。
インフレ高止まりへの警戒と追加利上げの可能性
ウォーシュFRB議長は会合後の記者会見で「インフレ率は高すぎる」と強い警戒感を示し、物価安定の実現が当局の最大の責務であると強調しました。FOMC声明でも、経済活動の拡大ペースに関する判断を従来の「堅調な拡大」から「力強く拡大」へ引き上げる一方、インフレ率は高止まりしているとの認識を改めて示しています。
足元の物価上昇圧力については、エネルギーや燃料価格の再上昇に加え、人工知能(AI)ブームに伴うデータセンター建設や先端半導体需要の急増が押し上げ要因となっています。ウォーシュ議長は9月の利上げ後に金融環境が引き締まったことを認めつつも、「引き締め的な水準にあるとは言えない」と述べ、さらなる利上げの余地を残していることを示唆しました。
もっとも、10月初旬には米10年物国債利回りが一時5.36%と2002年4月以来の高水準に達し、ローン金利の上昇を通じて実質的な引き締め効果をもたらしました。11月3日に迫る米中間選挙という政治的に敏感な時期であることも、今回の利上げ見送りの背景にあるとされています。声明では「さらなる情報を蓄積することで適切な政策スタンスを判断できる」としており、市場や金融政策見通しの中央値では、12月8〜9日の次回会合で0.25%の追加利上げに踏み切る可能性が高いとの見方が維持されています。
FOMC運営の見直しで政策決定回数を実質削減へ
今回の会合で特に市場の注目を集めたのが、ウォーシュ議長が公表したFOMC運営スケジュールの変更です。FRBは2027年以降、年8回開催される会合の運営を段階的に見直し、政策金利を決定・採決する回数を年8回から実質6回に減らす方針を明らかにしました。
具体的には、2027年は8回のうち1回、2028年は2回の会合で政策金利の決定・採決を行わず、会合後の声明発表も見送ります。これらの回は、金融政策の幅広い戦略や長期的な課題を集中して議論する場に充てられます。議長は、短期的なデータ評価だけでなく、戦略的な視点から長期的な政策を議論する時間を確保することの重要性を訴えました。
ただ、政策決定を行わない会合の導入に対しては、市場参加者から声明のない会合の意義を問う声や、政策機会の減少で先行きの不透明感が増すことを懸念する見方が出ています。一方で、この変更をハト派的な姿勢と受け止める動きもあり、金利・為替市場に相応の動揺を与えました。
株式・債券・為替・商品市場の反応
28日の米株式市場は荒い値動きの末に小幅続伸しました。ダウ工業株30種平均は前日比97.53ドル(0.19%)高の5万2475.10ドルで取引を終え、S&P500種株価指数とナスダック総合指数もそろって上昇しました。利上げ見送りやAI関連銘柄への根強い期待が相場を支えました。アンソロピックのIPO目論見書公開を受けてゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースなどの金融株が買われたほか、好決算を発表したSKハイニックスからの波及で半導体関連株も上昇しました。オラクルはキャッシュフロー見通しが好感されて11%急伸し、マイクロソフトも引け後の好決算を受けて時間外取引で買われました。
債券市場では、会合見直しの説明がハト派的と受け止められ、政策金利見通しに敏感な2年債利回りが4.69%(-4.6bp)へ低下しました。一方、将来の不透明感を映して10年債利回りは5.01%(+1.7bp)、30年債利回りは5.34%(+2.8bp)へ上昇し、イールドカーブのスティープ化が進みました。為替市場では米短期金利の低下を受けてドル指数が下落し、ドル/円相場は一時1ドル=158円35銭まで円安が進んだ後、157円83銭近辺へ押し戻されました。
商品市場では、原油先物(WTI期近12月物)が前日比2.88ドル(2.9%)高の1バレル=102.78ドルと3営業日ぶりに急反発しました。米中間選挙後に米国がイランへの軍事攻撃を行う可能性に備えるよう湾岸諸国に伝えたとの報道や、イエメンのフーシ派によるサウジアラビアの製油所攻撃、米石油在庫の減少が背景にあります。一方、ニューヨーク金先物(12月物)は米長期金利が5%台で推移して投資妙味が薄れ、前日比23ドル(0.6%)安の1オンス=4051.6ドルと反落しました。
まとめ:12月の利上げ再開と選挙後のリスクに注目
今回のFOMCは、政策金利の据え置きという短期的な判断にとどまらず、インフレ高止まりへのタカ派的な警戒感と、会合運営の構造改革という中長期的なビジョンが交錯する会合となりました。原油価格の急騰やAI需要に伴う物価上昇圧力が続くなか、市場は12月の利上げ再開の有無と、米中間選挙後の政情・地政学リスクに引き続き強い関心を寄せています。
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