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本日はドル円、ドルの動きについてお話したいと思います。
なぜ、今日、このテーマを取り上げたかというと、1月5日にアメリカのジョージア州にて、上院議員残り2議席の選挙がありました。結果は、民主党が2議席を獲得。上院は民主党が50議席、共和党が50議席と半分ずつになりましたが、副大統領が投票権を持つことから、最終的には51対50で民主党が上院の過半数を占めたという結果になりました。
それを受けて、これからドル円の動きに変化が出てくるかもしれません。このコラムを作成しているのは1月7日。年始の新聞、雑誌等では、今年のドル円相場がどうなるのかという話がよく出てきていましたが、去年までと違い、今年は100円を割ってくるような円高を予測しているアナリストや金融各社が多いように思われました。市場のコンセンサスは円高、そこには90円~95円にいくのではないかという予想も見られました。
さて、現在は103円台です。これが本当に103円から95円の円高方向に向かっていく可能性があるのかどうかについては、昨日の選挙結果が出るまでは、半々、もしくは円高にいくのではないかということがメインシナリオとして示されていました。しかし、昨日の大統領選挙の結果を受けて、円高はそこまで進まないかもしれないと、ニューヨークをはじめとした世界の為替に関係する人たちのトーンが変わってきているように感じます。
皆さんに、ぜひ、このコラムを読んでいただき、いち早くこの兆しを知ってほしいと、これを作成しています。
では、なぜそのようにドル円が円高になる可能性が、少し減ってきているのでしょうか。
とても簡易的に説明すると、上院下院の両院の民主党政権になったことによって、国債の増発が予想されています。国債を増発するということは、国債が大量に市場に供給されることを意味しており、その結果、金利が上昇しやすくなります。国債の供給が多くなったことによって価格が下落して、金利が上がってくるという状況になります。
さて、アメリカの金利が上昇すると、当然ドルを買いたい人が増えます。年始時点では、金利がなかなか上がってこないのではないか。特に短期ではFRBが2023年の末まで、金利を上げないと公言していたこともあって、アメリカの長期金利の10年金利も、恐らく1%前後にて当面は収まっているだろうというのが、大多数を占めていました。例えば、年末に1.2%ぐらいになっても、年央まではコロナによる経済停滞の影響があるから、1%にいくか、いかないかではないかという意見が多くありました。
そのような中で、民主党が両院で過半数を取ったことによって、金利は1.05%まで急上昇しています。そのような反応を、市場関係者は、民主党が上院、下院を占めたことでもしかしたら年末に1.2~1.4%よりも、早い段階、たとえば夏場以前に、金利が上昇してくるのではないかと、意識し始めたのです。
FRBが何らかの政策を導入し長期金利を抑えてくるのではないかという予想がある中で、民主党が国債の大量発行をすると、金利が上がってくるという動きが顕著化すると着目する人が増え、アメリカドルが高くなりやすい状況にスイッチが入ったことになるといことが、1つ目のポイントです。
2つ目のポイントは、アメリカはデフレを極端に嫌っていて、できるだけインフレにしたいということで目標インフレ率を2%~3%に設定していることです。コロナ感染拡大の状況なので、なかなか物価が上がりにくいと、だからこそ、苦肉の策として通貨量を増やしてきたのです。しかし、いままではいくら資金をばらまいてもなかなか物価が上がってこなかったのですが、昨日物価を表す期待インフレ率が2018年以来、2%を超えて、2.05%まで急激に伸びています。
こちらも覚えていただきたいことは、期待インフレ率が上がる、インフレ傾向が見えてきた国の通貨は、政策金利を上げるなどの利上げ政策を取ってくるので、通貨が強くなりやすいのです。今アメリカの今置かれている状況は、期待インフレ率も期待以上に上がってきているし、10年金利も上がってきているということ。この2つの局面から、ドルが買われやすい状況になっているのです。
今は103円ぐらいですが、さらに円高にいく状況かというと、1月1日からたった7日間で少し円高にいくシナリオがすこし弱くなってきているといえます。さらに、今後もドル高への流れになることをサポートする要因が2つあります。
1つ目は原油価格の高騰です。原油価格は今、50ドルを超えてきました。OPECプラスの会合にて、サウジアラビアが2月以降追加で減産するということを発表し、原油の供給を減らして原油価格を上げる政策を目指しています。その結果、アメリカは輸入する原油価格が高くなり、インフレ、つまり物価は上がりやすくなります。前述の通り、インフレになりやすいということは、ドルが上がりやすくなります。物価が高くなる状況を石油が演出していることで、ドル安になる要因が一つ減ることになります。
2つ目は、少し難しいのですが、アメリカの金利がとても低く、通貨が安くなっている場合、ドルを借りて新興国への投資を行うことが多くなり、この取引をおこなうことをキャリートレードといいます。通貨が弱くなりそうで、金利の低いドルを借りて、南アフリカやトルコ、ブラジル等に投資する動きがこれまではとても盛んでした。
しかし、今後、ドルが高くなり、金利が上がる場合は、借りている金利負担が多くなり、借りている通貨が高くなると投資している通過の価値が下がり損が出てくることになるので、海外に投資しているお金を自国に戻すレパトリエーションという動きが、起こってきます。
レパトリエーションが起こると、ドルを売って外国通貨を買い、ドルが安くなる流れが、海外の通貨を売ってドルを買うという流れに変わり、ドルが上がりやすくなるということです。つまり、レパトリエーションが起こると、ドルは強くなりやすいのです。
このように、民主党政権が国債を増発することで、金利が上がりやすい状況になり、インフレの期待も上がってきます。それが、ドルが強くなる要因に変わった1つ目の要因です。
次に、OPECの政策により原油価格が上昇中であることが、アメリカがよりインフレ(物価上昇)につながる可能性が出てきたというのが2つ目です。
そして3つ目に、金利が上がる、ドルが強くなる可能性が出てきたことで、レパトリエーションが起こり、アメリカにお金が還流してくるドル高になる可能性をあります。このような3つの流れが、年始のこの7日間で起こった可能性があるのです。
もちろん、昨日の選挙結果を受けて、これから民主党政権が本当に国債を増発するのか。さらには、OPECの方向性がこのまま減産を進め価格を上昇することを目指すのか、レパトリエーションの動きが出るのかなど、これからも引き続きチェックする必要があります。
ただし、ドル円の相場の見通しに影響を与えるのは、こういった3つの要因にもあることを、今後の資産管理に役立てていただきたいと思います。