こちらのコラムは、2021年1月11日に作成しています。先週の振り返りと、今週の見通しについてお話をしたいと思います。
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先週は、米ISM非製造業指数、ISM製造業指数の指標など、経済動向を知る重要な指標があった中、まれにみる、今年の投資へのヒントが隠されていたのではないかと思います。
今回は、2つのポイントに絞ってお話をしていきたいと思います。
まず1つ目は、1月7日木曜日に発表あったFOMCの議事録です。2つ目は、1月8日金曜日に発表あった米国の雇用統計です。この2つのポイントから今後の金融政策と財政政策のヒントが見えてきました。ここからリスクポイントしっかりと把握して、資産運用を行うときにリスクをコントロールしていくこと大切です。
今年は年始の予想よりも相場にすごく動きが出そうな流れになりつつあると個人的には思いますので的確に分析していきたいと思います。
最初に金曜日に発表があった雇用統計からです。非農業者部門就業者数は前月比マイナスの14万人減、予想はプラス5万人という予想でしたが、予想を大きく下回るマイナス14万人ということになりました。
コロナ感染者拡大により雇用が減っており、去年の5月以降、コロナショックの後に雇用は徐々に回復してきた中、今回のマイナスは、事前に予想はされていたものの、やっぱりネガティブサプライズということになりました。
一方で、株価にはあまり反応が見られずでした。ということは、雇用統計が悪いことを、補う何かがあったというふうに考えるのが一般的です。雇用統計の詳細を紐解いていくと、その答えがあるかと思います。
まず、株価が大きく下がらなかった要因としては、12月はマイナス14万人だった一方で、10月、11月の雇用統計の修正が入り、この2カ月を合わせるとざっくりと14万人ぐらいプラス、今月のマイナス分と上方修正分と合わせて、トントンということでそんな悲観するものではない、というように、マーケットコメントが見られました。個人的にはこの解釈はとても都合が良いなぁと思いますが。
雇用統計には、家計調査というものがあります。例えば、失業率や労働参加率などは前月とほぼ変わらなかったので、この家計部門はほぼ材料視されませんでした。
私個人として、少し気になるのが平均時給の上昇です。平均時給が前年比で、約5%のプラスになっています。雇用が回復できていない状況で時給だけが伸びているのは、賃金の高い人は一時期的には職業失ったけども、今は高い賃金で職業に就けており、一方で、賃金の低かった人は現在も職を失ったまま、なかなか戻っていないことで平均が上昇しているということを示唆しています。
つまり、低賃金の人は職になかなか戻れなく、高賃金の人は復職できているという結果が平均の賃金上昇というような状況を示していますので、本来であれば生活支援を必要としている人の数が減らない状況だといえます。
その裏付けとして26週以上の長期失業者数は、こちらも7カ月連続で増えているます。具体的には、395万人が26週間仕事を探しているけれど見つかってないというような状況です。
長期失業者が増えるということは、幅広い層まで求職が及んでいないという状況が続いていることを意味しています。本当は職を欲しているけども、なかなか職に就けないという人が、雇用統計以上に増えているという実情を示しているため、結構厳しい雇用統計の内容だったように感じます。
雇用統計を受け、株価が反応しなかったもう一つの背景は何かというと、14万人マイナスになった、そのうちの構成数を見ていく必要があります。
製造業や、物をつくるという職業の人たちは、実は合計8万くらい増えています。一方でサービスに関わる人たちの雇用数が大きく下落しています。しかも中身はまちまちで、小売業は12万増え、専門職も16万人ぐらい増えています。しかし、ホスピタリティサービス、たとえばホテルや旅行などに関連する、レジャーホスピタリティはおおよそ49万人もの人が職を失っていることが分かりました。中身はすごく両極端な状況でした。
雇用統計ウオッチャーのコメントを見ると、コロナ感染拡大の状況さえ落ち着いてくれば、それだけレジャー分野は反動で大きく回復する見込みが高いので、今回の雇用統計は14万人マイナスという結果であっても、あまり心配ないという意見もあります。
もう1つのプラス材料は、今回14万人マイナスなったということで、1月20日からスタートするバイデン政権が雇用環境の悪化を理由に、財政出動、経済支援を行うことが、インセンティブになったということです。
雇用環境が悪いために職を失っている人が、政府から臨時支給などが行われることで生活を当面しのげるという効果が期待できます。だから、雇用統計が悪いということで株式にプラス、というおかしな安心感が市場には蔓延しており、株価が大きく影響してないといえます。
しかし、ここに大きなヒントがあります。今後、コロナ感染者の拡大をしっかりとコントロールできて、しかも、ワクチンの普及によって感染者が減ってくるようなことがあった場合には、雇用統計が大きく改善していくことが分かりました。
もし、雇用が大きく改善すると今までのように積極財政を継続することが、そんなには簡単ではなくなる可能性があります。継続の大義名分を失ってしまうということで、財政出動が期待できなくなるという可能性があるわけです。
ということで、雇用統計がよくなるということは当然、経済にとってはいいことである一方で、財政出動を行うインセンティブにはならない可能性があり、これを市場がどのように受け取るかと考えてみると、昨年から、悪いニュースだからこそ財政出動が行われるというような流れがあるので、雇用統計がよくなり財政出動が伴わないとなるとマーケットは、もしかしたらややリスク(資産価格の変動幅)が大きくなる可能性があるかもしれません。
ということで、これから雇用統計を見ていくときは、悪い数字では財政支援であサポートされるけれど、数字の改善が継続すれば今後は財政のサポートがなくなるということで、マーケットが崩れる可能性があるかもしれないというのが、1つ目の大きなポイントだと思っています。
2つ目のポイントです。FOMC開催から数週間で議事録が公表されるのですが、今回までの内容は、このような経済状況にある中で、これからも継続して低金利を続けて頑張っていきます、また、少なくとも2023年の末まで低金利政策を継続し、1カ月1,200億ドルの債券の購入を行うことで、市中にお金をばらまいていきますというメッセージをFOMCはコロナショック以降マーケットに発信してきました。
このようなこともあり、市場はすごく安定していましたが、今回も同じような内容だろうと安心していた中で、少し含みを持たせる内容に変化していました。今回、テーパリング、つまり景気が回復する局面であれば資金をばらまく量を減らす、つまり国債や債券の月々1,200億ドルの購入を減額していくことを、考えなきゃいけないよねというニュアンスを、一部のメンバーが実は言い始めているようです。
また、コロナ感染の収束が早まって想定以上の景気回復に入った場合には、過度なインフレを起こさないためにも、早めにテーパリングをスタートする必要があるかもしれない、それが2022年か23年かといわれたものが、もしかしたら、年内にもあるかもしれないということを、ほんの一部の人間ではあるんですが言い始めています。
つまり金融政策の低金利政策と量的緩和において、量的緩和を少し早めて修正する可能性があるというメッセージを出してきました。マーケットは、まだあまり警戒していないようですが、こういうコメントがメンバーから出ているということ自体が重要で、今後、もしかしたらこの議論が進む可能性があると警戒すべきです。
2013年、このテーパリングについてバーナンキFRB議長がコメントしたことで、株価が大きく下がった(テーパタントラム)ことがありました。緩和開始は市場関係者は大歓迎でが、縮小するとなるとマーケットが大きく反応するでしょう。
ということで、このFOMCの議事録にあった、今後想定しているよりも早い段階で、量的緩和が縮小し始める可能性があるということが、今回のヒントから分かったということになります。
今回の雇用統計からのヒントは、ワクチンが普及することによって、コロナが経済に与える影響が限定的になって、経済が思わぬ回復をすると今度は雇用が増えます。それは、レジャー産業のマイナス、49万人のマイナス分がドーンとプラスになれば、雇用が大きく回復し、財政出動をやるという大義名分がなくなってくるので、マーケットにはマイナスになるかもしれないということです。
2つ目のFOMCでいうと、テーパリングを早める可能性がありますよということで、今後マーケットは敏感に反応するようになるでしょう。
今週以降のリスクの見通しは、今度の木曜日にFRBのパウエル議長が大学のオンラインセミナーに出席して、コメントをする機会があります。もしもテーパリングや金利動向についてコメントすることがあれば、FOMCや雇用統計の流れとリンクさせて、マーケット反応してくる可能性があります。
この1週間でビットコインが25%下がったり、マーケット少し荒れています。その背景にやはり金利の上昇や、テーパリングの話が出てきたりということが背景だと思います。
今年の年初の想定より多くの材料が市場に出始めていますので、今年スタートしてから2週間はとても濃密なものになっています。気を緩めることなくリスクの芽を見逃すことなく、台頭してくるリスクに応じて、しっかりとポジション調整をしていくことが必要とされます。
引き続き金融政策、財政政策、金利の動向、そういったものに注目してほしいと思います。
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