米国小型株 S&P600の上昇は速すぎ?いまいちだった米国1月雇用統計。

米国小型株 S&P600の上昇は速すぎ?いまいちだった米国1月雇用統計。

超保守的な資産管理チャンネルで配信中

皆さんこんにちは。ファミリーオフィスドットコムです。本日は2月8日月曜日。今週の見通しをお伝えします。

1)先週の定点チェック

まずは定点チェックからです。以下のスライドを御覧ください。まずは、スライド上部にある通貨から。ここ1週間で米ドルインデックスは約0.5%の上昇、ドル円は約1.3%の上昇になっており、総じてドルが強かった一週間でした。

各国通貨の動き

米ドルは、他の通貨に対して材料まちまちでしたが、例えば、対豪ドルでは下げています。これは、豪準備銀行理事会(RBA)で利上げ条件が満たされるのは早くても2024年と、早期利上げに関して否定的コメントがあり豪ドル売りになりました。

英国中銀(BOE)の発言でポンドが上昇しました。委員会ではマイナス金利導入を検討しているのではというマーケットの予想に対して、検討はしているが、まだそういう結論に至りそうにないというニュアンスを伝えたことで、ポンドが買われました。

ニュージーランドドルは、米ドルに対して上昇しています。経済指標が良好だったことが背景です。

その他新興国も、総じてドルに対して強くなっています。こちらはエネルギー価格上昇による恩恵を受けるということが背景です。

米ドルインデックスの価格は、0.5%ほど全体に対して上がっていますが、ドル円は1.3%上がっています。これは、米ドルに対してのクロスカレンシー、豪ドルや英国ポンドの材料がまちまちだということで、金利上昇などを背景とした、米ドルの急上昇ではないので、マーケットに対しては、総じてポジティブな状態と思います。

株式市場

次に株式市場です。NYダウ、S&P500、ナスダックの3指標。こちらも先週一週間の下げを取り戻すような大幅高の展開になり、日経もつられて高くなっています。そういった意味では、株価はリスクオンに戻ったと言えるでしょう。

コモディティ

原油と金などのコモディティです。原油に関しては、約9%と大きく上昇しています。一方で、金に関してはマイナス4%近くまで下がっています。これは、金融相場から業績相場に移ってきている可能性が背景にあると考えられます。石油の需要が伸びてきている中で、今度は金に対するリスクオフの需要が減ってきていることが表れています。

米国金利

注目すべきは、米国10年金利です。10年金利が、1.19%、ほぼ1.2%まで上昇しています。週間でいうとかなり上昇している状況で、先の景気回復を見込んでいるのではないでしょうか。

FEDバランスシート

というところで、今週の見通しをしてきましたが、もう少し定点チェックを行いたいと思います。まずFRBの債券購入が量的緩和として行われていますが、こちらに関しても引き続き金額が上昇しています。ですから、FRBが社債、国債購入を少なくしているわけではないと言えます。

米イールドカーブ

30年、20年金利が少し上がってきていますが、全体としては景気を織り込んだ上がり方ですので、変な急上昇ではないと思います。ただ、金利が立ち上がってきている状況は、いずれ企業に関して、調達コスト等の観点において、ネガティブに捉えられる瞬間が出てくる可能性があります。その転換点については、しっかり見ていく必要があるでしょう。

2)今週の注目指標とイベント

ということで、こちらのスライドをご覧ください。今週は、材料が少ないです。木曜日、日本が休みということもありますが、見るべきところは4つ~5つです。

1つ目は、トランプ元大統領の弾劾裁判。こちらでもめるようなことがあると、経済対策1.9兆ドルの実行時期に対して、マイナスの悪い影響を与える可能性があります。こちら、あまり変なこじれが無く、長引かないことを見ていきたいと思います。

2つ目、パウエルFRB議長の講演が水曜日にあります。また、もう1つ同じ日に1月消費者物価指数、CPIの発表があります。この2つに関してですが、先週金曜日の雇用統計があまり良くない内容でした。

雇用が良くないということは、これまで通りFRBが緩和策を続けることが見えてていますので、パウエル議長がサプライズを出すことも想定しづらいです。また、CPIの数字が仮に強く出たとしても、雇用統計を踏まえると利上げをする雰囲気にはなりにくいですね。その観点から、この2つというのはとても重要ですが、今回は注目度が下がっていると思います。

12日金曜日、ミシガン消費者信頼関数があり、消費が回復していることを確認しますが、こちらもあまりサプライズはなしかと思われます。プラスを期待する中で、大きくマイナスになっていればネガティブですが、そこは今のところ可能性は低そうです。

海外に目を移すと、日本の景気ウォッチャー指数や、イタリアの元ECB議長のドラギ氏が首相が就任する等があります。元ECBのトップですから、イタリアをどうコントロールしていくかは、欧州の金利上昇にも大きな影響を与えます。注目すべきかと思いますが、今回は大きな材料が少ないと言えるでしょう。

ということで、今週の見通しに入っていきます。

3)今週の見通し

先ほど言ったように、雇用統計があまり良くなかった背景もあり、出口戦略にFRBが向かうとは少し考えにくいと思われます。ということで、量的緩和、低金利政策が継続されることになります。

企業業績では、SP500発表済みの企業業績で予想を超えた会社が、83%もあるということで、かなり好調な決算が続いています。

先週発表のあった、ISM製造業・非製造業は、共に内容も雇用も良かったです。

こちらに関して、この3つの観点から、中期的なスタンスとしては、引き続きリスクオン、運用スタンスとして維持できることが確認できます。

S&P400、S&P500、S&P600のチャート

ただ、少し気になることがあります。これはSP400、SP500、SP600のチャートです。

S&P500はなじみ深いでしょうが、S&P400、S&P600がよく分からない方が多いと思います。S&P500は、アメリカの大型株、全体の75%をカバーしている有名な指標です。一方で、SP400は中型株です。株式株としては400銘柄をカバーしているので、S&P400と言います。株式市場全体では、7%のみです。S&P600は、小型株です。600株の小型株を集め、市場全体で3%のみのカバーです。

こちらのチャート、年初以来一番上昇しているのは小型株です。次に上昇しているのは、S&P400。そして最後にS&P500。ということで、今年に入って一番パフォーマンスがいいのは小型株で、次が中型株、最後が大型株ということです。

これは完全に小型株への物色が進んでいることを意味します。大型株の業績がある程度いい、500ある業績が83%伸びていることで、株価が上がってきています。

ですが、バリエーション、PER的に見ても、少し説明は付くものの、S&P500に割高感が台頭してきていることもあり、他のところにお金を入れていこうと、中型・小型株にお金が流れている状況です。その中で、小型株の方が、もっと多いということで、そこを狙う向きがあります。

S&P600のゾンビ企業

ですが、ゾンビ企業、いわゆる営業利益で借り入れを返せないところが、S&P600の中にはかなりあると言われています。ということは、企業業績などのファンドメンタルズを反映した上昇ではなく、投機マネーが入ってきているということを意味しています。そういった観点からいくと、相場に過熱感があり、いつでも崩れやすい状況ともいえるので、注意が必要です。

S&P500のイールドスプレッド

もう1点、イールドスプレッドというものがあります。S&P500の今のPERは、予想で22万円になっています。10年金利が1.2%になっていますが、S&P500のPERは約22倍ですから、逆数で表すと4.54%という益利回りになります。

株式に投資すると、4.54%の益利回りがあがる中、米国の10年国債だと1.2%の利回り。つまり、イールドスプレッドは3.35%になります。

S&P500に関しては、歴史的にイールドスプレッドが3%を切ってくると要注意と言われます。イールドスプレッドで見ると、S&P500自体は堅調なので、S&P500から崩れることは少ないと思います。

もしリスクオンの相場で株式相場が崩れてくるとすれば、先ほど言ったようなS&P400、S&P600のような中型、小型株が、過熱感で売りがかさみ、株価が調整することがありえます。S&P500だけでなく、S&P400、S&P600等、投機マネーが入っていると思われる相場変調を、確認していくことが大事です。


続きを読む

「資産を守るために、着実な資産管理を」

ファミリーオフィスドットコムでは無料で⾃信で⾏っていただける資産管理から、
エキスパートによるオーダーメイド型の資産管理まで、様々なサービスを提供しています。

メディアでご紹介いただきました

関連記事

メガテック銘柄大幅安!景気減速と利下げ観測で変わる投資の潮流~セクターローテーションは今後も続く?

メガテック銘柄大幅安!景気減速と利下げ観測で変わる投資の潮流~セクターローテーションは今後も続く?

7月24日のナスダック総合株価指数は前日比3.6%安となり、2022年10月以来、約1年9カ月ぶりの下落率を記 …

バイデン大統領の不出馬表明で一変する米大統領選~今後もトランプ・トレードは続くのか?

バイデン大統領の不出馬表明で一変する米大統領選~今後もトランプ・トレードは続くのか?

7月は、米大統領選の構図が大きく変わりました。民主党のバイデン大統領は11月の大統領選に出馬しないことを表明し …

ユーロ円、高値更新後の行方は? ECBの利下げ観測と米大統領選の影響

ユーロ円、高値更新後の行方は? ECBの利下げ観測と米大統領選の影響

欧州中央銀行(ECB)は18日、主要政策金利を据え置き、市場の予想通り9月までの様子見を決め込みました。市場の …

米小売売上高は予想外の堅調さ~コントロールグループが牽引

米小売売上高は予想外の堅調さ~コントロールグループが牽引

  6月結果 市場予想 前回 米小売売上高 0.00% -0.30% 0.30% 米国の6月小売売上高が7月1 …

【米国株S&P500】‌‌S&P500は今後どうなるか?警戒すべき市場経験則【7/16 マーケット見通し】

【米国株S&P500】‌‌S&P500は今後どうなるか?警戒すべき市場経験則【7/16 マーケット見通し】

米国株式のS&P500は、絶好調な状況が続いています。本日は、この状態で注目すべきS&P500 …

総合CPIは前月比でコロナ以来のマイナスに~今後のドル円に与える影響は?

総合CPIは前月比でコロナ以来のマイナスに~今後のドル円に与える影響は?

米CPI 6月結果 市場予想 総合CPI前年同月比 3.0% 3.1% 総合CPI前月比 -0.1% 0.1% …

米企業決算が本格化!注目の企業は?S&P500の予想EPSの見通しは?

米企業決算が本格化!注目の企業は?S&P500の予想EPSの見通しは?

7月10日のS&P500種株価指数は7営業日続伸となり、初めて5,600を上回りました。ハイテク株比率 …

【第3回】ファミリーオフィス型、絶対に知っておくべきポートフォリオ戦略 〜ポートフォリオ戦略の極意・長期・積立・分散投資の重要性〜

【第3回】ファミリーオフィス型、絶対に知っておくべきポートフォリオ戦略 〜ポートフォリオ戦略の極意・長期・積立・分散投資の重要性〜

多くの富裕層が、より効果的な運用方法を求めて日々悩んでいます。本記事では、富裕層のためのポートフォリオ戦略、特 …

【米国株】‌‌米国の景気減速傾向がさらに強まる中、まだ楽観論の継続で本当に大丈夫か?【7/8 マーケット見通し】

【米国株】‌‌米国の景気減速傾向がさらに強まる中、まだ楽観論の継続で本当に大丈夫か?【7/8 マーケット見通し】

本日のテーマは米国株です。先週1週間、ISMの製造業指数やISM非製造業指数、雇用に関する多くの経済指標が発表 …

6月の米雇用統計は失業率が4.1%に悪化~サーム・ルールのシグナルが点灯?

6月の米雇用統計は失業率が4.1%に悪化~サーム・ルールのシグナルが点灯?

 米雇用統計 6月結果 市場予想 非農業部門雇用者数 20.6万人増 19.0万人増 失業率 4.10% 4. …

米景気の先行き不安広がる〜ISM製造業・非製造業ともに50を割れ込み、週末の雇用統計に注目〜

米景気の先行き不安広がる〜ISM製造業・非製造業ともに50を割れ込み、週末の雇用統計に注目〜

ISM景気指数(製造業・非製造業)   結果 市場予想 前回 製造業 48.5 49.1 48.7 非製造業 …

【第2回】ファミリーオフィス型、絶対に知っておくべきポートフォリオ戦略 〜ゴールベース運用・資産を守りながら増やす資産運用戦略〜

【第2回】ファミリーオフィス型、絶対に知っておくべきポートフォリオ戦略 〜ゴールベース運用・資産を守りながら増やす資産運用戦略〜

富裕層にとって、資産運用は一層重要な課題です。そして、安定したリターンを確保しながらリスクを適切にコントロール …

サマーラリーと夏枯れ相場~投資家が知っておくべき夏季市場の動向と大統領選挙年の傾向

サマーラリーと夏枯れ相場~投資家が知っておくべき夏季市場の動向と大統領選挙年の傾向

サマーラリー(Summer Rally)は、株式市場におけるアノマリーの一つで、特に夏季に株価が上昇しやすい現 …

【第1回】ファミリーオフィス型、絶対に知っておくべきポートフォリオ戦略 〜リスクとリターンのバランス・富裕層が考えるべき投資戦略〜

【第1回】ファミリーオフィス型、絶対に知っておくべきポートフォリオ戦略 〜リスクとリターンのバランス・富裕層が考えるべき投資戦略〜

富裕層の投資戦略において、リスクとリターンのバランスを考えることは大切です。適切なポートフォリオを構築すること …

PCEデフレーターと金価格:インフレ率とFRB政策の影響を探る

PCEデフレーターと金価格:インフレ率とFRB政策の影響を探る

PCEデフレーターは、米国の個人消費支出(PCE)の価格変動を測定する重要な経済指標です。特に、食品とエネルギ …

おすすめ記事