不安定な株式市場。機関投資家の動向分析【4/23 週末、先読みマーケット】

不安定な株式市場。機関投資家の動向分析【4/23 週末、先読みマーケット】

はじめに


皆さん、こんにちは。ファミリーオフィスドットコムです。本日は4月23日金曜日。週末先読みマーケットを、お伝えします。

本日のテーマは、昨日も大きく下落するなど、最近不安定な状態が続く株式市場に、大きな影響を与える機関投資家の動向を分析です。さらに、今後の見通しをお伝えしていきます。

海外機関投資家の動向分析

保険各社の投資スタンスが、ゴールドマンサックスのグループ会社、ゴールドサックスアセットマネジメント(GSAM)から、保険会社の投資スタンスが発表されました。いろいろな情報ベンダーや、新聞各社の報道によると、おおよそ、生命保険の運用枠13兆ドルの資産のが、リスクオンに大きく転換しているという内容の記事になっています。

ヘッドラインだけを見ると、マーケットに対しリスクオンの状態となり、株や債券に積極的にお金が向かっていると、捉えがちです。

ミスリードしがちなヘッドライン

ですが、読み込んでみると、実は内容は異なっています。ミスリードしないようにしてください。リスクを増やしたいと回答した生命保険担当者によると、未公開ファンド(PEファンド)、中小企業向けローン、インフラ向け融資、ローン債権を束ねたローン担保証券(CLO)に対する投資(オルタナティブ投資)を、増やしていくということです。

つまり、伝統的金融資産から、一部の資産をオルタナティブ投資に変更していくと言っているだけです。もともと、オルタナティブ投資というのは、エール大学も、ハーバード大学等も、ある一定割合を持っているのですが、全体の中で占めるのは10%未満程度です。お金が向かうとはいえ、それは決してリスクオンにしているわけではありません。

株と債券の期待利回りが低下している証左

今投資をしている株・債券という伝統的金融資産の魅力が低下しているので、それ以外に収益を確保するために、オルタナティブ投資を選んでいることが背景にあります。記事だけを見ると、株がこれから上がってきそうだと思いがちですが、そこはしっかりと判断する必要があります。

今年の株・債券のボラティリティが高いと想定

さらに、深く読んでいきましょう。マクロ経済のリスク要因とは、どういうことかを聞いたところ、株や債券のボラティリティ(相場変動)が、最大のリスクと考えられるとの回答が、全体の19%と最も多くなっています。株と債券の変動が大きくなると、多くの人が予想しているということです。変動幅を受けるぐらいであれば、長期間投資できる、PEファンド等に投資して、リターンをしっかりと取っていこうとしているということです。

しかも、メガ・トレンドに合うような、太陽光などに投資をすることで、短期利益を追求するスタンスから、長期的な利益を追求するスタンスへと変わるということも、言っています。つまり、巨額の株や債券のポジションをコントロールしながら、オルタナティブ投資に一部シフトしているだけだということです。生命保険運用枠の13兆ドル(1,400兆円)のうち、一部が株・債債券から動くことになりますので、株に対しては売り圧力が強まると考えるのが、適切でしょう。

国内機関投資家の動向分析

日本の生命保険会社は、400兆円ほどを運用しているため、GPIFの倍近い金額を運用していることになります。そのため、彼らの運用スタイルは、株価や債券に大きな影響を与えることで、知られています。保険会社が、年度を超えた4月から、新たな運用方針を発表しており、その内容には、4つの共通点が見られます

1つ目は、ヘッジ付き外債を減らすこと。ドル安・ユーロ安などで、購入した外国債券の通貨が下落したことで、含み損が出ることを避けるために、円高でも、円安でも、ヘッジをかける割合を減らすか、現状維持しようとしています。

今は、円高・円安になっても影響を受けないためのコストが、非常に低くなっています。ですが、金利が上がってくると、コストが高くなるため、運用しても利益が上がってこない(実質利回りが低い)状態になると見込んでいると、各社が発表しています。これは言い換えれば、ドルの短期的上昇が、近いうちに起こると、想定していることです。それは、FRBの政策金利の変更、インフレの台頭を、頭の片隅におきながら、運用スタイルを決めていることが、ヘッジ付き外債を減らしているというスタンスに、現れていると思われます。

2つ目の共通点は、ヘッジがついていない外債(オープン外債)を増やすことです。ですが、2021年度末の金利予想は、アメリカ10年金利で2%を超えるものが中心になっているので、現時点では債券を買わずに、もう少し金利が上がったところで買うと言っています。年末にかけて金利が上がってくると、株を売って、外国債券を売る動きが増えてくるということで、株に対する売り圧力を示したような内容になっています。

3つ目は、国内外共通で、株式が高いと思っているところが多く、割安になれば買うと言っていることです。現段階での株の流入は、少し少なく、生保による株の買い支えはあまり期待できないでしょう。

また、リスクをコントロールしながら株式に投資してくとのコメントも、かなり見られます。投資家の先行き不安を示す、VIX指数が上がってくるようなことがあれば、投資を減らす動向も出てきます。今はVIXが16~18台と低水準で推移していますが、20を超えてくると、一気に株の売り圧力が増えるでしょう。そのことから、生命保険各社は、株について消極的だと言えます。

最後の共通点は、オルタナティブ投資に関心があるということです。かんぽ生命は、総資産の1パーセントの投資だったのを、2%に増やすと発言しています。もちろん、全体の1パーセント程度の増加ですから、オルタナティブだけが中心になっていくわけではありませんが。

オルタナティブ投資に資金が流れる理由


では、なぜオルタナティブ投資にお金が向かうのでしょうか。冒頭から説明しているように、株や債券に対する、期待リターンが下がっていて、かつ、リスクが上がっているからです。株と債券は、リスクに見合うリターンが期待できないと判断し、代替として、オルタナティブ投資を行うと言っているのです

世の中でいう、インタレスト・ハンティングといって、利回りがちゃんと取れないものに対して、お金が余った状態。全ての利回りが下がっている状態です。残るところは、PEファンドを含めた、オルタナティブしかないので、そこにお金を向けざるを得ないという、苦しい状況が続いているということが、機関投資家の動向調査から分かってきました。

つまり、機関投資家は短期売買を繰り返すのではなく、長期でのポートフォリオを作っていくことになります。長期のフローとしては、株債権にこれまで以上にお金を流入させるのではなく、慎重な姿勢を取るということが、生命保険のコメントや、GSAMのレポートから読み取れます。決してリスクオンではないということを、ご理解いただきたいと思います。

その他の下落要因と今後の動向


それ以外にも、株価が下がった要因はいくつかあります。まず、アメリカにキャピタルゲイン課税が、バイデン大統領から予定として発表されたとのことです。来週28日、下院議員の総会において、そちらの内容が発表されるそうですので、来週はそちらに、間違いなく注目が集まるでしょう

ただ、キャピタルゲイン増税した過去の歴史を振り返ると、株価が上がった傾向のほうが強いです。ですから、増税するから、株価が下がったという動きは、一過性のものである可能性もあります。ただし、今のような金融緩和の状態で、しかも、信用が拡大している中で、この増税がどのようなインパクトを与えるかは、誰にも予測できません。予測できないのであれば、ポジションを減らそうと、株がどんどん売られているのだと考えられます。

それを示すように、日本のGPFを中心とした信託銀行を通した株式購入は、ようやくプラスになってきていますが、14週連続で売り越しでした。機関投資家は、株式のポジションが不透明化する中で、減らしてきている状況が、今も続いていると認識しておく必要があります。

まだ終わっていないアルケゴス問題

そして、もう1つ。私がとても注目しているのは、アルケゴスショックの問題がまだまだ終わっていないということです。アメリカの上院議員が、今回、損害額が多かった金融各社4社に書簡を送り、なぜこのようなことが起こったのか、解答するように求めており、その期限が4月22日木曜日でした。

リーマンショックにより、金融機関の暴走を止められなかった反省から作られたドットフランク法という法律がありましたが、法律の抜け目をつくような今回の出来事を受けて、さらに締め付けを行うのではないかと、言われています。

そうなると、マーケットは、レバレッジが進み、世間に出ていたお金を巻き戻す動きを見せ得るということで、さらに法律の整備が出てくれば、マーケットは変わってくるのではないかと言われています。

今日の生命保険の、長期でのお金の流れと同じように、数年かけて出てきたお金の流れが巻き戻される流れは、大きなトレンドを作る可能性があります。こういったニュースは埋もれがちですが、来週以降出てくるかと思いますので、しっかりとチェックすることが必要でしょう。

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