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皆さんこんにちは。ファミリーオフィスドットコムです。本日は5月14日金曜日。週末先読みマーケットをお伝えします。
今週は、株式市場にとって波乱の一週間となりましたで。日経平均もそうですが、S&P500、特にナスダックは大きく下落をしました。下落の大きな背景には、インフレ懸念が台頭し、アメリカ10年長期金利上昇が連想され、そこから、株価の調整が起こりました。
ただ、木曜日の夜にはアメリカ市場が少し落ち着きを取り戻しました。10年金利も1.7%に迫っていたものが、1.65%ぐらいまで落ち着いて、株価も一服する形になっています。いったんは落ち着いた状況ですが、来週以降どうなるのか、今日は確認していきます。
今回のテーマは、次の金利上昇の時期とS&P500の見通し今回、アメリカで一番注目されている今後のインフレに伴う金利上昇について関係する内容二つです。一つ目は、今後、いつ金利が急上昇に転換するのか。上昇する局面はどこかを見ていくことです。そして二つ目は、S&P500のEPSとPERを見て、どのように今後アメリカの株を見ればいいのかの確認になります。
改めてアメリカ長期金利が上がることでの影響について、簡単にご説明します。そもそも、金利が上昇するのは、景気回復を伴ったものであれば、一般的にいい金利の上昇とされます。ですが、金利が急激に上がる場合は、マーケットにかなりのショックを与えることになります。
なぜ、大きなショックになるのかには二つの理由があります。一つ目は金利の上昇が株価に影響を与え、株価が下がるため。二つ目は、金利が上昇すると、企業業績にマイナスの影響があるためです。
この二つは、景気の回復を伴う緩やかな金利の上昇であれば、業績にそれを織り込みながら対応できます。しかし急激であれば、まともに正面から受けてしまうというのが、金利上昇の大きな問題点となります。
では、今後金利が急上昇するのはどこか。きっかけとなるのは、金融政策の変更、もしくは、財政政策になります。そこで今日は、この二つの観点より、いつ金利上昇が起こりうるのか、過去の事例を見ながら確認します。
こちらをご覧ください。金融政策の変更点です。昨日ウォラーFRB理事が大事な発言をしています。ロイターの記事にあるように、金融政策の変更を検討する前には、さらに数か月のデータが必要としています。
5月上旬の雇用統計では失業者が減っておらず、物価が上がっていました。このことについて即座に反応せず、5月~6月の雇用統計発表を見て2~3カ月単位で、物価上昇、雇用状況を見ていかないと、ジャッジできないと言っているのです。
5月~6月を見て判断するというわけではありませんが、せめて数カ月は見なければならないと改めて伝えています。ただし、大事なポイントは記事の後半にあるように、彼らから見ても想定外だったということです。
彼らから見ても、一過性だと言い続けているものの、驚きをもって受け止めたと言っていますので、そういった意味では今後、変更の余地はあると改めて認識された内容になっています。
右側にあるスケジュールを見ていただくと、5月雇用統計の発表は6月4日です。そして、6月FOMCは6月16日に開催されて、6月の雇用統計が7月2日に発表になっています。5月~6月雇用統計の結果を見たいということは、6月15日段階で大きな政策決定、テーパリングについて言及することは、少し難しいのではないかと考えられます。
一方で、6月雇用統計が大きく回復していて、物価上昇も確認でき、賃金も上昇している。つまり、インフレ率に関わる数字が非常に伸びていた場合は、7月28日に予定されているFOMCや、8月下旬のジャクソンホール会合において、パウエル議長がコメントすることも十分に考えられるでしょう。
ということで、金融政策の観点から金利が急上昇するということは、可能性としては7月2日6月雇用統計で予想を上回る状態が続いていて、さらにCPI、PPIなどの物価もPCコアデフレーターも上がっているとなれば、7月以降十分に政策決定が変わる可能性が出てきたと言えます。
もちろん、いきなり政策金利の変更はないでしょう。ただ、テーパリングの議論がスタートしうることは、懸念しておく必要があります。5月~6月中の政策変更は起こりえないでしょう。だとすれば、5月~6月は金利が落ち着いて、株価が安泰なのでしょうか?そこを考えるときにはもう一つ、財政政策面を確認する必要があります。
私は、今週の見通しの中で、12日に行われたバイデン大統領の上院下院、民主共和両方のトップを集めた、今後の財政政策についての話し合いが、大事なポイントとお伝えしていました。その内容に、今後の財政政策がどうなっていくかのヒントがありましたので、こちらを確認します。
こちらをご覧ください。バイデン大統領は12日水曜日、ホワイトハウスで就任後初めて、協和民主のトップを呼びました。今後の経済政策や財政策について意見交換をしたのですが、この中にすごく大事なポイントがあります。
バイデン大統領は会見後、計画を巡り妥協の余地はあると言っているものの、必要であれば与党単独で議決を進める、つまり、2.15兆ドルのインフラ投資法案(米国雇用法)について、単独で採決する可能性があるとしています。
共和党は増税を伴う財政出動は受け入れられないと強く言っています。バイデン大統領は、受け入れられないのであれば妥協するところは妥協するけれども、他については単独で採決してもいいと言っているのです。
この1.9兆ドルの財政出動を3月に実施したときも、民主党単独採決を行いました。単独採決は1年に1回しか使われない手だと言われていたので、今回の2.15兆ドルのインフラ法案については共和で話し合うことになり、法案は通らないと一般的に考えられていたのです。
アメリカの年度は10月から始まり9月末で終わるため、年に1回しか使えないとされる単独採決を3月に使ったことから、次に使うとすれば10月以降にしか使えず、採決時期が秋以降に先送りになり財政出動が遅れるとされていたのです。
しかし、今回の会談後の発言を受けて、今年2回目の単独採決を行う可能性があるとのニュースが流れています。水曜日に金利が上がったのは、インフレ率が台頭したことが背景にあるでしょうが、先送りになると思われた財政出動の採決が、早まる可能性が出たことに反応した可能性があることに注意が必要です。
なぜ年2回も強行採決が可能になったかというと、2度目の強硬採決をできるのか上院議院で話し合い、結果的には上院議院の議事運営専門員が、年2回の採決も問題ないと通知したからです。そこで、バイデン大統領や議会運営者が決めれば、通せると分かってきたのです。
そして、もし、今回の会談をもってお互いにすり寄れる点が無ければ、単独で採決を行い、結果として財政出動を伴った金利上昇が起こるのではないかとの懸念が、今浮かんできているのです。
なぜそのような懸念が浮かんできているか、こちらのチャートでご説明します。こちら、アメリカ10年金利を示したものです。今年1月5日に民主党が上院議院残り2席を取ったことによって、50対50になり民主党が過半数を占めたことが、世の中にとってサプライズとなり、金利が上がりました。
1月14日に1.9兆ドルの追加経済対策を公表し、いったん金利は落ち着きました。落ち着いたのは、この法案が通るか分からないということが、ベースにあったからです。しかし、2月2日に財政調整措置を使い、民主党単独で採決を目指してからは、金利が急上昇しています。10年金利が1%から1.7%まで、急上昇をしています。そして、3月23日に可決した後は、事実をもって金利が下がるということで、金利が徐々に下がってきています。
3月31日には追加で2.15兆ドルのインフラ投資案を発表しました。以降、金利が徐々に下がってきた中、今回物価上昇に伴う金利上昇はありましたが、財政の面からいくと、金利は下がる兆候だったのです。下がってきた理由は、強行採決で通らないだろうとの予想がベースにあったと言われています。
ですが今回、会談後、協議を重ねた結果相寄れない場合には、財政調整措置を使うと発言した後は、前回同様に金利が上昇していくことは十分にあり得ます。そして、7月4日の可決を目指しているということは、金利上昇はその前に起こりえると考えられるのです。
以上から、5月後半~6月にかけて、金利上昇が財政政策の観点からスタートすることも十分にあると、投資家である皆さんには気を付けていただく必要があるでしょう。
ここまでをまとめると、金融政策においては、2~3カ月様子見しなければ、金融政策の変更、テーパリング開始の議論はスタートできないことが分かりました。一方で、財政政策に関しては、いつ金利を上げる兆候があるか確認できました。
昨日はいったん金利が落ち着いたので、株価がすぐに戻ると思っているかもしれませんが、金利がいきなり上がる可能性は引き続きあります。しっかりとリスク管理を行う必要があると、まずは金利面から分かりました。
では、株は買えないのでしょうか。株価というのは金利にも左右されますが、最終的には企業業績に収れんするのが基本です。S&P500が大きく下がっていますが、どういった状況で株価が反転するのかを、一緒に見ていきたいと思います。
こちらはRichardson Wealthが出している資料になります。グラフを確認すると、まだまだ業績が回復していない企業があるものの、四半期ごとに出ているS&P500社の一株当たり利益は、2022年第4クォーター、つまり、2022年12月末まで業績は右肩上がりだと予想されているのです。
このように業績が上がっている状況においての金利上昇では、調整は起こるものの、大きな暴落にはなかなか結び付きにくいことを、ぜひ覚えておいていただきたいと思います。
S&P500の予想EPSは、2021年188ポイント、22年210ポイント、23年229ポイントです。5月13日時点S&P500 EPSの4,112ポイントをベースに考えると、2021年度21.87倍、22年19.58倍、23年17.96倍となっていますので、過去のS&P500のおおよその平均、16~17倍から見ると、若干割高と言えます。
株価は、2023年業績まで織り込んでいるということが分かりますが、ただ、2年先までの業績を織り込んだだけであり、決して10年、20年先の利益を織り込んだ異常な割高ではないとも言えます。今後堅調に業績が回復していくようなことがあれば、調整局面で少し下がったとしても、基本的には株価が上がりやすい状況にあると、一つご理解いただきたいと思います。
そして、もう一つのポイントです。2018年2月と2018年9月末~10月にかけて、株価が大きく下落する局面がありました。このとき原因となったのは、金利の急上昇だったのです。金利が急に上昇した後、株価が20%近く調整したのですが、今回もそうなるのでしょうか。
実はこのとき、一株当たりのEPSは横ばい、もしくは少し下げかかっていたのです。つまり、金利が上昇したことが株価に影響はしたものの、さらに業績自体も少し低迷気味、横ばいだったことが下げ幅を広げたのです。
今回は金利が上がったとしても、業績は上がっています。業績は一番株価にインパクトを与えるという観点からすると、調整の範囲内で、割高の修正という範囲にとどまるというのが、今の基本的な流れと思われます。
とはいえ、前半お伝えしたように、金利が上がっても大丈夫なのかというと、そこはすごく注意が必要です。突然の金利上昇や大幅な金利上昇であれば、バリエーションの評価で過去16倍~17倍のPERが平均だったものが、オーバーシュートして14倍程度まで下がることもあります。そこについて安心することはできません。
緩やかな金利上昇であれば、最終的に株価は業績に連動します。今は怖いと思ってマーケットに接するというよりも、リスク管理としてポジションを少し減らし気味にして、調整局面をうまく超えていくことが大事になるでしょう。ぜひ、こう言った数字を参考にマーケットに来週以降も向かっていただければと思います。
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