賢明なる資産運用 〜株価下落時の対処法〜

賢明なる資産運用 〜株価下落時の対処法〜

株式市場が大きく下落し始めたらどうしますか。損失回避のため、株式投資をやめたいと思う人も多いかと思います。

ところで、賢明なる資産家と呼ばれる人たちは、トレーディング(短期売買)は行わず、インベストメント(長期投資)を行うことが特徴といえますが、特に、保有資産の70%程度のコア資産(コア・アセット)については、長期でポートフォリオ資産運用を行う傾向が強いといえます。

そのコア資産の中でも大きな成長エンジンを担うのはやはり株式になりますが、株式は特徴として値動きが激しいことはみなさんもご存知の通りです。では、賢明なる資産管理では、相場が大きく下落する(10%以上)局面では、すべてのポートフォリオを売却して現金化することで恐怖を回避することを行っているのでしょうか。

株式の売却は別のリスクを抱える

下落の恐怖や損失を回避するために、相場の急変や危機に直面したと感じたときは株式をすべて売却される投資家もいるかと思います。また、株価が下落するとすぐに手放したくなる気持ちもとても良く理解できます。

すぐに手放すことのマイナス面

しかし、冷静に過去の実例を確認していくとある事実が判明します。今回は、全世界株式で分析してみます。例えば、2000年から2020年の20年間で、年間の最大下落率が10%以内であった年は、なんと4回しかありません。一方、その他の16年は、年間で必ず10%を超える株価の下落を起こしてるという事実があります。このように、株式投資においては大きな下落は「普通のこと」と言えそうです。

しかし、それに堪えて全世界株に2000年から投継続して20年間投資を継続した場合、資産が約3.2倍に成長した事実があります。このような事実を踏まえ賢明な資産管理では、下落局面でもコア資産はほぼ売却することはなく保持することが鉄則とされています。

目先の変動だけで判断することのリスク

さらに、ポートフォリオを保持する合理性について考えてみます。最近では、誰でもが簡単に情報を手に入れることができるようなったことで、株式市場に悪い影響を与えるニュースを耳にして焦って売却を行うことが多くなったのではないかと思います。しかし、資産形成を確実に実現するには投資を長期目線で行うことがいくことが不可欠と言えます。それは、なぜでしょうか。

こちらのチャートは、全世界株式のトータルリターンを表したものです。このチャートからわかることは、トータルの上昇局面は、トータルの下落局面に対してその期間がとても長く約6.5倍程度もあることです、しかも、上昇局面でのリターンは約300%、一方、下落局面でのマイナスは約30%にとどまっていることにも注目が必要です

つまり、下落局面での損失を回避するために株式を現金化することは、その後、再購入のタイミングを図っている間に株価が大きく上昇する機会損失が生じる可能性がとても高いといえます。これが、投資におけるタイミングを図ることの難しさの背景です。

相場の底値を判断する難しさ

マーケット・タイミング

マーケット・タイミングを図る(底値で買い、高値で売る)ことの難しさについては、バートン・キルマール氏が名著「ウォール街のランダム・ウォーク」の中で伝えています。

「1970年以降、ファンドマネージャーたちは、ほとんどの相場サイクルで現金の配分のタイミングを間違ってきた。彼らが相場の行方に懸念を抱いていた時と市場が底値圏であった時期がほぼ完全に一致している。」としています。つまり、プロのファンドマネージャーでもマーケットのタイミングを図ることは難しいといえます。

下落時の対処法

このように下落時における対処法はとても難しことがお分かりいただけたかと思います。では、下落時の賢明な対処法はというと、下落時に狼狽して売却しなくて良い、日頃から「安全性の高いポートフォリオの一部として株式を保有すること」です

株式の下落時には、その他の資産が値上がりするような関係の資産(逆相関)を保有することでコア資産全体の資産価値を保持できれば、株式を売却を行うことなく長期保有できることができます。それにより、確実に上昇局面へ乗り遅れないことが投資が可能になります。

つまり、下落の前に「自分に適したポートフォリオ」を構築しておくことが、大きな資産を築くコツだといえます。

続きを読む

「資産を守るために、着実な資産管理を」

ファミリーオフィスドットコムでは無料で⾃信で⾏っていただける資産管理から、
エキスパートによるオーダーメイド型の資産管理まで、様々なサービスを提供しています。

メディアでご紹介いただきました

関連記事

【米国株】‌‌米大手金融機関が決算悪化。今後への影響が大きそうだと思われる理由。【4/15 マーケット見通し】

【米国株】‌‌米大手金融機関が決算悪化。今後への影響が大きそうだと思われる理由。【4/15 マーケット見通し】

12日からアメリカの決算発表がスタートし、アメリカのJPモルガン、シティグループ、ウェルズ・ファーゴなど大手金 …

金価格が史上最高値を更新!急騰の背景と今後の見通しを解説

金価格が史上最高値を更新!急騰の背景と今後の見通しを解説

金(ゴールド)の国際価格が急上昇し、1トロイオンスあたり2,300ドルを超える史上最高値を記録しました。金は従 …

日経VI:今後の日経平均や株式市場への影響と注意点

日経VI:今後の日経平均や株式市場への影響と注意点

最近、中東情勢の緊張と原油価格の上昇によってリスクオフムードが高まり、日経平均ボラティリティ・インデックス(日 …

【米国株】‌今週末から米国企業決算が本格的にスタート。S&P500の現状分析と注目点。【4/8 マーケット見通し】

【米国株】‌今週末から米国企業決算が本格的にスタート。S&P500の現状分析と注目点。【4/8 マーケット見通し】

本日のテーマは米国株です。12日から米国金融機関を中心に、2024年度第1Qの決算発表がスタートします。 今年 …

【2024年最新】NISA口座開設・利用状況から見える投資家動向 

【2024年最新】NISA口座開設・利用状況から見える投資家動向 

2024年に入ってから、NISA(少額投資非課税制度)の利用が大幅に拡大しました。本記事ではまず、NISA口座 …

バブル期の高値を更新し、44%の上昇率を記録した日経平均株価:2023年度のマーケットを振り返る

バブル期の高値を更新し、44%の上昇率を記録した日経平均株価:2023年度のマーケットを振り返る

2024年4月から新年度に入りました。2023年度のマーケットを振り返ると、改めて日本の株式市場は記録的な1年 …

【米国株投資】‌なぜ今年は米国小型株に注目する人が多いのか?【4/1 マーケット見通し】

【米国株投資】‌なぜ今年は米国小型株に注目する人が多いのか?【4/1 マーケット見通し】

本日は、米国株投資を取り上げます。今年に入り、米国小型株、ラッセル2000に注目する人が増えています。最近は、 …

【米国債券投資】‌6月利下げの可能性が高まる中、利下げ開始後の債券ETF投資戦略について【3/25 マーケット見通し】

【米国債券投資】‌6月利下げの可能性が高まる中、利下げ開始後の債券ETF投資戦略について【3/25 マーケット見通し】

先週のFOMCを受け、6月の利上げ可能性が高まってきました。その影響で、今後の長期金利低下などが期待される中で …

【米国株】‌いよいよ米国経済に変調の兆し。3月FOMCが米国株へ与える影響に注意【3/18 マーケット見通し】

【米国株】‌いよいよ米国経済に変調の兆し。3月FOMCが米国株へ与える影響に注意【3/18 マーケット見通し】

先週の経済指標のいくつかは、アメリカの経済に、いよいよ変調の兆しがありと考えさせられるものでした。本日は、先週 …

【米国株】‌米国の雇用は本当に強いのか?それとも弱いのか?株価に与える影響大【3/11 マーケット見通し】

【米国株】‌米国の雇用は本当に強いのか?それとも弱いのか?株価に与える影響大【3/11 マーケット見通し】

先週金曜日、アメリカの雇用統計が発表されました。それ以外にも、先週は、JOLTSやISM非製造業の雇用など、雇 …

【米国株】‌堅調な米国株式相場。目先の市場リスク要因は?【3/4 マーケット見通し】

【米国株】‌堅調な米国株式相場。目先の市場リスク要因は?【3/4 マーケット見通し】

本日は堅調に推移する米国株式市場ですが、目先にある市場リスクについて考えてみたいと思います。 先週までの企業決 …

【米国REIT】‌商業不動産への懸念がある中、今後の米REITの見通しについて【2/26マーケット見通し】

【米国REIT】‌商業不動産への懸念がある中、今後の米REITの見通しについて【2/26マーケット見通し】

本日は、米国REITを取り上げます。ここ最近はアメリカの株式市場が強く、債券やREITへの注目が薄れがちです。 …

【米国株】‌米国投資家が2024年に債券投資を検討しておくべき理由【2/19 マーケット見通し】

【米国株】‌米国投資家が2024年に債券投資を検討しておくべき理由【2/19 マーケット見通し】

本日のテーマは、『米国株投資家が2024年に米国債投資を検討しておくべき理由』です。 昨年から今年にかけて、米 …

【米国株】‌節目を突破したS&P500。このような時こそ注意しておきたい2つの死角【2/13 マーケット見通し】

【米国株】‌節目を突破したS&P500。このような時こそ注意しておきたい2つの死角【2/13 マーケット見通し】

本日のテーマは、節目を突破した強いアメリカの株式市場についてです。S&P500が5,000という節目を …

【米国株】‌上昇相場が続く中でトレンド転換の見定め方【2/5 マーケット見通し】

【米国株】‌上昇相場が続く中でトレンド転換の見定め方【2/5 マーケット見通し】

本日のテーマは、上昇相場が続く中でトレンド転換をどのように見定めるかについて見ていきたいと思います。 先週、注 …

おすすめ記事