【米国株】今年の夏相場は、「夏枯れ」か、それとも「サマーラリー」に突入か。

【米国株】今年の夏相場は、「夏枯れ」か、それとも「サマーラリー」に突入か。

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今年の米国株式市場は「夏枯れ」なのか、「サマーラリー」になるのか、とても難しい判断になってきました。本日は、今夏の米国株見通しをお伝えしたいと思います。

先週の相場概要

株式市場

まずは、先週の概要から見ていきます。株式市場でニューヨークダウ、ナスダック、S&P500、3指標とも一週間で言うとマイナスになっています。特に、金曜日の下げが大きかったイメージがありました。

下がってきた理由は、台湾のTSMCと言われるような、半導体大手の決算内容が先行き見通しがあまり良くなかったということで、半導体を中心としたSOX指数が低下したことがあります。そういったこともあり、VIXが18.5程度まで上昇、株価は軟調になってきているということで、方向感を失った状態が続いています。

米国金利動向

金利動向は、週末、10年金利が1.3%を切ってくるような展開になり、低下傾向が続いています。一番大きな内容としては、先週水曜日に開かれたパウエル議長の下院議員における議会証言において、ハト派的な発言が続いたというのが、最も大きな内容と思います。

一時期、30年米国債の入札で、あまり札が入らなかったことにより金利が上昇しましたが、それも一過性のものでした。現在は、金利低下の傾向が続いていると思われます。

金利が低下している大きな理由としては、バイデン政権において注目されていたインフラ法案がどうなるのか、まだ不確実なことがあります。

7月21日に上院下院で可決に向けた話を進めていくということで、まずは下院で民主党の草案を取っていきますが、どうなるかは不透明です。巨額の財政出動は伴わないということから、金利が少し低下傾向にあるというのは、間違いないでしょう。

経済指標

また、経済指標はまちまちでした。先週金曜日に発表された米国小売売上高とミシガン大学の消費者態度指数というものがありましたが、米国の小売売上高は好調、一方でミシガン大学の消費者態度指数はマイナスとまちまちでした。

米国小売売上高について
簡単に言うと、小売売上高は1992年以来の小売売上高の総量を示しているので、かなり好調です。自動車部品部門等は大きく下がっていますが、小売が支えた展開になり、かなり消費が伸びていることが確認できます。アメリカGDPの70%を占める消費ですから、大きなインパクトがあります。

ただ、冷静に考える必要があるのは、給付金が今後途絶えてくることです。給付金によるプラスのお金が残っている状態がいつまで続くかによって、消費の影響が大きいのではないかと言われています。今後、給付金が途絶えてきた後には、失業率の回復と賃金の上昇率が出てくることで、小売売上高が維持されることもあるかと思います。

また、給与が上がっていくことによって、インフレ率も影響してきます。今後の大きな注目点になってくると思うのは、賃金の上昇率と失業率だと感じています。

・ミシガン大学の消費者態度指数について
一方で、ミシガン大学の消費者態度指数は、内容があまり良くありませんでした。特に悪かったところでは、アメリカの住宅を買う段階ではないとコメントする人が多かったです。

例えば、自動車、住宅の購入については、1982年以来の慎重な見方が出ています。住宅購入環境がいいと答えた人は、わずか30%程度です。40年なかったレベルで、不動産を買いにくい状況になってきていると、分かったことになります。そのことから、これから住宅指標も注目になってきます。

7月16日、イエレン財務長官とパウエルFRB議長が非公式の住宅に関する会談を開きましたが、その内容はまだ伝わってきていません。しかし、この内容はとても重要です。ECBでも住宅を買いやすくする政策を取り入れるということなので、各中央銀行が自分たちの権限を越えて住宅価格について神経をとがらせるほど、海外では不動産が買いにくい状況になっているからです。

日本でも、東京都内では新築マンションの平均販売価格が1億円を超え、過去最高とも言われています。世界的に、所得に対して住宅価格が高騰していることをきっかけにして、いろいろな変化が起こり得るので、十分に注意して引き続き見ていきたいと思います。

今週の見通し

夏枯れの薄商いの状況が続いています。今週、大きな材料は出にくいでしょう。日本もオリンピックが始まり、視聴者が増えることを考えれば、おのずとマーケットは夏枯れになっていくでしょう。大きな材料がない限り動きにくいかと思います。

今週は特に住宅指標を中心に出てきます。動きがあるとすれば19日のNAHBの住宅市場指数や、6月住宅着工件数年換算が20日に発表されます。また、22日には中古住宅の販売件数が出ます。これらは、軒並み前月よりも良くなると予想されていますので、住宅指標が大きく崩れない限り、あまり動きのない一週間になるでしょう。

先週の株の動き

先週一週間で少し気になっているのは、VIXが3.5%まで上昇した以上に、Indexの上昇に対するGAFAMを中心とした下落が目立ってきていることです。金利が低いときの資金の受け皿になり、マーケット全体の雰囲気を明るくしていたのは、GAFAMでした。

ただ、このGAFAMの動きが少し鈍くなってきているのです。それは台湾半導体大手TSMCの業績見通しが少し強くなさそうだということも影響しているのですが、マーケットの流れが停滞してきています。

中期的な相場見通しについて

商いが薄くなって停滞している中で、何か悪い材料が出ると下がりやすいという状況が続いていきますが、次に中期的にどうなのかを見ていきます。ベースシナリオとしては、いくつかの点に注目する必要があります。

アメリカ4~6月決算は堅調

一つ目は、アメリカの決算は4~6月期でいい数字が出るということです。4~6月期S&P500前年同期比の決算は、72%の増益が予想されています。去年かなり悪かったエネルギーセクターを除いたとしても、かなり好調で、58%ほど上がると、かなり好調な内容になるでしょう。

既に今月に入って発表済みの41社も、予想を90%が大きく回っています。今期もかなり決算が良さそうだということで、今後のガイダンスが良ければ、EPSの伸びは堅調に推移し、株価は支えられそうです。

原油価格は安定

二つ目のポイントは、原油価格の安定です。

一つ目の観点は、アメリカでシェールガスの発掘リグの稼働率が、2018年の800機には及ばないものの、先週484機まで増えていることにあります。これは2020年4月以来の上昇です。

発掘機械の稼働増は、シェールオイルを発掘しても売上見通しが立つことになり、世界的な石油需要の回復が確認できることになります。

リグが稼働することで、シェール企業は利益が出ます。利益が出ることで、発行しているハイイールド債券のデフォルト(倒産)可能性が下がることで、ハイイールド債券の利回りが下がっていることを正当化できます。ハイイールド市場へのマイナスの影響がないということで、プラスになるでしょう。

二つ目が、7月17日に発表された、石油の供給量を12月まで段階的に戻していこうという、OPECプラスでの合意です。ここにはロシアも入っていますので、もめる可能性が少し減り、原油供給量が確実に増えていくことになります。

また、2022年夏以降、ロシアやサウジも含めて増産に入っていきます。原油価格が上昇する基調は消費回復に伴い増えていきますが、恐らく適切な価格を維持するでしょうから、原油を発端としたインフレは考えにくい状況に落ち着き、プラス材料になるでしょう。

資金供給量(M2)は引き続き増加

アメリカの資金供給量(M2)は引き続き増えています。M2が増えている間は、株価が下がるとお金がだぶついている状態になり、バリエーション的に債券が低くなります。そういった意味では、株に対する割安感が出てきていることになります。実際には割安ではありませんが、債券と比較するとお金が行きやすくなり、株が崩れにくい状況が続きそうです。

ISM製造業指数も好調を維持する見通し

先週発表されたニューヨーク、フィラデルフィア連銀の製造業景況指数は、8月頭に発表されるISM製造業指数の先行指標です。こちら、中身はまちまちでしたが、来月のISMも60を超えてくると、かなり好調を維持しそうです。製造業のピークアウトが近いと言われているものの、まだピークアウトの時期が明確になっていないということで、中期的にはプラス材料と言えます。

イールドカーブも大きなマイナス要因にはなりにくい

次に、アメリカのイールドカーブです。長期金利が1.29%下がってきていますが、短期の上昇もある程度限定的です。イールドカーブが寝てきてはいますが致命傷になるような逆イールドや、よりフラットニングが進むという状況でもありません。これも大きなマイナス材料にはなりにくいでしょう。


また、今週22日、事前に発表されていますが、ECBが「中期で対照的な2%の金融政策に持って行く」と言っています。インフレが2%を少し超えた状態で、すぐに引き締めるようなことはないということで、今までの指数よりハト派的なものとなります。かなりヨーロッパの景気に対して懸念感を持っていて、よりお金を供給していこうと、ECBが改めて示したことで、アメリカ・ヨーロッパ・日本もまだまだ出口は遠いことになり、株価にとってはプラス材料と言えます。

中国は緩和姿勢へ

次に、7月9日に中国準備金率が0.5ポイントも引き下げました。6月まで引き締めムードがあった中、7月に入って態度を変更し、緩和姿勢を示していることになります。そういったいくつかの材料から見ても、中期的にはプラスと言えるでしょう。

本日のまとめ

今週から夏枯れ相場になり、夏まで大きな材料が出にくい状況になってきています。恐らくジャクソンホールまで大きな金融政策についての言及はなさそうだと、マーケットは捉えています。

財政に関しても7月21日、下院議員を中心にどうやってインフラ法案を通していくかの議論が行われます。こちらがプラスになれば金利は上がりますが、これもまだ不透明感が漂っていて、なかなか動きにくいでしょう。

ただし、中期的に見れば原油価格の安定、M2という資金供給量が増える一方であり、ECBと中国が緩和態度を取っていること、アメリカの企業決算も良かったことを考えれば、相場は崩れにくい状況です。サマーラリーとまでは言いませんが、夏場が仕込み場ということで、マーケットの悲観度合いが高まっている中、仕込んでくる年金基金が増えてくる可能性があります。そういった意味では、今のところ大きく崩れるような条件はないでしょう。

ただ、この中期シナリオをしっかりと持ちながら、インフレや雇用状況、賃金上昇を伴わなければ、小売売上高が示したような景気悪化につながっていきます。指標をしっかり確認しながら、夏の相場を見ていくのがいいでしょう。

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