中国の経済指標が減速。中国株ETF(FXI)、新興国ETF(VWO)への投資タイミングについて

中国の経済指標が減速。中国株ETF(FXI)、新興国ETF(VWO)への投資タイミングについて

超保守的な資産管理チャンネルで配信中

8月16日月曜日発表された中国経済指標の内容があまり良くありませんでした。経済の先行き不安や中国株価が下落が懸念される状況になってきました。

今回は、現在中国株、もしくは新興国のETFをお持ちの方はどうすればいいのか、また、これから押し目として投資をするタイミングなのかと考えている方も多いのではないかと思います。中国は世界で2番目の経済大国ですので、米国株とセットで持っている方がどうすればいいのかについてもお伝えしたいと思います。

中国の景気減速が鮮明に

こちらは、ブルームバーグの記事から取り上げたものになります。

7月小売売上高は前年同月比8.5%増。伸びてはいるものの、市場予想の10.9%を大きく下回っています。6月が12.1%増だったことを考えると、かなり減速感が出てきています。

また、中国は工業大国です。その工業生産も前年同月比6.4%と予想の7.9%を下回っています。固定資産投資や失業率も内容が悪くなっていますので、中国経済の減速感が強まっています。

中国経済が減速することで、株価がどうなるのかと不安に思う方も多いのではないでしょうか?

中国株は”Sell”の対象へ

こちらはバンクオブアメリカの資料で、今後の取引について機関投資家に確認したものになります。濃い青が今年8月、薄い青が7月を指しています。どういう投資を行いたいかを表したものですので、傍線が長いほどやりたい人が多いことになります。

一番上の米国テクノロジー株を見ると、買いたい人が7月の25%から8月は45%に増えていることが確認できます。赤丸部分からは、短期中国株を空売りしたい人が増えてきていることが読み取れるとお考え下さい。

7月時点では0だったのが、8月に入って売りたいと考える人がこれだけ増えているのです。経済指標の悪化に伴い、中国株を売ろうとする機関投資家が増えていることが分かります。

今後の株価下落の要因は?

こちらは、投資家が今後の下落要因になると考えるものについてです。インフレ、テーパリングが上位に入る中、5番目に中国の政策変換が入っています。

7月はこちらを挙げる割合が0%だったことを考えると、中国株の空売り同様、8月になって急に台頭してきたと言えます。

今まで懸念されていることが具体化してきていることになりますので、中国株を持ち続けていいのかと考える方も多いのではないでしょうか。

中国株ETF【FXI】

次に、単独保有よりも持ちやすい中国株ETFのうち、FXIのチャートを確認します。2004年10月5日以来の2005年12月以来を見ると、リーマンショック前に大きく上昇し、リーマンショックで下落、その後は緩やかに成長しています。

世界一成長率の高い国なので、株価が大きく上がっていますから、中国株を今持っている方も多いでしょう。今年に入ってから大きく株価が調整していますから、買ってみたいと考える方もいるかもしれません。

FXI、ETFの中身について

次に、ポートフォリオの特徴です。PERが13.51倍と、米国S&P500の23倍と比べ半分程度と安く見積もられています。純資産倍率(PBR)は米国S&P500が4.7倍に対してPBR1.67倍と、持っている純資産に対して評価が低くなっています。

チャートが下がり、PER・PBRも安く見積もられていることから、投資チャンスと思う方も多いかもしれません。

ただ、ETF上位の銘柄にはアリババが8.95%、テンセントが7.75%と今一番話題になっているものが15~16%も入っています。今後このETFは厳しいのではないかとも思われます。

とはいえ、2022年成長率も6%を超えてくると予想されるように、アメリカよりも成長率が高く、2027~2028年には米国GDPに追いつくと言われるほどの大国です。今後の経済成長を考えれば、中国ETFを手放すべきというよりも、どういうリスク管理をしていくべきかを見ていきたいと思います。

FXIのリスクヘッジにはIEFが最適

IEFは米国7~10年国債を集めたもので、株に対するリスクヘッジに使えるとして重宝されています。今回、中国株に米国債を併せたのは、過去30年の相関関係を調べると、中国株が下がったときに上がる資産は米国債とアメリカドルぐらいで、他は正相関だからです。中国ETFを保有していて、値下がりを売却以外の方法で防ぎたいと考えた場合、逆相関のものを組み入れることが最適ですので、IEFを取り入れました。

IEFを取り入れたものとFXIのみを比較すると、FXIのみの青線は激しい動きをしています。一方、FXI50%、IEF50%の赤線はかなり安定感が増しています。2015年~2021年のリターンは、FXIのみが7.11%、50%ずつだと7.16%と、債券を組み入れた方がいいリターンになっています。

リスクは組み合わせたものが12.61%に対し、FXI単独が25.48%ですので、組み合わせるとリスクは半減し、リターンはわずかに上回ることになります。今後中国株を保有し続けたい方は、米国債をうまく組み合わせることで、リスクを抑えてリターンを維持できると言えます。

その背景には、逆相関のものを組み入れていることがあると覚えておいてください。

さらに、IEFを組み入れたポートフォリオは、中国株とS&P500よりも連動性がなくなります。もし中国株もS&P500の両方を持っているなら、債券を組み入れることでポートフォリオをより強固にできるのです。

Sortino Ratioの数字が大きいのは下落のときに強いことを指しますので、債券を入れたポートフォリオの方が下落に強いことが分かります。さらに、Max.D、年間の最も下落する点も34.67%までコントロールできることが確認できます。

ここから、中国株をお持ちの方は米国債ETFをうまく組み合わせることで、下落局面に備えられることが分かります。

FXIとIEFの組み合わせはS&P500との相性がいい

次に、FXI50%とS&P500のETFであるSPYを50%ずつ入れた青線と、FXI25%、IEF25%、SPYを50%というポートフォリオ赤線を比較しました。

すると、リターンはほぼ同じなものの、リスクが約7%近く軽減できると確認できます。下落に対する強さを表すSortino Ratioも、圧倒的にFXI、IEF、SPYを組み合わせたものが強いことが分かります。

ここから、中国の経済指標や先行きが不安定になってきている状況下では、S&P500も中国株も持っている場合、米国債を入れることで、ポートフォリオを強固にできることが分かります。

新興国株と中国株の相関性は高い

次に、こちらはEM(Emerging Markets)、DM(Emerging Markets)、つまり新興国と先進国を比べた場合、株価はどちらが割安に見られるかを表したものになります。

チャート下部の-34.2%というのは、先進国に比べ新興国の株価が安く見積もられている状態を指します。2004年、2008年、2012~2016年の新興国の評価が-30%になっている状態というのは、この後新興国の株が大きく上昇していくので、今が買い時とするレポートをよく見かけます。

しかし、皆さんに知っていただきたいことがあります。

新興国の株式を集めたETF、VWOというものがあります。VWOとFXI、中国の50銘柄を集めた大型株ETFを比較すると、中国株の下落が新興国の株の下落に先行することが分かります。新興国株と中国株の相関は82%程度なので、かなり高い相関となります。

その観点からすると、中国株の先行き見通しが悪い以上、新興国株は割安で放置されているものの、中国株につられて新興国株が下がる可能性がありますので、新たに新興国、中国株をポートフォリオに加えるのは、リスクが高いと言えます。購入を検討している方は、こちらのチャートを見ながら判断していただきたいと思います。

今日のまとめ

既に中国株、新興国の株を持っている方は、IEFが逆相関なので、最もポートフォリオを強固にしてくれます。ぜひ、米国債をうまく組み合わせることを検討してみてください。

また、米国株のS&P500と中国株を持っている方も、米国債を組み入れることでリスクがヘッジできることが分かりました。そちらも併せてご検討ください。

さらに、新興国の株は割安だから買いのタイミングだと考えている方は、新興国株に先行する中国株が下がっていくという情報がありますので、慎重に判断いただければと思います。

こういったことを参考にしていただきながら、買った方がいいと推奨されているものも冷静に分析し、投資判断をしていただければと思います。

続きを読む

「資産を守るために、着実な資産管理を」

ファミリーオフィスドットコムでは無料で⾃信で⾏っていただける資産管理から、
エキスパートによるオーダーメイド型の資産管理まで、様々なサービスを提供しています。

メディアでご紹介いただきました

関連記事

日米金利差が招く円安リスク〜日本経済への影響と日銀の舵取り〜 今後の見通しと注目ポイント

日米金利差が招く円安リスク〜日本経済への影響と日銀の舵取り〜 今後の見通しと注目ポイント

1990年6月以来、34年ぶりの1ドル=154円台に到達した力強い動きが続く米ドル円の今後の見通しは? [ 目 …

原油価格の高騰がインフレ再燃の引き金に?米国経済への影響は

原油価格の高騰がインフレ再燃の引き金に?米国経済への影響は

原油価格が再び上昇傾向にあり、米国を中心にインフレ再燃への懸念が高まっています。2022年後半から下落傾向にあ …

【米国株】‌‌米大手金融機関が決算悪化。今後への影響が大きそうだと思われる理由。【4/15 マーケット見通し】

【米国株】‌‌米大手金融機関が決算悪化。今後への影響が大きそうだと思われる理由。【4/15 マーケット見通し】

12日からアメリカの決算発表がスタートし、アメリカのJPモルガン、シティグループ、ウェルズ・ファーゴなど大手金 …

金価格が史上最高値を更新!急騰の背景と今後の見通しを解説

金価格が史上最高値を更新!急騰の背景と今後の見通しを解説

金(ゴールド)の国際価格が急上昇し、1トロイオンスあたり2,300ドルを超える史上最高値を記録しました。金は従 …

日経VI:今後の日経平均や株式市場への影響と注意点

日経VI:今後の日経平均や株式市場への影響と注意点

最近、中東情勢の緊張と原油価格の上昇によってリスクオフムードが高まり、日経平均ボラティリティ・インデックス(日 …

【米国株】‌今週末から米国企業決算が本格的にスタート。S&P500の現状分析と注目点。【4/8 マーケット見通し】

【米国株】‌今週末から米国企業決算が本格的にスタート。S&P500の現状分析と注目点。【4/8 マーケット見通し】

本日のテーマは米国株です。12日から米国金融機関を中心に、2024年度第1Qの決算発表がスタートします。 今年 …

【2024年最新】NISA口座開設・利用状況から見える投資家動向 

【2024年最新】NISA口座開設・利用状況から見える投資家動向 

2024年に入ってから、NISA(少額投資非課税制度)の利用が大幅に拡大しました。本記事ではまず、NISA口座 …

バブル期の高値を更新し、44%の上昇率を記録した日経平均株価:2023年度のマーケットを振り返る

バブル期の高値を更新し、44%の上昇率を記録した日経平均株価:2023年度のマーケットを振り返る

2024年4月から新年度に入りました。2023年度のマーケットを振り返ると、改めて日本の株式市場は記録的な1年 …

【米国株投資】‌なぜ今年は米国小型株に注目する人が多いのか?【4/1 マーケット見通し】

【米国株投資】‌なぜ今年は米国小型株に注目する人が多いのか?【4/1 マーケット見通し】

本日は、米国株投資を取り上げます。今年に入り、米国小型株、ラッセル2000に注目する人が増えています。最近は、 …

【米国債券投資】‌6月利下げの可能性が高まる中、利下げ開始後の債券ETF投資戦略について【3/25 マーケット見通し】

【米国債券投資】‌6月利下げの可能性が高まる中、利下げ開始後の債券ETF投資戦略について【3/25 マーケット見通し】

先週のFOMCを受け、6月の利上げ可能性が高まってきました。その影響で、今後の長期金利低下などが期待される中で …

【米国株】‌いよいよ米国経済に変調の兆し。3月FOMCが米国株へ与える影響に注意【3/18 マーケット見通し】

【米国株】‌いよいよ米国経済に変調の兆し。3月FOMCが米国株へ与える影響に注意【3/18 マーケット見通し】

先週の経済指標のいくつかは、アメリカの経済に、いよいよ変調の兆しがありと考えさせられるものでした。本日は、先週 …

【米国株】‌米国の雇用は本当に強いのか?それとも弱いのか?株価に与える影響大【3/11 マーケット見通し】

【米国株】‌米国の雇用は本当に強いのか?それとも弱いのか?株価に与える影響大【3/11 マーケット見通し】

先週金曜日、アメリカの雇用統計が発表されました。それ以外にも、先週は、JOLTSやISM非製造業の雇用など、雇 …

【米国株】‌堅調な米国株式相場。目先の市場リスク要因は?【3/4 マーケット見通し】

【米国株】‌堅調な米国株式相場。目先の市場リスク要因は?【3/4 マーケット見通し】

本日は堅調に推移する米国株式市場ですが、目先にある市場リスクについて考えてみたいと思います。 先週までの企業決 …

【米国REIT】‌商業不動産への懸念がある中、今後の米REITの見通しについて【2/26マーケット見通し】

【米国REIT】‌商業不動産への懸念がある中、今後の米REITの見通しについて【2/26マーケット見通し】

本日は、米国REITを取り上げます。ここ最近はアメリカの株式市場が強く、債券やREITへの注目が薄れがちです。 …

【米国株】‌米国投資家が2024年に債券投資を検討しておくべき理由【2/19 マーケット見通し】

【米国株】‌米国投資家が2024年に債券投資を検討しておくべき理由【2/19 マーケット見通し】

本日のテーマは、『米国株投資家が2024年に米国債投資を検討しておくべき理由』です。 昨年から今年にかけて、米 …

おすすめ記事