レイバー・デイ明け、NYダウが下落。9月以降、株価の上値が重たい理由。

レイバー・デイ明け、NYダウが下落。9月以降、株価の上値が重たい理由。

超保守的な資産管理チャンネルで配信中

9月6日はアメリカがレイバー・デーで3連休でした。明けた9月7日の夜、NYダウ、S&P50がマイナス、ナスダックはプラス。その背景は、3連休の間にゴールドマン・サックスの出したレポートや、それに絡むワシントンポストの記事が、マーケットの先行きに対して今後の不透明感を出したことがあります。

レポートの中身には、今後の経済見通しについてのコメントも入っていますので、それを確認しながら、今後のマーケットの参考にしていきたいと思います。

下方修正が続く経済見通し

ゴールドマン・サックスが経済見通しを下方修正

NYダウはマイナス0.76%、A&P500がマイナス0.34%、一方のナスダックはプラス0.07%と、ダウが一番大きく下がっています。

背景には、ゴールドマン・サックスが『A Harder Path Ahead(今後より困難な道がある)』という題名で、レポートを出したことがあります。GDP見通しを下方修正しました。

赤の棒グラフはコンセンサスでマーケットの中間値予想、青の棒グラフはゴールドマン・サックスの予想です。黄色矢印を確認すると、2021年第3クオーターの成長率は3.5%まで下がり、第4クオーターも予想を下回るとしています。

この発表は9月6日でしたが、その前に3回も予想を引き下げています。8月18日の1回目は、7-9月期のGDPを8.5%から5.5%へ大きく下げました。9月2日には7-9月期を5.5%から3.5%と、1カ月間で8.5%から3.5%まで大きく引き下げたのです。

さらに、レイバー・デーで休みの9月6日には、第4クオーター、10-12月期を6.5%から5.5%と、年後半のGDP成長が、予想よりも下回ってくるだろうと改めて示しています。

22年以降は引き続き高い予想になっていますが、こちらもいずれは下がってくると予想されるほど、ゴールドマン・サックスが思い切った引き下げを行いました。

可処分所得の減少が引き下げの背景

下げてきた背景は、可処分所得がアメリカの中で減ってきていることにあります。コロナ後急激に上昇した可処分所得は、夏までは移転所得という、政府から個人に対する生産活動の対価ではなく、給付しているもので支えてきました。 しかし、夏場以降それが少なくなり、来年以降効果が薄れてくることが、グラフで表されています。

濃い青線で示されたTransfer Income、政府支出によって個人が潤うことが、去年3月以降はずっと支えになっています。それが徐々に減り、可処分所得が平均9%上がっていたものが吸収されてきた状態となり、今後引っ張ってくるのは薄水色のLabor Income、働いて得た所得となります。つまり、今後消費が落ちてくるのではないかと、ゴールドマン・サックスは懸念しているのです。

もう一つの下方修正の背景は消費行動の変容

今後の消費は、ものの消費から通常のサービスへ移っていくとのことです。

左チャート、水色線が耐久財、2番目に濃い青線は非耐久財、一番濃い青がサービスを表します。今までは、ものを買う水色線と中間の青線が、夏場までグイグイと個人消費を引っ張ってきました。ものを購入する行為が、これからはいったん落ち着き、上昇が止まってきます。

一方、通常のサービスは増えてきます。これはコロナ感染者減少に伴い、徐々にサービスが増えてくることを表します。

とはいえ、ものの消費が落ちてくることで、消費全体が落ちてくることを表していたことが背景となり、GDPが落ちてくることを表しています。

前回記事でお伝えした、ミシガン大学の消費者信頼感指数、消費者信頼感指数が予想を大きく下回り、消費者が将来に対する疑心暗鬼を持つようになり、GDPの7割を占める消費が、今後落ちてくると、ゴールドマン・サックスが改めてレポートを出したことになります。

大事なポイントは、ゴールドマン・サックスはS&P500の年末予想を4700ポイントと、21の金融機関の中で一番高い予想値を出していたことです。そういった会社がGDPの下方修正を出すというのは、S&P500のターゲットプライスも下げてくるのではないかと、連想できます。

今、頼りにしているマーケット見通しとして、株高、急先鋒のゴールドマン・サックスのレポートを受け、いろいろな修正が入ってくるのではないか、また、他の金融機関もGDP見通しや株価レポートを下方修正するのではないかと、週末に回ってきたことで、レイバー・デーが明けた後、軟調になっています。

レイバー・デーは、日本の4月に当たります。新学期年度となりますので、改めていろいろなものを仕切りなおすこともあり、夏休みから戻った投資家が完全復活を火曜日から果たしています。彼らがS&P500やダウなどに対して、どういうふうに捉えていくかということで、若干下落しているのではないかと思います。

個人消費の落ち込みの影響は

ワシントンポストの記事が示した衝撃の事実

改めて確認する方法として、ワシントンポストの記事を確認します。

9月6日、アメリカが週に300ドル追加で出していた失業に対する特別給付金で、かなり個人の所得が潤っていたことを表したものになります。

黄色部分では、特別給付だった失業の週300ドルがマイナスになったと表しています。一方、仕事に戻って稼いだプラスは7ドルしかありません。300ドルを失って7ドルしかプラスになっていないため、実質、ほとんどお金が戻ってきていない状況となります。そのことから、右の青で示されるように、消費に回すお金がかなり減ってきて、170ドルほど下がってきている状況です。

こういった失業給付、300ドルプラスだった人が270万人分、9月6日に終わり、300ドルをもらえなくなった人たちの稼げる金額がとても減り、消費が減ってくるということが、改めてレポートで示されました。

これを見て、私はかなり驚きました。消費が落ちてくるというゴールドマン・サックスのレポートと整合性があると思いましたので、海外投資家も当然そう思ったでしょう。それが、今回のレイバー・デー明け、9月6日に失業給付が終わって下がってきた背景にあるかと思われます。

S&P500とNYダウの構成比の違いがパフォマンスに直結

NYダウとS&P500が、今回、なぜNYダウの下落率が大きくなっているかというと、GDPが落ちてくると、景気敏感株が落ちてくるからです。

NYダウの中でも大きな構成を占めている、青で示した資本財、消費者サービスでのGDPの落ち込みが影響しています。一方、S&P500はテクノロジーの割合がダウよりも5%近く大きいです。消費財も9.4%とS&P500が大きくなっています。これからインフラ投資案などで続いていく公共事業は3.3%となっています。

NYダウの方が景気敏感株が多いこともあり、NYダウの下げが強くなっています。一方で、ナスダックのようにテクノロジーが多いものは、企業収益の見通しから強くなっているというのが背景にあります。今後、GDP低下を予想するレポートが続くようであれば、よりNYダウがより売られやすくなるかと思います。そこは念頭に置いていただければと思います。

モルガン・スタンレー 米国株アンダーウェイトへ

モルガン・スタンレーが、週末に米国株をアンダーウェイトにすると言いました。アンダーウェイトとは、今持っているものを売ってもいいということです。

ゴールドマン・サックスと並ぶ大きな金融機関のモルガン・スタンレーが、ヨーロッパと日本株は買いだけれども、米株は売り、新興国はステイと言っています。かなり多くの金融各社が米株の割高感を懸念し始めているということで、注意を持って見ていただければと思います。

今後の見通しについて

リーマンショックが起こったのも9月です。新しく年度が替わったことでいろいろなことが起こりやすいのが、9月の特徴です。9月は元々、アノマリー的に株価が下がりやすい傾向がありますので、しっかりと債券ETFを保有する、年金ポジションを持つといった準備が必要かと思います。

また、9月は一番問題になるのが議会です。議会でいろいろな交渉が起こってきます。例えば、3.5兆ドルのインフラ法案と言われる新型のファミリープランの法案や、9月27日までに可決しなくてはならないと言っている、5500億ドルの元祖インフラ法案があります。

また、米国債務上限問題という、国債を発行できる金額上限を引き上げるかどうか、延長するかどうかの交渉も、10月に入る前にやらないと、国債が発行できない状態になるのではないかとも言われています。また、22年度予算も作らなければなりません。

今後議会において、いろいろな交渉が共和党、民主党で起こってきます。今、日本の政治がすごく動いている状態なので、そちらの方に注目が行きがちですが、実は米国議会もすごく熱く燃えるように交渉をしている状況です。

法案が通らなくなったり、変更になったり、いろいろな交渉があったりしてくると、想定外のことも9月の問題として起こる可能性があります。ぜひ、そういうことが起こりやすいと思っていただければと思います。

また、小売が落ちてくる、消費が落ちてくるということを、先ほどお伝えしました。9月16~17日までは小売統計や、ミシガン大の消費者信頼感指数は発表がありません。10日近く マーケットの中で勇気づけられる材料が出にくいですから、しっかりとマーケットを見ながら、今後の状況を見ていただければと思います。今後の消費、小売動向に注目していただければと思います。

続きを読む

「資産を守るために、着実な資産管理を」

ファミリーオフィスドットコムでは無料で⾃信で⾏っていただける資産管理から、
エキスパートによるオーダーメイド型の資産管理まで、様々なサービスを提供しています。

メディアでご紹介いただきました

関連記事

メガテック銘柄大幅安!景気減速と利下げ観測で変わる投資の潮流~セクターローテーションは今後も続く?

メガテック銘柄大幅安!景気減速と利下げ観測で変わる投資の潮流~セクターローテーションは今後も続く?

7月24日のナスダック総合株価指数は前日比3.6%安となり、2022年10月以来、約1年9カ月ぶりの下落率を記 …

バイデン大統領の不出馬表明で一変する米大統領選~今後もトランプ・トレードは続くのか?

バイデン大統領の不出馬表明で一変する米大統領選~今後もトランプ・トレードは続くのか?

7月は、米大統領選の構図が大きく変わりました。民主党のバイデン大統領は11月の大統領選に出馬しないことを表明し …

ユーロ円、高値更新後の行方は? ECBの利下げ観測と米大統領選の影響

ユーロ円、高値更新後の行方は? ECBの利下げ観測と米大統領選の影響

欧州中央銀行(ECB)は18日、主要政策金利を据え置き、市場の予想通り9月までの様子見を決め込みました。市場の …

米小売売上高は予想外の堅調さ~コントロールグループが牽引

米小売売上高は予想外の堅調さ~コントロールグループが牽引

  6月結果 市場予想 前回 米小売売上高 0.00% -0.30% 0.30% 米国の6月小売売上高が7月1 …

【米国株S&P500】‌‌S&P500は今後どうなるか?警戒すべき市場経験則【7/16 マーケット見通し】

【米国株S&P500】‌‌S&P500は今後どうなるか?警戒すべき市場経験則【7/16 マーケット見通し】

米国株式のS&P500は、絶好調な状況が続いています。本日は、この状態で注目すべきS&P500 …

総合CPIは前月比でコロナ以来のマイナスに~今後のドル円に与える影響は?

総合CPIは前月比でコロナ以来のマイナスに~今後のドル円に与える影響は?

米CPI 6月結果 市場予想 総合CPI前年同月比 3.0% 3.1% 総合CPI前月比 -0.1% 0.1% …

米企業決算が本格化!注目の企業は?S&P500の予想EPSの見通しは?

米企業決算が本格化!注目の企業は?S&P500の予想EPSの見通しは?

7月10日のS&P500種株価指数は7営業日続伸となり、初めて5,600を上回りました。ハイテク株比率 …

【第3回】ファミリーオフィス型、絶対に知っておくべきポートフォリオ戦略 〜ポートフォリオ戦略の極意・長期・積立・分散投資の重要性〜

【第3回】ファミリーオフィス型、絶対に知っておくべきポートフォリオ戦略 〜ポートフォリオ戦略の極意・長期・積立・分散投資の重要性〜

多くの富裕層が、より効果的な運用方法を求めて日々悩んでいます。本記事では、富裕層のためのポートフォリオ戦略、特 …

【米国株】‌‌米国の景気減速傾向がさらに強まる中、まだ楽観論の継続で本当に大丈夫か?【7/8 マーケット見通し】

【米国株】‌‌米国の景気減速傾向がさらに強まる中、まだ楽観論の継続で本当に大丈夫か?【7/8 マーケット見通し】

本日のテーマは米国株です。先週1週間、ISMの製造業指数やISM非製造業指数、雇用に関する多くの経済指標が発表 …

6月の米雇用統計は失業率が4.1%に悪化~サーム・ルールのシグナルが点灯?

6月の米雇用統計は失業率が4.1%に悪化~サーム・ルールのシグナルが点灯?

 米雇用統計 6月結果 市場予想 非農業部門雇用者数 20.6万人増 19.0万人増 失業率 4.10% 4. …

米景気の先行き不安広がる〜ISM製造業・非製造業ともに50を割れ込み、週末の雇用統計に注目〜

米景気の先行き不安広がる〜ISM製造業・非製造業ともに50を割れ込み、週末の雇用統計に注目〜

ISM景気指数(製造業・非製造業)   結果 市場予想 前回 製造業 48.5 49.1 48.7 非製造業 …

【第2回】ファミリーオフィス型、絶対に知っておくべきポートフォリオ戦略 〜ゴールベース運用・資産を守りながら増やす資産運用戦略〜

【第2回】ファミリーオフィス型、絶対に知っておくべきポートフォリオ戦略 〜ゴールベース運用・資産を守りながら増やす資産運用戦略〜

富裕層にとって、資産運用は一層重要な課題です。そして、安定したリターンを確保しながらリスクを適切にコントロール …

サマーラリーと夏枯れ相場~投資家が知っておくべき夏季市場の動向と大統領選挙年の傾向

サマーラリーと夏枯れ相場~投資家が知っておくべき夏季市場の動向と大統領選挙年の傾向

サマーラリー(Summer Rally)は、株式市場におけるアノマリーの一つで、特に夏季に株価が上昇しやすい現 …

【第1回】ファミリーオフィス型、絶対に知っておくべきポートフォリオ戦略 〜リスクとリターンのバランス・富裕層が考えるべき投資戦略〜

【第1回】ファミリーオフィス型、絶対に知っておくべきポートフォリオ戦略 〜リスクとリターンのバランス・富裕層が考えるべき投資戦略〜

富裕層の投資戦略において、リスクとリターンのバランスを考えることは大切です。適切なポートフォリオを構築すること …

PCEデフレーターと金価格:インフレ率とFRB政策の影響を探る

PCEデフレーターと金価格:インフレ率とFRB政策の影響を探る

PCEデフレーターは、米国の個人消費支出(PCE)の価格変動を測定する重要な経済指標です。特に、食品とエネルギ …

おすすめ記事