スタグフレーション懸念。今後のS&P500に対するマイナスの影響を分析。

スタグフレーション懸念。今後のS&P500に対するマイナスの影響を分析。

超保守的な資産管理チャンネルで配信中

本日はスタグフレーションについてです。最近、ニュースや記事等でスタグフレーションという言葉を頻繁に見かけます。

1960年以降のスタグフレーションを分析

過去スタグフレーションが起こったときに、株価がどのような影響を受けたのか。今後スタグフレーションに対して株価がどうなるのかを分析します。

スタグフレーションにおいて株価がどうなったか。ゴールドマン・サックスが1960~2020年にかけて分析したものを確認しましょう。

この図は60年間の四半期平均リターンを表しています。いちばん左はのリターン (青い棒グラフ)が2.5%。ボラティリティ(青丸)は12.2~12.3%となっています。これは、過去平均を表しています。

左から二番目が経済の鈍化時(Slow growth)です。四半期で-0.5%のリターン。

左から3番目の物価上昇時(High inflation)には-0.6%リターンです。

最後にいちばん右がスタグフレーション(Slow growth and high inflation)では-2.1%のリターン。年換算では-8.4%。かつ、ボラティリティは最も高い13%近くです。

経済が悪くなり物価が上がるスタグフレーション下では、年換算で8.4%もS&P500パフォーマンスが下がり、ボラティリティが上がっていました。株価を敬遠する必要があるのではと最近話題になっているのは、ここが原因です。

10月12日に発表されたIMF世界経済見通しでは、世界経済見通しを下方修正しました。米国経済も7%から6%へ。2021年度見通しを下方修正しています。6%は暫定的なものです。インフラ法案など4兆ドル程度の決議が通らない、もしくは縮小すれば、成長率はさらに下がるとしています。

ゴールドマン・サックス証券も2021年、2022年米国経済を下方修正しました。アトランタ連銀GDPNowは、7-9月期GDPを年換算で-1.3%としています。

経済見通しがかなり暗さを増している状況で、10月13日CPI物価発表があります。こちらも5.3%が予測されるなど4月以降物価上昇が続いている状態ですから、スタグフレーションのような状態ではないかと懸念されているのです。

スタグフレーションについて

スタグフレーションの定義は平均GDP成長率-0.5%を6カ月継続し、インフレ+0.5%が6カ月続いた状態です。

これが起こったのは1970年代と1980年代で、2000年以降は一度も起こっていません。スタグフレーションは過去のもので、なかなか実感がわかない。株価実績は過去のもので、使えないのではないかと考える方も多いのではないでしょうか?

確かに、スタグフレーションに現段階ではなっていません。来年のインフレ見通しも2%台で推移すると言われています。スタグフレーションの基準を満たすには、過去の物価平均上昇が2.8%ですから、3.3%を1年間で達成する必要があるにも関わらずです。

インフレーションサプライズインデックスとエコノミックサプライズインデックスが今後の株価を示唆

定義上のスタグフレーションになるかどうかはこのように考えたとして、他に類似した状況を表すものはないのでしょうか。株価予想に使えるのではないかと思われるインフレーションに関するサプライズINDEX、経済に対するサプライズINDEXを確認してみましょう。

上のチャート、水色線がインフレーションのサプライズINDEX。濃い青線がエコノミックサプライズINDEXです。水色が上に抜けているのは、予想よりも多くのインフレ数値になっていること。濃い青線が下に行くのは、経済見通しよりも悪い数字が出ていることを表します。つまり、水色が上に、濃い青線が下に行く状態がスタグフレーションだと言えます。

同じことが起きた2008年。下のチャート灰色線で示した世界株価指数(MSCI World)を見れば、前年対比で大きく下落しています。現在、エコノミックスサプライズINDEXは下降し、インフレサプライズINDEXが過去にないほど上昇。このまま悪化すれば、2008年と同じく株価が大きく下落することを表しています。

しかも、サプライズINDEXが悪化したとき120日遅れて株価が下がることが、下のチャートから分かります。

このことから今後約4カ月後に株価が下がってくる可能性が、インフレーションのサプライズINDEX、エコノミーのサプライズINDEXからは表されていると言えます。必ず当たるとは言えません。しかし、経済が鈍化しインフレが上回れば、疑似的に、過去スタグフレーション時に起こった株価下落を再現することとなります。そこで、かなり警戒感が高まっているのです。

終わりに

何となくインフレが起こりそう。何となく経済指標が悪い。そんなニュースを聞いても、株価にどういう影響があるかが分かりにくかったかと思います。しかし、このようにインフレが進む中で経済が鈍化するまれなケースでは、確実に株価が悪影響を受けると言われています。

ですから、今までのように経済見通しが悪くなっても金融政策で何とかなるという考えは、変える必要があります。インフレーション下においては、金融政策はなかなか働きません。経済鈍化は、そのまま株価に大きな影響を与える可能性があります。

GDPの発表、各指標、インフレーションに関する指標は注目が必要です。特に10月13日に発表されるCPIが予想の5.3をさらに上回れば、サプライズINDEXにマイナス作用をもたらします。注目しつつ、リスク管理を高めていただければと思います。

続きを読む

メディアでご紹介いただきました

関連記事

【米国株】上昇が続くNASDAQ指数。死角はないのか?【5/31 マーケット見通し】

【米国株】上昇が続くNASDAQ指数。死角はないのか?【5/31 マーケット見通し】

本日は、今年に入り堅調な上昇を続けているNASDAQについてお伝えします。5月になっても月間で6%を超える上昇 …

【米国株】ビッグテック大幅高。今後の注目ポイント!【5/29 マーケット見通し】

【米国株】ビッグテック大幅高。今後の注目ポイント!【5/29 マーケット見通し】

26日、PCE価格指数や、個人の消費に関する指標が発表されました。今後の金融政策への影響についてお話しします。 …

【米国株】年内の利下げ予想が低下。これは株価にプラスなのか、マイナスなのか。【5/26 マーケット見通し】

【米国株】年内の利下げ予想が低下。これは株価にプラスなのか、マイナスなのか。【5/26 マーケット見通し】

本日は、FRBの政策金利についてお話しします。今までは、年内に政策金利の引き下げがあるのではないかという市場の …

【米国株】現在のS&P500のバリュエーションについて。金利上昇の影響は?【5/24 マーケット見通し

【米国株】現在のS&P500のバリュエーションについて。金利上昇の影響は?【5/24 マーケット見通し

今週バンク・オブ・アメリカのストラテジストが、年末のS&P500の予想を4300ポイントに上方修正しま …

【米国債券】ハイイールド債券。今年は不調も、今後上昇に転じるのか。【5/19 マーケット見通し】

【米国債券】ハイイールド債券。今年は不調も、今後上昇に転じるのか。【5/19 マーケット見通し】

今週に入っても、アメリカの株式市場は上昇を続けています。その背景には、アメリカの債務上限問題が今週末に決着もし …

【米国株】注目の米小売売上高。今後のマーケットへの影響について【5/17 マーケット見通し】

【米国株】注目の米小売売上高。今後のマーケットへの影響について【5/17 マーケット見通し】

今週一番の注目材料である、アメリカの小売売上高が16日に発表されました。アメリカではGDPに占める消費が7割で …

【米国株】米国債務上限問題。2011年のケースから今後の株価への影響について【5/12 マーケット見通し】

【米国株】米国債務上限問題。2011年のケースから今後の株価への影響について【5/12 マーケット見通し】

本日は、米国の債務上限問題についてお伝えします。さて、今週に入り注目のCPIやPPIの発表がありました。一時期 …

【米国経済】米銀行の貸出態度調査から見えてきた今後の米経済動向【5/10 マーケット見通し】

【米国経済】米銀行の貸出態度調査から見えてきた今後の米経済動向【5/10 マーケット見通し】

10日には、注目のCPIを控えていますので、5月8~9日はあまりマーケットの動きがありませんでしたが、そんな中 …

【米国株】決算通過後、S&P500の予想EPSが上昇。今後の株価見通しについて【5/8 マーケット見通し】

【米国株】決算通過後、S&P500の予想EPSが上昇。今後の株価見通しについて【5/8 マーケット見通し】

5月5日までにS&P500の85%の企業が決算発表を終えました。マーケットの事前予想がかなりネガティブ …

【米国株】景気後退局面で有望な米国株の選び方【4/14 マーケット見通し】

【米国株】景気後退局面で有望な米国株の選び方【4/14 マーケット見通し】

12日、3月のFOMC議事要旨が発表されました。議事要旨の発表において、FRBスタッフが年内のリセッション入り …

【米国株】企業業績に先行する米中小企業の景況感について【4/12 マーケット見通し】

【米国株】企業業績に先行する米中小企業の景況感について【4/12 マーケット見通し】

今週に入り、株式市場の値動きが少なくなっています。CPI、FOMC議事用紙の発表、14日に金融機関からスタート …

【米国株】相場転換点のシグナル、米失業率の今後の動向に注目【4/10 マーケット見通し】

【米国株】相場転換点のシグナル、米失業率の今後の動向に注目【4/10 マーケット見通し】

4月7日、マーケットで注目されていた雇用統計が発表されました。雇用統計の中身を見ると雇用者数、失業率の低下と、 …

【米国株】ISM製造業指数の低下が、S&P500の予想EPSに与えるマイナスの影響はどのくらいか?【4/5 マーケット見通し】

【米国株】ISM製造業指数の低下が、S&P500の予想EPSに与えるマイナスの影響はどのくらいか?【4/5 マーケット見通し】

今週に入り、米株式市場が軟調に推移しています。その背景には、3日発表されたISM製造業景況感指数の結果が予想を …

【米国株】次の株価の転換点。決算シーズンに注目する理由【2023/4/3 マーケット見通し】

【米国株】次の株価の転換点。決算シーズンに注目する理由【2023/4/3 マーケット見通し】

今年に入り、早くも3ヶ月が過ぎました。第1四半期が終わ理、S&P500は約8%の上昇、NASDAQは約 …

【米国株】FRBが中堅銀行への規制強化へ。経済や株価への影響が大きくなりそう

【米国株】FRBが中堅銀行への規制強化へ。経済や株価への影響が大きくなりそう

3月14日の株式市場は上昇しています。CPIが無事に通過したことに加えて、前日まで銀行株が大幅に売られていたと …

おすすめ記事