【相続税】自社株評価を下げる方法、上場株の相続申告におけるポイント

【相続税】自社株評価を下げる方法、上場株の相続申告におけるポイント

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渋谷:本日は、私たちのエキスパートとして登録をされている、税理士の峯本税理士先生にお聞きします。よろしくお願いします。

峯本:よろしくお願いします。

渋谷:前回まで、小規模宅地の特例のお話を聞いてきました。

保有株式の相続対策

投資として株式を保有されている方や、ご自身で会社を経営されていて自社株を持っている方が相続対策で、どう株を扱えばいいのかという相談を頂くことも多いです。

株の時価評価をうまくコントロールするアイデア、実例など、面白いエピソードはありますか?

上場株の評価

峯本:上場株の評価は亡くなった日の終値、あるいはその月の平均以外にも、前月と前々月の平均値が取れます。相続時には無理ですが、株をたくさん持っている方が生前贈与するケースでは、前々月に半分以下で急激に株が上がった場合、前々月の株価が取れます。

大きく株価が上がり、このまま持っているとそのまま上がり続けると相続税がかなりかかってしまう場合は、前々月の株価で贈与することで低い価格で贈与できます。

渋谷:前々月、前月、今月、亡くなったときの終値というのは、ご自身で選ぶことができるのですか?

峯本:選択できます。

渋谷:一番安いところを皆さん選びたくなると思いますが、それが可能なのですか?

峯本:申告する表でも、前々月、前月、その日、その月の株価を書き、一番低い価格を選択することになっています。

渋谷:亡くなったとき、証券会社に残高証明書や時価評価をもらうと思います。そのとき、2カ月前と先月と今月の分がセットで送られてくるのですか?

峯本:送られてきません。そのときの終値でしかありませんので。東京証券取引所のホームページには、全銘柄、月の終値平均値が出ていますので、私たち税理士が申告するときには、そこのページの数字を使って申告します。

渋谷:東証の数字であれば、証拠として十分に税務署が認めてくれるということですね。先生に頼まずご自身で申告するときには、自身でサイトに行って、一番安いものを選んで問題ないということですね?

峯本:そうです。

渋谷:他に上場株で時価評価を下げるものはありますか?

相続時精算課税

峯本:上場株は株価コントロールができませんので、贈与で渡すケースと、相続時精算課税という贈与の仕方もあります。生前に贈与し、最終的には相続が起こったときにその資産を戻し、相続税を計算することになります。

相続時精算課税のいいところは、相続時精算課税で贈与された時点の株価が使えることです。株価がずっと上がり続ける株については相続時精算課税を使えば、相続時に戻されてしまいますが、贈与より先に戻す方法を使うケースがあります。

渋谷:今のケースは上がっていったときにメリットがある話でした。しかし、残念ながら下がってしまうケースもあるかと思います。この場合、どういう評価になるのですか?

峯本:相続時精算課税で下がった場合、贈与してしまっているので駄目です。普通に贈与した場合でも、どうにもなりません。ただ、お父さんに1回戻して、また株価が上がりそうだったら戻してもらうのもいいかもしれません。

渋谷:結構大変ですよね?

峯本:はい。

渋谷:明らかに上昇することが分かっている株ならばいいでしょうが、そうではないリスクもあるということですね。

自社株の相続対策

もう一つ。テーマを変えて未上場の自社株の話を。オーナー企業の方も結構多いと思いますが、自分の会社の株式の評価を下げる手法は何かありますか?

峯本:一般的には相続会社の株価評価は、資産と負債を引いた純資産で評価する方法と、税務署が出している、この業種は大体これぐらいの利益があるという指標があり、そことどのくらいの乖離があるか。その指標よりも多く利益が上がっているところは、ある業種の利益額があり、そこから多くなった分だけ増やした金額を合わせた評価方法をします。

準資産価格が下がれば、おのずと株価は下がります。資産を減らすか、負債を増やす方法があります。資産と負債は相続税評価額となります。相続税評価額で下がるような資産に入れ替えたりします。

相続評価を下げる資産

渋谷:例えば、どういった資産がいいのですか?

峯本:やはり不動産が使われることが多いです。

渋谷:不動産というのは、いわゆる事業用に使うというより、投資用の形でも持つことも含めてですよね?

峯本:自社ビルとして買うケースもあります。今まで賃貸で借りていたのですが、資金が結構あるので家賃を払うのがもったいないというのと、あえて1億円の現金で自社ビルを買うことで評価を下げることもできます。不動産の場合、1億円が1億円の評価ではありませんから。

渋谷:いいものを買わないと、評価を下げたつもりが価値も下がることも起こり得るわけですから。そういうケースは結構聞きますよね。

峯本:そうですね。バブルのときはまさにそうだと思います。2億円で買ったものが1億円になってしまうという。株も下がりましたが、地価も下がってしまったケースもあります。

渋谷:借入を起こして不動産を買うケースも結構多いと思いますが、そこら辺の注意が必要だということですね。

峯本:注意しなければならないのは、ほとんどを不動産が占めた場合、少し評価方法が変わってくることです。不動産特定会社や、株式特定会社があるので、不動産を保有する割合も注意しなければならないと思います。

もう一つ注意が必要なのは、不動産価値が下がると相続税評価額も下がることです。相続税評価の株価評価で資産側を評価するときは、買ってから3年がたたないと同族株の評価は買った値段で評価します。ですから、効果が出るまで3年が必要です。1~2年で大株主がガンになって近々亡くなる場合は、なかなか難しいです。

渋谷:きっちり3年ですか?

峯本:はい。買ってから3年です。

渋谷:例えば、6月1日であれば3年後の5月末となると?

峯本:はい。

渋谷:3年間の時間を考えなければならないのと、自社株を買って不動産割合が多くなると、不動産に特化した会社として税金率が別になることもあります。あれは80%でしたか?

峯本:大会社と小中会社で変わりますが、大体そのぐらいになります。

渋谷:目途としてはそのぐらいですが、自分で判断すると変わってくるので、細かくは専門家に相談をするという感じですか?

峯本:はい。

渋谷:本日はありがとうございました。

峯本:ありがとうございました。

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