NASDAQ続落。NASDAQ恐怖指数、VXN指数が示唆する今後のリスク

NASDAQ続落。NASDAQ恐怖指数、VXN指数が示唆する今後のリスク

超保守的な資産管理チャンネルで配信中

今週に入り下落幅が大きくなってきているNASDAQについて、本日は取り上げます。

11月25日、アメリカはサンクスギビングデーという休日ですが、これ以降はクリスマスシーズンに突入することで、商いが少し落ちてきます。

そういった中で、11月22~24日に米国債の発行などが集中したことで、かなり重要とマーケット関係者は見ていました。

S&P500やニューヨークダウが意外と堅調に推移する中、NASDAQだけ単独で弱い状況が続いています。

NASDAQと言えばビッグ・テックを含めたテクノロジー企業が多く含まれているので、今までのマーケットのけん引役が今後どうなるのか、注目されている方がかなり多いのではないかと思います。

NASDAQには、VXN指数という恐怖指数があります。これはS&P500におけるVIX指数と全く同じで、コールオプション、プットオプションというオプションの売り買い状況から、1カ月間のボラティリティがどうなるかを見るものです。

その指標が通常とは異なり、2020年8月と同じ動きをしていることから、マーケット関係者は警戒が必要だと強く考え、結果としてNASDAQの調子が悪くなっているとお考え下さい。

そのことを、パウエル議長の再任と実質金利と、VXN指数を絡めてお話ししたいと思います。

VXN指数とNASDAQの関係

VXN指数が上昇すると、NASDAQは下落するのが通常です。S&P500のVIX指数が上昇する際には、S&P500が下落することが多いのと同じです。

通常の動きとは異なるVXN指数

チャートの紫線がVXN指数、オレンジ線がNASDAQです。VXN指数が白線の用に上昇した局面では、青矢印で示したようにNASDAQが下落します。

懸念しているのは、今回はこのような動きをしていないことです。

緑の枠囲いで示した部分、右側から確認します。現状はVXN指数が上昇しているにもかかわらず、指標自体も上昇しています。この状況はまれなケースです。

同じことは、左側の枠囲い2020年8月にも起こっています。この局面では株価が大きく調整し、約15%NASDAQが下落しました。今回もこの2日間で2%少しのマイナスになっていますが、さらに大きく調整するのではないかと、マーケット関係者が警戒しています。

VXNが上昇してもNASDAQが下落しない理由

VXN指数が上昇しているにもかかわらず、なぜ指標は上がっているのでしょうか? 二つの理由が考えられます。

一つ目は、1本調子で上がっているマーケットに対し警戒感を高めているトレーダーたちが、デリバティブを使ってリスクヘッジをかけている、オプションを売ることで、恐怖指数が上がっているにもかかわらず株価が上がっている状態になっていると考えです。

二つ目は、今年も稼げるうちに稼いでおこうと、レバレッジを利かせてコールオプションを買っている投資家がいて、指数も上がり、ボラティリティも上がったという考えです。

同じことは2020年8月にも起こっていて、今回も同じではないかと言われています。

皆さんにぜひ知っていただきたいのは、恐怖指数が上昇しているときの指標上昇は、ボラティリティが上がる力の蓄えを表すということです。今後、指標の必ずボラティリティが上がると間違いなく言えます。

上昇か下落かの断定はできませんが、かなり値動きが激しくなることがオプションの状態から分かっており、要注意です。

米国実質金利とVXNの高い相関性

VXN指数が上がってくる確信は、オプション取引以外でも感じ取れます。

こちらは米国10年実質金利とVXN指数の相関性を表したものです。実質金利が上がると、恐怖数も上がっていることが確認できます。

11月9日に10年実質金利がマイナス1.17を付けていたのが、昨日ベースでマイナス0.95%まで急激に縮小していますので、VXN指数も上昇しています。

VXN指数は、本来30を超えると恐怖指数となります。まだその水準までいっていませんが、かなり高い水準まで来ていますので要注意です。

今後については、名目金利が上がったり、インフレ率が下がったりすることで実質金利のマイナス幅が縮小すれば、恐怖指数も上がる可能性があります。

パウエル議長が再任へ

11月23日、バイデン大統領が、次期FRB議長をパウエル議長に引き続きお願いすることを発表しました。ブレイナード氏には副議長を務めるという2人の体制で、今回は政治的に法案を通すことを優先して、予想通りの布陣で決めたとされています。

ただ、マーケットではブレイナード氏が就任するとの予測が急激に高まり、ハト派的に利上げを先送りしてくれるのではないかという期待がありました。その期待が裏切られたとして、10年金利は上がってきています。

パウエル議長の再任により、2022年利上げの可能性が上昇

ブレイナード氏が就任すると、利上げの可能性は先送りになると思われていたため、勝手な期待ではありますが、マーケットの期待を裏切る形となりました。

2022年に3回の利上げが行われるという予想に転じてきています。3回の利上げを予想する割合は93.7%まで上がっており、織り込みすぎかもしれないぐらいに利上げを織り込んでいます。結果10年金利が1.67%まで上がっています。

もう一つ、結果としてブレークイーブンインフレ率が低下してきています。金利を3回ほどステップアップすることで、今後はインフレ率が低下すると考えられ、ブレークイーブンインフレ率は2.65%まで下がりました。結果として10年実質金利がマイナス0.95%まで下げ幅を縮小しています。

こうなると、パウエル議長がインフレと戦う姿勢を示して来年以降金利を上げていき、テーパリング金額をさらに増額し、短い期間でテーパリングを終わらせるのではないかと考え、マーケットがかなりタカ派になる可能性があります。

そうなれば、恐らく名目金利は上昇し、インフレ率は下がってくることで実質金利幅は縮小するため、VXN指数は上がり、NASDAQの指標は少し逆風が吹く可能性があります。

22~23日まで、マーケットはそこを見込んだポジションを取ってきている可能性があります。

VXN指数が高い状態でクリスマス商戦に入り、マーケットが薄くなってくると、大きな値動きになることがあります。もしもNASDAQに大きくかけている方がいれば、そういった可能性があることを念頭に、ご自身に戦略を検討いただければと思います。

続きを読む

メディアでご紹介いただきました

関連記事

【米国株】年内の利下げ予想が低下。これは株価にプラスなのか、マイナスなのか。【5/26 マーケット見通し】

【米国株】年内の利下げ予想が低下。これは株価にプラスなのか、マイナスなのか。【5/26 マーケット見通し】

本日は、FRBの政策金利についてお話しします。今までは、年内に政策金利の引き下げがあるのではないかという市場の …

【米国株】現在のS&P500のバリュエーションについて。金利上昇の影響は?【5/24 マーケット見通し

【米国株】現在のS&P500のバリュエーションについて。金利上昇の影響は?【5/24 マーケット見通し

今週バンク・オブ・アメリカのストラテジストが、年末のS&P500の予想を4300ポイントに上方修正しま …

【米国債券】ハイイールド債券。今年は不調も、今後上昇に転じるのか。【5/19 マーケット見通し】

【米国債券】ハイイールド債券。今年は不調も、今後上昇に転じるのか。【5/19 マーケット見通し】

今週に入っても、アメリカの株式市場は上昇を続けています。その背景には、アメリカの債務上限問題が今週末に決着もし …

【米国株】注目の米小売売上高。今後のマーケットへの影響について【5/17 マーケット見通し】

【米国株】注目の米小売売上高。今後のマーケットへの影響について【5/17 マーケット見通し】

今週一番の注目材料である、アメリカの小売売上高が16日に発表されました。アメリカではGDPに占める消費が7割で …

【米国株】米国債務上限問題。2011年のケースから今後の株価への影響について【5/12 マーケット見通し】

【米国株】米国債務上限問題。2011年のケースから今後の株価への影響について【5/12 マーケット見通し】

本日は、米国の債務上限問題についてお伝えします。さて、今週に入り注目のCPIやPPIの発表がありました。一時期 …

【米国経済】米銀行の貸出態度調査から見えてきた今後の米経済動向【5/10 マーケット見通し】

【米国経済】米銀行の貸出態度調査から見えてきた今後の米経済動向【5/10 マーケット見通し】

10日には、注目のCPIを控えていますので、5月8~9日はあまりマーケットの動きがありませんでしたが、そんな中 …

【米国株】決算通過後、S&P500の予想EPSが上昇。今後の株価見通しについて【5/8 マーケット見通し】

【米国株】決算通過後、S&P500の予想EPSが上昇。今後の株価見通しについて【5/8 マーケット見通し】

5月5日までにS&P500の85%の企業が決算発表を終えました。マーケットの事前予想がかなりネガティブ …

【米国株】景気後退局面で有望な米国株の選び方【4/14 マーケット見通し】

【米国株】景気後退局面で有望な米国株の選び方【4/14 マーケット見通し】

12日、3月のFOMC議事要旨が発表されました。議事要旨の発表において、FRBスタッフが年内のリセッション入り …

【米国株】企業業績に先行する米中小企業の景況感について【4/12 マーケット見通し】

【米国株】企業業績に先行する米中小企業の景況感について【4/12 マーケット見通し】

今週に入り、株式市場の値動きが少なくなっています。CPI、FOMC議事用紙の発表、14日に金融機関からスタート …

【米国株】相場転換点のシグナル、米失業率の今後の動向に注目【4/10 マーケット見通し】

【米国株】相場転換点のシグナル、米失業率の今後の動向に注目【4/10 マーケット見通し】

4月7日、マーケットで注目されていた雇用統計が発表されました。雇用統計の中身を見ると雇用者数、失業率の低下と、 …

【米国株】ISM製造業指数の低下が、S&P500の予想EPSに与えるマイナスの影響はどのくらいか?【4/5 マーケット見通し】

【米国株】ISM製造業指数の低下が、S&P500の予想EPSに与えるマイナスの影響はどのくらいか?【4/5 マーケット見通し】

今週に入り、米株式市場が軟調に推移しています。その背景には、3日発表されたISM製造業景況感指数の結果が予想を …

【米国株】次の株価の転換点。決算シーズンに注目する理由【2023/4/3 マーケット見通し】

【米国株】次の株価の転換点。決算シーズンに注目する理由【2023/4/3 マーケット見通し】

今年に入り、早くも3ヶ月が過ぎました。第1四半期が終わ理、S&P500は約8%の上昇、NASDAQは約 …

【米国株】FRBが中堅銀行への規制強化へ。経済や株価への影響が大きくなりそう

【米国株】FRBが中堅銀行への規制強化へ。経済や株価への影響が大きくなりそう

3月14日の株式市場は上昇しています。CPIが無事に通過したことに加えて、前日まで銀行株が大幅に売られていたと …

【米国株】FRBが緊急対応策を導入。次の市場の焦点は?

【米国株】FRBが緊急対応策を導入。次の市場の焦点は?

3月10日(金)に米国のシリコンバレーバンクが経営破綻しました。マーケットは、週末にFRBと米財務省が、どのよ …

【米国株】金融機関への信用不安、新たなリスクの台頭に注意

【米国株】金融機関への信用不安、新たなリスクの台頭に注意

3月10日に雇用統計を控えています。そのため、9日の株式市場は様子見ムードが広がるのではと言われていましたが、 …

おすすめ記事