【相続税】生前贈与の具体的な活用事例

【相続税】生前贈与の具体的な活用事例

超保守的な資産管理チャンネルで配信中

渋谷:本日は私たちの税理士エキスパートとしてご登録いただいている、峯本先生にお話を聞いていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

峯本:よろしくお願いします。

生前贈与について

渋谷:今日のテーマは、私も個人的に聞いてみたいと思っていた生前贈与についてです。生前贈与はかなりうまく周りの方も活用され、次世代に資産を移している方も多くいらっしゃいます。

暦年贈与とは

例えば、一番有名なのは暦年贈与です。年間110万円を使っている方も多いと思います。それ以外にも生前贈与の手法があるでしょう。具体的にどのようなものをあるのか教えていただけますか?

峯本:制度としてあるのは、住宅借入金の贈与です。住宅資金を渡して、それで家を建てる場合について選ぶ贈与枠があり、それは110万円を超えて贈与額があります。

また、配偶者も同じような不動産贈与があります。結婚してからある一定期間が過ぎた場合、不動産の購入資金を配偶者が出した場合、一定の贈与額がございます。

渋谷:そういったものを使っている方も多いかと思いますが、勘違いして本当は適応がされなかったこともあると思います。どういったミスが起こりがちですか?

贈与における注意点

峯本:住宅資金も配偶者贈与もそうですが、贈与して良かった、契約書は残してとなりますが、二つとも申告をしなければ働かない規定です。贈与税がかからなくとも確定申告をしなければなりません。

渋谷:そうなのですね。

峯本:特に不動産の資金贈与に当たりますので、登記情報が国税に法務局から行っています。子供に贈与すると、税務署からお尋ねが来て、どういった資金で購入されましたかと聞いてくるのです。それは、そういうことを探っていることになります。贈与の特例を使う場合は、必ず確定申告をするようにしてください。

渋谷:分かりました。少し話を変えて、暦年贈与で110万円までの非課税があります。たまに聞くのが、自分の相続額から考えると、300万円を毎年行った方が、相続が発生するよりも贈与した方がいいという金融の世界で言う損益分岐点のようなものがあると思います。

これは自分でも計算できるものですか?

暦年贈与の効果を最大限にする計算について

峯本:簡単に言うと相続時に1,000万円持っていた場合、相続税で払った方がいいか、今贈与税で払った方がいいかの判断となります。

50%の相続税がかかる家だった場合、1億円をそのまま残していると、5,000万円が相続税でかかってしまいます。それを110万円という贈与額を使い、1人110万円ですので、極端な場合10人で1,100万円ずつ親族に贈与できます。

それで10年続ければ1億円がなくなります。贈与税は110万円まで0ですので、1億円が10人に税金をかけずに移転できます。何もしないで1億円を持っていると、5,000万円の相続税がかかります。贈与する方は、どれぐらいの相続税がかかるかの試算が必要になります。

渋谷:例えば、よく聞くのが110万円を超えて200万円になり、幾ばくかの税金を払っていても相続税よりも安いと書いてある場合も多いと思います。

しかし、自分にいくら相続税がかかるか分からないため、そのつもりでやってみると余計なことをしてしまったという場合も、結構ありますよね?

峯本:あります。相続税が、そもそも基礎控除額以下の場合については相続税がかからないので、贈与税を払ってまですることはありません。あるいは、基礎控除額を少し超えて、相続税がギリギリかかるような家であれば、それが基礎控除額に枠に収まる程度まで贈与すればいいです。しかし、延々と贈与しているケースもあるので、そこの見極めは必要だと思います。

渋谷:あれ自体はよく聞くスキーム、いいと思う一方で、なかなかきっちりとした計算をしないと、独りよがりになって余計なものを納めてしまうこともあるのではないかと思います。そういう感じですよね。

峯本:はい。

渋谷:分かりました。それ以外にも、生前贈与で気を付けるべきことはありますか?

生前贈与をより効果的にする方法

現金以外の手段も検討する

峯本:現金で渡す方が多いですが、他の相続対策と同じでものに変えて渡した方が幾分か安いです。一番効果があるのは不動産です。ワンルームマンションに変えて現金を贈与するとか、そういう形で贈与した方が効果はあります。

渋谷:なるほど。評価を下げるという意味ですね。分かりました。もう一つ戻ってしまうのですが、110万円を渡すとき、現金で渡す人もいれば、送金する人もいます。これは税務署的な観点も含めると、送金すれば間違いないですか?

峯本:一応贈与契約書を確認されるので、贈与契約書があればいいです。ただ、お客さんにはできるのであれば贈与契約書を作成し、111万円にするようお願いしています。

渋谷:111万円というのは?

峯本:なぜかと言うと、110万円の基礎控除から超えて1万円に対して10%の贈与税がかかるのですが、税務署に記録が残ります。

渋谷:なるほど。

峯本:税務署に税金を少し払い、税務署にあえて記録を残すのです。

渋谷:記録を残すのですが、手間暇がかなり大変ではないですか?

峯本:税理士の報酬もかかりますので。

渋谷:実質は1,000円プラスアルファになるものの、ということですね。

峯本:そういうものをかけたくなければ、せめて贈与契約書のフォーマットがネットにも出ています。贈与契約書を作成していただき、銀行間で贈与者と受け取る側の記録を、銀行送金で残してほしいとお願いしています。

渋谷:なるほど。贈与契約書でどうしても抜けてはいけない要件はありますか?

贈与契約書の作成について

峯本:贈与した人、贈与される人、あとは金額などの内容が入っていれば問題ありません。

渋谷:特に皆さんが思っているようなかたい契約書というよりも、簡単な借用書のようなものでも十分に効力があると?

峯本:手書きで、何月何日に誰々が誰々に現金をいくら贈与すると書き、2人がはんこを押せばそれで有効です。

渋谷:なるほど。贈与が終わった後、その書類は何年残しておけばいいですか?

峯本:5年間の時効があるので、それを過ぎれば大丈夫です。

渋谷:分かりました。

峯本:争う家だと特別受益という、前にもらったもらっていないとけんかになることもあるため、その証明が必要となることがあります。

渋谷:けんかになったときも、照明として十分に効力を持つということですか?

峯本:はい。

渋谷:それも、先ほどおっしゃったように、手書きであっても十分に効力があるという認識で合っていますか?

峯本:はい。

渋谷:分かりました。他に何か注意することはありますか?

峯本:よく110万円を10年間同じように贈与すると、年々贈与と言って、元々1,100万円を10分割になっていたのではないかとされると本には書いてあります。実務上見たことがありませんが怖いので、110万円以下を贈与するときも毎年変えた方がいいということはよく言います。

渋谷:変えた方がいいと言われている?

峯本:指摘されたケースを実務で見たことはないのですが、そう言われていると本に書いてあります。110万円以下なので贈与税がかからないため、税務署も気付いていないと思うのですが。

渋谷:本に書かれていることを、先生は見たことないものの一応そこは注意すべきだと。

峯本:そうです。金額を変動させ、100万円、90万円、110万円という感じで。

渋谷:そうなのですね。それは初めて聞きました。勉強になりました。今日は生前贈与についてお伺いしました。ありがとうございました。

峯本:ありがとうございました。

続きを読む

メディアでご紹介いただきました

関連記事

【米国株】‌米国のソフトランディング説が優勢。ただし、今後は失業率がそのシナリオに大きな影響を与えるかもしれない理由【12/6 マーケット見通し】

【米国株】‌米国のソフトランディング説が優勢。ただし、今後は失業率がそのシナリオに大きな影響を与えるかもしれない理由【12/6 マーケット見通し】

本日は、アメリカの経済見通しについてお話しいたします。ここ最近までは、来年アメリカ経済がソフトランディングする …

【米国株】‌米国株の上昇を支える24年6月利下げの市場予測。予測が的中するための条件。【11/24 マーケット見通し】

【米国株】‌米国株の上昇を支える24年6月利下げの市場予測。予測が的中するための条件。【11/24 マーケット見通し】

11月に入ってからの株式市場の大幅な上昇の背景には、2024年6月に利下げが開始されるという市場予想による、緩 …

【米国株】‌23年4Q予想EPSの下方修正が続く背景と今週の注目点【11/20 マーケット見通し】

【米国株】‌23年4Q予想EPSの下方修正が続く背景と今週の注目点【11/20 マーケット見通し】

23年の第4Qの予想EPSが下落をしています。下落した背景、そして今後も続くのかどうかを、今週のスケジュール等 …

【米国株】‌米メガテック株が好調な中、Russell2000にチャンスは訪れるか?【11/10 マーケット見通し】

【米国株】‌米メガテック株が好調な中、Russell2000にチャンスは訪れるか?【11/10 マーケット見通し】

米国のメガテック企業、「M7」と呼ばれる企業の株価が好調である一方、小型株のラッセル2000は軟調に推移してい …

【米国株】‌バフェット氏が債券を積み増し。今後は株式と債券のどちらが優位なのか?【11/8 マーケット見通し】

【米国株】‌バフェット氏が債券を積み増し。今後は株式と債券のどちらが優位なのか?【11/8 マーケット見通し】

11月3日、バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが決算発表を行いました。同社が米国株の保有割合を減らし、 …

【米国株】‌今週も米長期金利の低下は維持できるのか?【11/6 マーケット見通し】

【米国株】‌今週も米長期金利の低下は維持できるのか?【11/6 マーケット見通し】

今回のテーマは『今週も米国の長期金利の低下が持続できるのか』について見ていきます。 長期金利の動向は、今後の株 …

【米国株】‌3Q決算発表を半数が終了。今後の株価見通しへの影響について【11/1 マーケット見通し】

【米国株】‌3Q決算発表を半数が終了。今後の株価見通しへの影響について【11/1 マーケット見通し】

10月27日時点で、S&P500の約半数の企業が第3Qの決算発表を終えました。この結果を見ながら、今後 …

【米国株】‌今週は中銀ウィーク。注目は政策金利よりも量【10/30 マーケット見通し】

【米国株】‌今週は中銀ウィーク。注目は政策金利よりも量【10/30 マーケット見通し】

今週は中銀ウィークです。日銀の金融政策決定会合、米FOMCの開催が予定されています。先週、ECBが終了しました …

【米国株】‌決算が良くても株価続落。この流れはいつまで続くのか?【10/27 マーケット見通し】

【米国株】‌決算が良くても株価続落。この流れはいつまで続くのか?【10/27 マーケット見通し】

本日のテーマは米国株式市場です。この1週間、多くの方がご存知のように、メガテックの決算発表が続きました。決算内 …

【米国ETF】‌もし、長期金利が低下しはじめたらハイイールド債券も買い時か?【10/25 マーケット見通し】

【米国ETF】‌もし、長期金利が低下しはじめたらハイイールド債券も買い時か?【10/25 マーケット見通し】

もし今後、長期金利が低下するような状況が訪れたら、ハイイールド債券は買い場なのかどうかを本日は見ていきたいと思 …

【米国長期債券】‌1923年以降、米10年債券は過去最大の下落。パウエル議長長期金利に言及で長期金利はどうなるか?【10/20 マーケット見通し】

【米国長期債券】‌1923年以降、米10年債券は過去最大の下落。パウエル議長長期金利に言及で長期金利はどうなるか?【10/20 マーケット見通し】

本日は、アメリカの長期債券について見ていきます。前回の記事でも、長期金利について確認しましたが、今回は2つのポ …

【米国債券】米国債への投資タイミングを見定めるポイントは?【10/18 マーケット見通し】

【米国債券】米国債への投資タイミングを見定めるポイントは?【10/18 マーケット見通し】

本日は、米国債投資についてお伝えします。17日、米10年金利が4.85%を超えてきました。2週間前には4.88 …

【米国株】米決算シーズン突入。今週の3つの注目ポイント【10/16 マーケット見通し】

【米国株】米決算シーズン突入。今週の3つの注目ポイント【10/16 マーケット見通し】

10月13日から、アメリカの決算発表が本格的にスタートしました。今週の注目材料もアメリカの決算発表となりますが …

【米国株】FRB要人のハト派発言で長期金利の上昇は終了するか?タームプレミアムの動向に注目【10/11 マーケット見通し】

【米国株】FRB要人のハト派発言で長期金利の上昇は終了するか?タームプレミアムの動向に注目【10/11 マーケット見通し】

先週末に起こったイスラエルとパレスチナの紛争により、今週のマーケットは警戒感が高まりました。しかし、まずは初期 …

【米国株】逆イールドの解消が進む。米株に不吉なシグナル。【10/6 マーケット見通し】

【米国株】逆イールドの解消が進む。米株に不吉なシグナル。【10/6 マーケット見通し】

昨年、特に話題になった逆イールドについて取り上げます。ここ最近の長期金利上昇によって、10年-2年の逆イールド …

おすすめ記事