FOMC通過後も米国の景気後退懸念に注意

FOMC通過後も米国の景気後退懸念に注意

超保守的な資産管理チャンネルで配信中

FOMCについて、日本時間27日朝4時半にパウエル議長が記者会見を開き、今後の見通し、今回話し合った内容、決めた背景を伝える予定です。

QTについて、テーパリングの早期終了があるのか、利上げについてのヒントがあるのかにとても注目が集まっています。引き続き注意してFOMCを見ることが必要です。

ただ、1月から大きく株価が下がった原因はFOMCに対する警戒感だけではありません。他にもいくつかの要因があると考えています。

そこで本日は、FOMC後にも大きく影響を与える、本質的に今回の下落局面を作っている背景を取り上げます。ぜひ最後までご覧ください。

2年金利の動向

FEDウォッチャーが利上げ年7回と発言

今日皆さんに注意していただきたいのは、2年物の金利の動きです。

ジェイミー・ダイモンさんが1月14日ごろ、決算発表後に今年7回ほどの利上げをする必要があると伝え、金利が上がりました。

また、FEDウォッチャーとして有名な人たちも、今年7回ぐらい利上げをしないと追いつかないと言っていることで、かなり警戒ムードが漂っています。

しかし、FOMCの開催直前になると、2年物の金利は1.03%程度で落ち着いています。

通常であれば、もっと2年物金利が上がってもおかしくない状況です。にもかかわらず、2年物金利は落ち着いています。

およそ1%ということは、今日から2年間で2%ほどの金利上昇予測となります。ですから、約0.25%の利上げを8回、もしくは2%近くの利上げを何回かに分けて行うというのが市場の中心となっているのです。

しかし、FEDウォッチャーが今年7回と言っているのですから、もっと利上げムードは高まってきそうなものです。その中でも1%に落ち着いているというのが、今回警戒すべきことになります。

米国2年債券入札好調

今月1月25日、米国2年国債の入札がありました。2年国債の入札には詳しくない方もいらっしゃるかと思いますので、チャートを使って簡単に説明いたします。

まず、2年国債の入札金額は540億ドル(日本円で約5~6兆円程度)でした。

入札された金利は、2年国債を0.99%でした。2年間保有すると1年ごとに0.99%、トータルで2%近くの金利をもらえる国債を入札で買ったということです。

WI(直前に2年国債を今ならどのくらいで買うかを聞いたもの)は1.002%でしたから、国債の人気が事前調査より高かったことを意味しています。

また、応札倍率(買いたいと言った人の倍率)は、過去6回の平均が2.5倍のところ、今回は2.81倍でした。前回の2.55倍よりも高く、2020年のコロナショック以降1番買われたことになります。

アメリカのインフレが留まらずに金利が上がってくると分かっているのであれば、恐らくここまで強い需要はないはずです。

2年間で2%の利上げが精いっぱいで、債券を2年間保有するのであれば年1%ほどで十分ではないかという入札が多かったことが、この数字からは分かります。

もう一つ、緑の部分に書いてある内容です。間接入札者(外国人投資家のこと)は、通常米国債に対して平均54%の人が買いますが、今回は61.39%でした。緑部分が外国人の応札です。2009年6月以降最高の購入となります。

米国内に留まらず、海外からも2年間で1%近辺の金利だったら十分買いだと思われているのです。

ここから、海外投資家も含めて金利に詳しい人たちは、FOMCで利上げがどんどん進んでくるとは考えていないことが分かります。

そのこともあり、2年金利がなかなかFOMC直前になっても上がっていないのです。

景気減速懸念

景気減速を警戒する金利

非常に重要なポイントです。なぜ懸念をしなければならないかです。

こちらのOISのスワップレートをご覧ください。

これは2年後、2024年1月時点に立って考えたとき、2年間の金利と10年間の金利がほぼフラットになっていることを示しています。

2024年1月には2年と10年の金利がほぼ同じなので、イールドカーブがフラット化している可能性があると、金融マーケットは考えているのです。

記事をいつもご覧いただいている方はお分かりかと思いますが、イールドカーブのフラット化は、景気後退局面に入る逆イールドの直前に起こります。そのため、2024年初頭にはかなり緊張感の高まっている可能性があるのです。

前回2年と10年の金利スワップがフラット化したのは、2018年2月でした。その後、イールドカーブは2019年9月、1年半後に逆イールドに突入しています。

このチャートは2年、10年のイールドカーブの差を表しています。ですから、赤丸部分は2年物より10年金利が低くなる逆イールドです(通常は10年金利が2年金利よりも高くなる)。

赤丸の後のグレー網掛けは不景気になっています。株価、GDPも大きく下がる局面が過去3回ありました。このマイナス部分が今回も起こり得るのです。

前回フラット化した緑掛け部分から1年半後に、リセッションが起こっています。

今はほぼフラットのため、ここから1年半~2年後ぐらいで逆イールドに入るのではないかと、金融関係者、債券関係者は考えています。そのため、株に対して大きくお金を振り分けることができなくなっていると思われます。

2年間で2%の利上げを行うだけでも、景気後退すると金利は考えています。2%を超えて3%、4%の利上げがあるから景気後退するのではありません。織り込んでいるような2年間で2%の利上げでも、景気後退が2年後ぐらいで訪れるのです。

10年金利は最近1.8%を超えたぐらいで重くなり、1.7%まで下がっています。10年金利がなかなか上がらないことから、株価はいいのではないかと思っている方も多いかと思います。

しかし、2年後に10年金利が2%であっても、景気後退が起こる可能性はあります。金利が上がれば株価が下がるという絶対条件ではなく、仮に2%近辺で10年金利が留まっても、景気後退局面が来れば株価は下がります。

私もこれまでお伝えしてきたように、つい最近までは実質金利上昇が株価マイナスの大きな要因だと金利中心に見ていました。

しかし、もしかしたら2%の金利に留まったとしても、それ以外の景気後退要因で株価が下がる可能性があると、マーケットが見始めているというのが非常に大事なポイントです。

この状況は、FOMC後に解消されるわけではありません。経済指標が景気後退に至らないとしっかり示してこない限り、なかなかこの状態は解消されない可能性があります。

FOMC通過後、ハト派発言で株価が上がったとしても、経済指標が良くなっていなければフラットニングがどんどん進む可能性があります。

それは、いずれ株価に対して非常に重くのしかかる可能性があります。ぜひFOMCの中身だけではなく、しっかりと経済指標を見ていただきたいと思います。

PMIが景気の分かれ目の50に接近

最後にこちらをご覧ください。

そんな中、米国PMIが発表されました。景気の分かれ目の50に近付いています(実際の指数は50.8)。50を割ってくると株価が大きく下落します。

製造業PMIだけではなく、今年に入って大きく予想を下回る経済指標を右下に取り上げました。

1月4日のISM、14日の小売売上、鉱工業生産、ミシガン大学消費者信頼感指数、18日NY連銀、20日中古住宅販売も落ち込みました。

25日のIMF経済見通しでも、米国22年は5.2%から4.0%と、1.2%も下げています。

同日発表されたカンファレンスボードも予想を下回っています。

今年に入って、FOMCに対する懸念感から株価が下がったとよく言われています。金利上昇によって株価が下がったと、私も含めてお伝えしてきました。

これまでのFOMC開催26日まではそういったテーマで移ってきましたが、実は根本部分には経済減速、もしくは後退懸念が根強くあります。

金利を見ると、2年後には2年金利、10年金利の差がほとんどなくなるフラットニングが進んでいます。

フラットニングが進み10年金利が下がれば、逆イールドになります。逆イールドになったときには100%漏れることなく景気後退が直後に訪れます。

マーケットは金利動向をしっかりと見ながら、株価が今後不安定だということを念頭に置いています。

ですから、FOMC通過後にハト派だから良かったと買うのではなく、経済指標が底堅くなってくる、確実に予想を上回ってくるような、国としての経済成長があってこそとお考えください。

企業業績、金利動向も大事ですが、同じぐらい経済動向も今まで以上に注目されることが、FOMC前に確認できています。ぜひ、本日の結果も踏まえて経済動向をミックスして考えていただき、今後の戦略を作っていただければと思います。

本日も最後までご覧いただき、ありがとうございました。

続きを読む

「資産を守るために、着実な資産管理を」

ファミリーオフィスドットコムでは無料で⾃信で⾏っていただける資産管理から、
エキスパートによるオーダーメイド型の資産管理まで、様々なサービスを提供しています。

メディアでご紹介いただきました

関連記事

米国決算シーズンの前半を振り返り 〜今後、想定しておくべき市場展開について〜

米国決算シーズンの前半を振り返り 〜今後、想定しておくべき市場展開について〜

今週の米国の主要企業の決算発表を踏まえて、今後の米国株式市場の見通しについて解説します。 [ 目次 ]1 &n …

日本企業を動かすアクティビストの台頭 – アクティビストが狙う銘柄の特徴と対策

日本企業を動かすアクティビストの台頭 – アクティビストが狙う銘柄の特徴と対策

近年、日本企業の株主構成が変化し、外国人投資家の保有比率が増加傾向にある中で、企業に積極的に意見を述べるアクテ …

【米国株】‌‌下落が続く米国株は、今回も普通の調整か、それともまだまだ下落が続くのか。【4/22 マーケット見通し】

【米国株】‌‌下落が続く米国株は、今回も普通の調整か、それともまだまだ下落が続くのか。【4/22 マーケット見通し】

本日はテーマは米国株です。先週は、米国株で下落が続きました。今回の下落も、通常の調整なのか、それとも、まだまだ …

日米金利差が招く円安リスク〜日本経済への影響と日銀の舵取り〜 今後の見通しと注目ポイント

日米金利差が招く円安リスク〜日本経済への影響と日銀の舵取り〜 今後の見通しと注目ポイント

1990年6月以来、34年ぶりの1ドル=154円台に到達した力強い動きが続く米ドル円の今後の見通しは? [ 目 …

原油価格の高騰がインフレ再燃の引き金に?米国経済への影響は

原油価格の高騰がインフレ再燃の引き金に?米国経済への影響は

原油価格が再び上昇傾向にあり、米国を中心にインフレ再燃への懸念が高まっています。2022年後半から下落傾向にあ …

【米国株】‌‌米大手金融機関が決算悪化。今後への影響が大きそうだと思われる理由。【4/15 マーケット見通し】

【米国株】‌‌米大手金融機関が決算悪化。今後への影響が大きそうだと思われる理由。【4/15 マーケット見通し】

12日からアメリカの決算発表がスタートし、アメリカのJPモルガン、シティグループ、ウェルズ・ファーゴなど大手金 …

金価格が史上最高値を更新!急騰の背景と今後の見通しを解説

金価格が史上最高値を更新!急騰の背景と今後の見通しを解説

金(ゴールド)の国際価格が急上昇し、1トロイオンスあたり2,300ドルを超える史上最高値を記録しました。金は従 …

日経VI:今後の日経平均や株式市場への影響と注意点

日経VI:今後の日経平均や株式市場への影響と注意点

最近、中東情勢の緊張と原油価格の上昇によってリスクオフムードが高まり、日経平均ボラティリティ・インデックス(日 …

【米国株】‌今週末から米国企業決算が本格的にスタート。S&P500の現状分析と注目点。【4/8 マーケット見通し】

【米国株】‌今週末から米国企業決算が本格的にスタート。S&P500の現状分析と注目点。【4/8 マーケット見通し】

本日のテーマは米国株です。12日から米国金融機関を中心に、2024年度第1Qの決算発表がスタートします。 今年 …

【2024年最新】NISA口座開設・利用状況から見える投資家動向 

【2024年最新】NISA口座開設・利用状況から見える投資家動向 

2024年に入ってから、NISA(少額投資非課税制度)の利用が大幅に拡大しました。本記事ではまず、NISA口座 …

バブル期の高値を更新し、44%の上昇率を記録した日経平均株価:2023年度のマーケットを振り返る

バブル期の高値を更新し、44%の上昇率を記録した日経平均株価:2023年度のマーケットを振り返る

2024年4月から新年度に入りました。2023年度のマーケットを振り返ると、改めて日本の株式市場は記録的な1年 …

【米国株投資】‌なぜ今年は米国小型株に注目する人が多いのか?【4/1 マーケット見通し】

【米国株投資】‌なぜ今年は米国小型株に注目する人が多いのか?【4/1 マーケット見通し】

本日は、米国株投資を取り上げます。今年に入り、米国小型株、ラッセル2000に注目する人が増えています。最近は、 …

【米国債券投資】‌6月利下げの可能性が高まる中、利下げ開始後の債券ETF投資戦略について【3/25 マーケット見通し】

【米国債券投資】‌6月利下げの可能性が高まる中、利下げ開始後の債券ETF投資戦略について【3/25 マーケット見通し】

先週のFOMCを受け、6月の利上げ可能性が高まってきました。その影響で、今後の長期金利低下などが期待される中で …

【米国株】‌いよいよ米国経済に変調の兆し。3月FOMCが米国株へ与える影響に注意【3/18 マーケット見通し】

【米国株】‌いよいよ米国経済に変調の兆し。3月FOMCが米国株へ与える影響に注意【3/18 マーケット見通し】

先週の経済指標のいくつかは、アメリカの経済に、いよいよ変調の兆しがありと考えさせられるものでした。本日は、先週 …

【米国株】‌米国の雇用は本当に強いのか?それとも弱いのか?株価に与える影響大【3/11 マーケット見通し】

【米国株】‌米国の雇用は本当に強いのか?それとも弱いのか?株価に与える影響大【3/11 マーケット見通し】

先週金曜日、アメリカの雇用統計が発表されました。それ以外にも、先週は、JOLTSやISM非製造業の雇用など、雇 …

おすすめ記事