最近ドル高というニュースでよく聞かれます。対円に関しても、日本サイドが為替介入を行うほどドル高が進んでいます。もちろん、対円以外でも、ユーロ、ポンド、オージーなどの通貨に対しても、ドル高が進んでいます。
本日は、ドル高が進むことで、今後のアメリカの企業業績や株価に対してどのような影響があるのか見ていきたいと思います。
[ 目次 ]
こちらはドルインデックスです。ドルに対する貿易量に応じてその比率を加重平均し、ドルの強弱を示すために作られたインデックスになります。インデックスには、一番取引量の多いユーロを中心に、円、ポンドを加重平均で集めています。下のチャートが上に向かっている状態は、他の通貨に対して相対的にドルが高くなっていることを示しています。
このチャートをご覧になっても分かる通り、2000年以来の高値水準を超えてくるような、ドル高になっています。ドル高というのは、アメリカにとっては輸入価格を抑えることからインフレを抑制効果が期待できる一方、アメリカの輸出企業、グローバル企業はドル高が重しになる可能性があります。つまり、企業業績にとってはマイナスになる影響が知られています。
こちらをご覧ください。過去、ドルインデックスが前年比で大きく上昇した時に起こった経済イベントを表したものです。ちなみに現在は前年比で21%もドルが急激に上昇している状況です。赤い横線は、前年比10%を超えを示しています。
こちらで示しているチャートでは、前年比で10%を超えるドルインデックスの上昇時には、グローバルにいろいろなイベントが起こっていることが分かります。例えば、リーマンショック、住宅バブルの崩壊、ITバブルの崩壊といったことなどが過去にありました。
ただ、気を付けていただきたいのは、こちらはドルインデックスが上昇したとき、それが原因となって全てのクラッシュが起こったわけではないということです。クラッシュが起こったことが原因となり、ドル需要が増え、ドルが上昇したという順番になったこともあります。もちろん、ドルが上昇したことを起因として経済に変調をきたしたということもあります。どちらが原因で起こったかは、断定できるものではありません。
ただ、ドルが急激に上昇するということは、米企業にとっては圧迫的な状況になることは間違いなく、このようなイベントが起こりやすくなります。このように、前年比で10%を超えてくると歴史的に名を残すイベントリスクが高まる中、現在は20%を超える上昇という状況です。今後、経済的な変調をきたすリスクは十分にあるとご認識いただければと思います。
次にこちらをご覧ください。ここでは、ドルインデックスが株価にどういった影響があるか、見ていきます。青いチャートがドルインデックス、オレンジのチャートがS&P500です。モルガンスタンレーのストラテジストによると、ドルインデックスが前年対比で1%上昇すると、S&P500の収益(EPS)が-0.5%の影響を受けると先日レポートを出しています。
先ほど見ていただきました通り、今年に入り21%近くドルインデックスが上昇していることから、S&P500のEPSを約10%押し下げる効果があることになります。今後、さらにドル高が進むようであれば、益々EPSの下方修正に繋がる可能性があると警告していることを認識していただければと思います。
その上で、上の過去のチャートをご覧ください。ドルインデックスが急激に上昇したところを、青い網掛けで囲っています。ドルインデックスが急上昇した後にS&P500が大きく下落、もしくは停滞していることが分かります。
今のようにドルインデックスが上昇する状況では、今後もS&P500が下がる可能性があると、注目すべきだと思います。
では、ドルインデックスの上昇はいつ止まるのか、皆さん興味があると思います。過去のドルインデックスが利上げ局面において、どういった影響があったのか、見ていきたいと思います。
次に、こちらをご覧ください。青い線がドルインデックスの動きを表しています。赤矢印は、米2年金利がピークを付けたところを表します。この図表では、2年物金利がピークを付けた前後で、ドルインデックスがどうなったかを示したものです。
赤矢印の左側は2年金利がピークを付ける前のドルインデックスの動き。赤矢印の右側はドルインデックスが2年物金利でピークを付けた後の動きです。
全体的に見ると、2年金利がピークを付けた前後においても緩やかに上昇していますが、より詳しく見ていくと、2年金利がピークをつける前は急激に上昇しています。おおよそ18ヶ月前からドルインデックスが大きく上昇していることが分かります。
一方で、2年物がピークアウトした後は、下がったり、もしくは横ばいになるなど、ピーク前よりも大きく上昇することなく、緩やかに動きに収まってくる印象です。このことから、今後ドルインデックスの動きを予測・判断するためには、赤矢印前後の動きから分かる通り、2年物の金利がいつピークを付けるかを見ていく必要がありそうです。
ここで2年物金利がいつピークアウトするか考えた場合、結論としてはFRBの利上げサイクルの終了がお大きく関係しています。皆さんもニュース等でご覧になったかこともあるかと思いますが、「政策金利の引き上げを色濃く反映するのが2年物金利」とされている通り、政策金利を引き上げると、2年物金利は上昇することが知られています。
しかも、ここでは利上げサイクルのピークと2年物のピークは近い時期の起こることを表したものが、こちらになります。こちらは1980年以降、利上げのピークに対し、2年物の金利がいつピークアウトしたか表したものです。左に伸びている棒グラフは、利上げサイクルの終了前、2年物金利がいつピークを付けたことを示しています。このように、基本的には、利上げピークの前に、2年物の金利が先にピークを付ける傾向があると分かりました。
具体的には、40日、数日前というようにピークを付けていますが、81年は利上げのピーク後も、2年物金利が少し高く続いたとも分かっています。先ほど見た通り、ドルインデックスのピークアウトは、2年金利のピークアウトと非常に相関が高いです。そして、2年のピークアウトと、政策金利のピークアウトは、非常に相関が高いと分かりました。ということは、今後のドルインデックスの状況を見極めるにあたり、政策金利がいつピークアウトするか判断することで、ドルの上昇がいつ収まるかある程度想定できるのではないかということが分かりました。
こちらのチャートをご覧ください。こちらは、2年金利と、FFレート、政策金利を表したものです。青いチャートとピンクのチャートを見ていただければ分かる通り、かなり相関が高くなっています。
9月のFOMCにおいて分かったことは、FRBメンバーは23年春先に政策金利を4.6%まで引き上げ、その後も1年程度維持していくという意向であることです。FFレートのピンクの線は、点線で表しているように、来年の春先に向けて4.6%にピークが向かっていくこととなります。
米2年金利は、政策金利の少し前にピークアウトするということは、2年金利のピークアウトも来年の春先となります。ということは、ドルインデックスのピークも来年の春先となりますので、ここから数ヶ月間はまだまだドルインデックスが上がってもおかしくない状況だと、思ってください。
これれからわかることは、今後もドル高が進むと、さらに米株のEPSの下落要因とさらになります。今、市場の企業業績予想のコンセンサスは、今後さらに引き下がる可能性があることに注意が必要です。
こちらをご覧ください。マーケットのコンセンサスと言われる、2023年のEPS予想です。
一時期の250ドル近くあった23年の予想EPSは、239ドルまで下がってきています。今の時点でもかなり下がっては来ているものの、今後ドル高が進むようであれば、このEPS予想がさらに下がってくることもあります。以前お伝えした通り、リセッションが進むとそもそもEPSも大幅に下がってきます。これにドル高が絡み、よりEPS低下が起こり得る可能性をマーケットが秘めていると、ぜひお考えいただければと思います。
そういった状況において、最近は住宅価格が大きく下落していますし、インフレが少し軟化する兆候もあることもあり、来年4.6%の政策金利引き上げまで至らずに、もしかすると早い時点で緩和策に転じるのではないかとの期待感も若干残っているようです。
しかし、マーケット関係者の間では、これからご紹介するような部分を見ながらまだまだ引き締めが必要だと判断しているところがあります。最後に、こちらをご紹介します。
青いチャートがハイイールド債券の利回りと、国債の利回りのとのスプレッドを表しています。低格付け社債と国債の利回りの差が開けば開くほど、マーケットの金融環境が厳しくなっていることを表します。
ここでは、青いチャートが上に向かえば向かうほど、マーケットのコンディションが悪くなっている、金融の引き締めが効いてきた状態となります。オレンジのチャートはS&P500です。国債とハイイールド債券のスプレッドの拡大は、過去のいろいろなクラッシュ、もしくはマーケットが非常に厳しかった状態から比べると、今の状態はまだまだ広がりきっていません。
通常であれば、これを見てマーケットがまだまだ落ち着いていると分析しますが、今のような状況では、このチャートからは、これまで緩和策でまだ市場にお金がだぶついている。その結果、今後マーケットが厳しくなる確率が高いにもかかわらず、ハイイールド債券を持ち続けることで市場が選択した結果、スプレッドが広がっていない。ということは、ハイイールドスプレッドの差が広がっておらず、まだまだ金融当局は引き締めを行う余地がある、今はまだタイトな状況ではないと判断する向きがあります。
こういった観点からすると、23年の春先において4.6%までの利上げを緩めるような兆候があるとは言えません。このことからも、ドルインデックスが今後も上がる状況は、まだ続きやすい状況にあると言えます。そうなると、つられてEPSも下がりやすくなりますので、これからの株価を考えるにはドルインデックスを見ていただきたいと思います。
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