最近、2024年EPS予想が低下しています。いつもは2023年のEPS予想が低下しているお話をしていますが、今回は2024年のEPS予想も低下していることをお伝えしたいと思います。下落の背景と、今後も下落が続くかという2点をお伝えしたいと思います。
その前に、2日(本日)、FOMCの結果が発表されますので、その内容に簡単に触れます。マーケット予想としては0.75%の利上げが予想になるとされ、この利上げは幅にはサプライズは無いと思われますが、その後で開かれるパウエル議長のコメントに注目が集まっています。
12月以降の利上げを0.5%に緩めるのか、0.75%を維持するのかに関するヒントが出るかどうか、マーケットは興味を持っています。ただし、これ自体を予測することは難しく、予測したところでなかなか動きづらいところもあります。
FOMCなどにおいては、短期トレードの方以外、中長期の投資家は、内容、コメントを受けたうえで中長期の金利がどう動くかを見ながら、今後の戦略を立てることが正しいと思っています。
今晩のパウエル議長のコメントによって10年金利が上下する可能性があります。その動きを元に、金利動向から今後のPERがどうなるか、実質金利などを基に考えることが、今晩以降の重要なヒントとなります。
一方、株価の大きな構成要素であるEPSが、2023年、2024年にどうなるか、この時点で把握しておけば、今晩の発表に合わせて株価のバリエーションに生かしやすいと思います。そこで今回は、あえてFOMC前にこのようなテーマを取り上げてみました。
[ 目次 ]
結論から言うと、2024年EPS予想は既に低下を始めています。下のチャートをご覧ください。白線が2020年のEPS予想です。オレンジは2023年のEPS予想です。2024年は青いチャートで、3月から予想の数字が出始めています。
見ていただきたいのは、夏場以降、全ての年のEPS予想が低下していることです。22年6月時点においては、22年EPS予想は228ドルだったものが、23年に248ドル、24年に269ドルと、1年ごとに8~9%成長するシナリオでした。
それが直近11月には、22年EPSが228ドルから223ドルに低下しています。これの下落は現在の株価に反映されています。24年は253ドルと、6月時点からかなり下落しています。注目すべきは、22年度予想から23年予想が4%の成長となり、24年は9%の成長になっていることです。
注目すべきは、ここ直近の22~24年の成長率予想が、2年間を通して累計13.4%に低下していることです。一方、6月時点では17.9%もありましたので、2年間を通したEPS成長率は約4.5%の下方修正が入っていることが分かります。
24年EPSの低下傾向がさらに続く可能性があると、ISM製造業指数を基に簡単にご説明したいと思います。こちらをご覧ください。
ISM製造業指数は、50を割ると景気後退に入る可能性が高く、株価が大きく下落する可能性があります。1日に発表の内容は、前月の50.9から50.2と、景気の分岐点まで近づいてきています。
ご覧の通り、過去、IMS製造業指数が50を割ったからといって、必ずリセッションに入っているわけではありません。リセッションに入って、大きくISMが低下する傾向が2000年、2008年、2020年に見られましたが、その前にも何度かISMが50を切ることはありました。今回は、まだ50を切っていませんが、来月以降50を割り込んでリセッションに入るかどうかは、ISMからはまだ確定的ではありません。
とはいえ、ISM製造業日数は業績に非常に大きな影響があります。景気後退に入るかどうかは別にしても、EPS低下はこの流れから来ていることを、簡単に説明したいと思います。
こちらは、S&P500の営業利益成長率を表したものです。2008年から今年までを集めたもので、青丸、赤丸で示した箇所があります。2016~2018年まで、ISMは50割れから60まで上昇、その後2019年頭~20年まで、60から50割れまでマイナスに転じます。それから再び、ISMが50から60まで上がり、今は下落し60から50まで下がってきています。
さて、ISMが50から60に上がる段階を青、60から50に向かうところを赤で示しています。営業利益の成長率は、ISMが上がっているときには時間と共に上昇修正されますが、ISMが低下している局面においては、時間経過と共に営業利益率が低下する傾向があることが分かります。現時点において、23~24年の見通しでは、赤丸のようにISMが低下することが予想されており、今後、営業利益率の成長が低下する可能性があることが分かります。
これがEPSにどう影響するかです。青丸は、ISM製造業指数が50から60に向かっているところ。赤丸が60から50を切る方に向かっていくところです。EPSが発表された後、どう推移したかを表したチャートで、2016~2018年にかけてISMが上昇した局面においては、時間経過と共にEPS予想が上方修正されました。一方、19~20年にかけてISMは60から50に向かいます。この差はEPS予想が時間と共に下落し、最後はコロナショックで大きく下落します。
その後、非常に緩和的な姿勢になり、ISMがプラスになったときは、21~22年のEPS予想も時間と共に上がります。今回、50に向かって50を割るかという段階に来ていますから、23~24年予想は今後下がっていくだろうと、十分に考えられます。
ISM製造業指数がリセッションに入るか、入らないかの判断ではなく、今後のEPS予想がさらに下がることから考えると、現段階からEPS予想の成長はそもそも下がっています。今後下がってくるとなれば、EPSの低下は株価に大きなマイナスの影響があります。
今、マーケットの関心事としては、インフレ、金融政策に中心になっていますが、根本となる企業業績の悪化、成長性の鈍化は、株価に上昇のインセンティブが働かなくなります。中期の投資家から見ると、株価はいまだ上値が重たい状況が数値として続いていると認識してください。
日々の株価動向ばかりを見ていると、EPS低下はなかなかインプットされにくいですが、23~24年という直近2年間のEPSは低下する可能性が高そうです。そして、それを支えるISM製造業指数は、これからも下がっていく可能性が示されています。
では、EPS低下をさらに深める可能性のあるISMは、今後どうなるのでしょうか。
冒頭のチャートに戻ります。ブルームバーグでは、12ヶ月以内にリセッション入りする確率が100%になったと、ニュースとして流れました。さらに、数日前アメリカの金利、3ヶ月と10年の逆イールドも発生しています。これが発生すると、12ヶ月以内にリセッション入りする確率が相当高くなります。
先ほど見た図表の右側、グレーの網掛けを入れさせてもらいました。このグレーの網掛けは、リセッションに入るとISMがさらに加速度的に下落することを示しています。今の50を割るかどうかの水準から、さらにディープニングすることが予想されるため、その意味では、リセッション入りした後はISMが低下します。EPS予想もさらに低下する可能性があります。
さらに、そういった中において、リセッションに入らないようFRBが今晩、景気に配慮したような金融政策を取ってくるのではないか、ハト派に転じてくれるのではないかとの期待感も、マーケットではあります。市場としては、インフレ低下が見られたということですが、本当でしょうか。最後にこちらをご紹介します。
以前1回ご紹介したかと思います。ダラス連銀トリム平均PCEインフレーションです。トリム平均PCEとは、PCEコア、PCEが、青いチャート、赤いチャートです。
ちなみに、赤いチャートがエネルギー等を含めたPCEコア、青いチャートが、エネルギー、食料品を除いたPCEです。それに比べ、今ご紹介しているトリム平均PCEは、価格変動がとにかく大きな物品、サービスを除き、変動が大きな上位31%と、下位21%を取り除き、真ん中がどうなっているかの推移を表したものが、緑のチャートです。
トリム平均PCEは、FRBがすごく重視している指標と認識されています。その数字が、実は今6ヶ月平均で5%まで上昇しており、この水準は1980年まで遡らなければならないほど、トリム平均PCEコアが高い状態になっています。
ここでお伝えしたいことは、FRBが重視しているインフレに関する指標、グレー網掛けからも分かる通り、リセッションに入らないと結局は下落に転じることが無いということです。過去、1980年前半、90年、2001年、2008年、2020年と、全てトリム平均が下落したのは、景気後退に突入した後だと確認できています。
FRBがインフレを抑えようとした場合、金融政策だけではなく、ある程度のリセッションを覚悟し、あるいはそれを受け入れないとインフレが収まらないことがあります。マーケットで言われるような景況感に配慮した政策を取るのではないかというのが、マーケットの過剰な期待ではないかというのが、今晩以降分かってくるかと思います。
パウエル議長のコメントは、そういったところまで言及するのか。それとも、景気後退やむなしの内容かを見極めながら、EPS予想はリセッションに入ったとき、下落していくことを改めて確認していただければと思います。2023年のみならず、23年のEPS予想も既に低下を始めています。2年間の成長率も低下している現状を踏まえると、株価に対してどういうアプローチすべきかの判断となります。ぜひご参考にしていただければと思います。
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