【米国株】米住宅ローン金利が2007年以来の高水準。CPIと株価に与える影響について

【米国株】米住宅ローン金利が2007年以来の高水準。CPIと株価に与える影響について

超保守的な資産管理チャンネルで配信中

本日は、米住宅ローン金利が与える影響についてお話をしたいと思います。米国の住宅ローン金利が、7%を超え、住宅価格が減速し、CPIにとってはプラス材料ではないかと、マーケットでは期待が高まっています。このようにCPIに対し、プラスの影響が期待される一方で、株価にはどのような影響があるのか、簡単に分析しました。今後の参考にしていただければと思います。

7%を超えた米国住宅ローン

米住宅ローン金利は2007年以降で最も高い

こちらをご覧ください。米30年住宅ローン金利が7%を超えています。2007年を超える高水準です。米住宅ローンの金利に7%を払うということは、それ以上に住宅価格が上昇しない限り、大きな負担になる状況と言えます。

住宅ローン金利が上がってきたことで住宅価格にマイナスの影響があると報じられていますが、実際にそのような影響が出ています。

米住宅ローン金利とケースシラーの関係

こちらをご覧ください。住宅ローン金利と、ケースシラー(住宅価格)の関係を示したチャートです。青は、ケースシラー住宅価格指数です。こちらは、下に向かうほど、価格が下落していることを示します。一方、グレーは、住宅ローン金利を表しています。逆メモリなので、下に向かうほど、金利が上昇していることを表します。住宅ローン金利は、左のメモリを見て分かる通り、7%を超える状況となっています。

上の文章に書いてある通り、住宅ローン金利が上昇すると、9ヶ月遅行して住宅価格が下落することが、2008年以降確認できています。今のように、住宅ローン金利が7%を超えてくる水準ということで、これから住宅価格がどんどん下がる状況だと予想されます。今、最もマーケットで懸念されているインフレーションに対しては、住宅価格が鎮静化してくると、プラス要因となります。その意味では、住宅価格下落は、ある程度マーケットの期待に応えているフェイバーな状況ではあります。

では、青い矢印で書いてある住宅価格は、住宅金利が7.5%近くまで上昇してきている中、住宅価格が前年対比でどこまで下がるのでしょうか?

米住宅価格の見通し

住宅価格は下落するも前年比マイナスは回避の見通し

こちらをご覧ください。民間企業の調査によると、来年春先までに住宅価格は前年比で0%近くまで下がることが想定されています。ただし、来年9月以降には、3.9%の前年比での上昇見込みになっており、大きく0%を下回ることをマーケットは想定していません。

マーケットが一番懸念しているのは、チャートの左部分にあるような、2007年以降のような大きな住宅価格下落です。ここまで不動産価格が下落すると、金融機関の破綻や金融システムに対する影響が懸念されますが、マーケットはそこまでの下落は想定していません。ただ、今後も住宅価格が下がり続けるということは念頭に置かれている状況です。

ケースシラーの下落はインフレには効果的

さらに、こちらをご覧ください。住宅価格が前年比で0%近く、来年春先から夏場にかけて下がってくると、CPIに大きく影響する賃貸価格に、どういった影響があるかです。

濃い青のチャートは、ケースシラーのホーム価格指数の前年対比です。水色のチャートは、賃貸価格となります。青いチャートは、これから0%まで下がるという民間調査を信じれば、青い点線のようになります。

それに遅れること18ヶ月で、賃貸価格は下がってくるため、今、CPIに大きな影響を与える賃貸価格が、いずれ前年比で2%近くまで下がることとなります。そうなれば、CPIに対する大きなマイナス影響がなくなりますから、住宅金利が非常に高いことがインフレの懸念を鎮静化させることで、マーケットにとってプラス材料になるかもしれません。

10日発表されるCPIでも、こういった期待もあります。それを受けて、金融政策がハト派に転じるのではないかとの期待から、株価はフワッと上がってきています。

では、住宅価格の下落は、株価に対してマイナスの影響がないのでしょうか。こちらをご覧ください。

不動産価格が株価に与える影響

不動産価格の下落に遅れて株価も下落

こちらは、青いチャートがケースシラーの価格指数です。これは、前年対比です。赤いチャートは、全米株のチャートです。ケースシラーの住宅価格が下がっていくと、その後、送れるように米株式指数が下がると、過去確認できています。

住宅価格が下がると、アメリカでは「資産効果」と言われていますが、株や不動産が上昇することで財布のひもが緩くなり、GDPの7割を占める消費が上昇することで、株価が上昇するという循環が生まれます。一方、資産価値が下落、株や不動産が下落すると、財布のひもが締まり、結果として消費が落ち、株が下落すると言われています。

このように住宅価格から遅れて、株価が下落する傾向があることから、ケースシラーが来年夏場以降、下がる可能性があります。株価が遅れて下落するということは、今の下落がまだ続く可能性があると、住宅の価格動向からは、一応想定しておくべきシナリオかと思います。

以前にもお伝えしましたが、アメリカは不動産価格が上昇すると、不動産価格から住宅ローンを引いた余剰に対し、カードローンの担保を設定して消費する傾向があります。不動産価格が下がると、住宅ローンの枠が確保できないことから消費が落ち込むとも十分考えられます。

また、今の低い貯蓄率、カード使用残高が異常に高い中、不動産が下落することは株価にマイナス要因ではないかと、マーケットでは見ています。

そのようなことから、ケースシラーが下がる原因にもなっている、米30年住宅ローンですが、これがいつ下落に転じるのかは、非常に関心が持たれています。こちらも政策金利と大きく相関していることが分かりました。こちらをご覧ください。

住宅ローン金利は金融政策の転換後に低下する傾向

青いチャートが30年住宅ローン金利、赤がFFレート、政策金利です。30年住宅ローン金利が低下に転じるきっかけとなるのは、FFレートの政策転換です。1988年のケース、95年のケース、2000年、2008年のケースと、全てのケースで政策金利が上昇を止める、もしくは下落に転じたのちに、30年住宅ローンが低下する傾向があります。

直近の2019年のケースですが、こちらは少し住宅ローン金利が先に下落しているように見えますが、2019年1月4日に、パウエル議長が「今後、金融政策を緩やかにする」と発言した後、下落しています。今はというと、5月までターミナルレートが上昇する前提で動いています。

もし、これがハト派に転じても、恐らく3月まで利上げが継続するとなると、早くても3月まで住宅ローンが大きく下がるとは、想定しづらい状況です。住宅ローン金利が高いままだということは、そこに釣られて、ケースシラーも下がる傾向が出てきます。

そして、ケースシラーが下がるということは、株価も遅行して下がると考えると、今までの下落が、住宅によってさらに続く可能性があると、頭の片隅に置いていただきながら、今晩以降の中間選挙の結果、10日のCPIと、総合的にマーケットを見ていただければと思います。

続きを読む

「資産を守るために、着実な資産管理を」

ファミリーオフィスドットコムでは無料で⾃信で⾏っていただける資産管理から、
エキスパートによるオーダーメイド型の資産管理まで、様々なサービスを提供しています。

メディアでご紹介いただきました

関連記事

米国決算シーズンの前半を振り返り 〜今後、想定しておくべき市場展開について〜

米国決算シーズンの前半を振り返り 〜今後、想定しておくべき市場展開について〜

今週の米国の主要企業の決算発表を踏まえて、今後の米国株式市場の見通しについて解説します。 [ 目次 ]1 &n …

日本企業を動かすアクティビストの台頭 – アクティビストが狙う銘柄の特徴と対策

日本企業を動かすアクティビストの台頭 – アクティビストが狙う銘柄の特徴と対策

近年、日本企業の株主構成が変化し、外国人投資家の保有比率が増加傾向にある中で、企業に積極的に意見を述べるアクテ …

【米国株】‌‌下落が続く米国株は、今回も普通の調整か、それともまだまだ下落が続くのか。【4/22 マーケット見通し】

【米国株】‌‌下落が続く米国株は、今回も普通の調整か、それともまだまだ下落が続くのか。【4/22 マーケット見通し】

本日はテーマは米国株です。先週は、米国株で下落が続きました。今回の下落も、通常の調整なのか、それとも、まだまだ …

日米金利差が招く円安リスク〜日本経済への影響と日銀の舵取り〜 今後の見通しと注目ポイント

日米金利差が招く円安リスク〜日本経済への影響と日銀の舵取り〜 今後の見通しと注目ポイント

1990年6月以来、34年ぶりの1ドル=154円台に到達した力強い動きが続く米ドル円の今後の見通しは? [ 目 …

原油価格の高騰がインフレ再燃の引き金に?米国経済への影響は

原油価格の高騰がインフレ再燃の引き金に?米国経済への影響は

原油価格が再び上昇傾向にあり、米国を中心にインフレ再燃への懸念が高まっています。2022年後半から下落傾向にあ …

【米国株】‌‌米大手金融機関が決算悪化。今後への影響が大きそうだと思われる理由。【4/15 マーケット見通し】

【米国株】‌‌米大手金融機関が決算悪化。今後への影響が大きそうだと思われる理由。【4/15 マーケット見通し】

12日からアメリカの決算発表がスタートし、アメリカのJPモルガン、シティグループ、ウェルズ・ファーゴなど大手金 …

金価格が史上最高値を更新!急騰の背景と今後の見通しを解説

金価格が史上最高値を更新!急騰の背景と今後の見通しを解説

金(ゴールド)の国際価格が急上昇し、1トロイオンスあたり2,300ドルを超える史上最高値を記録しました。金は従 …

日経VI:今後の日経平均や株式市場への影響と注意点

日経VI:今後の日経平均や株式市場への影響と注意点

最近、中東情勢の緊張と原油価格の上昇によってリスクオフムードが高まり、日経平均ボラティリティ・インデックス(日 …

【米国株】‌今週末から米国企業決算が本格的にスタート。S&P500の現状分析と注目点。【4/8 マーケット見通し】

【米国株】‌今週末から米国企業決算が本格的にスタート。S&P500の現状分析と注目点。【4/8 マーケット見通し】

本日のテーマは米国株です。12日から米国金融機関を中心に、2024年度第1Qの決算発表がスタートします。 今年 …

【2024年最新】NISA口座開設・利用状況から見える投資家動向 

【2024年最新】NISA口座開設・利用状況から見える投資家動向 

2024年に入ってから、NISA(少額投資非課税制度)の利用が大幅に拡大しました。本記事ではまず、NISA口座 …

バブル期の高値を更新し、44%の上昇率を記録した日経平均株価:2023年度のマーケットを振り返る

バブル期の高値を更新し、44%の上昇率を記録した日経平均株価:2023年度のマーケットを振り返る

2024年4月から新年度に入りました。2023年度のマーケットを振り返ると、改めて日本の株式市場は記録的な1年 …

【米国株投資】‌なぜ今年は米国小型株に注目する人が多いのか?【4/1 マーケット見通し】

【米国株投資】‌なぜ今年は米国小型株に注目する人が多いのか?【4/1 マーケット見通し】

本日は、米国株投資を取り上げます。今年に入り、米国小型株、ラッセル2000に注目する人が増えています。最近は、 …

【米国債券投資】‌6月利下げの可能性が高まる中、利下げ開始後の債券ETF投資戦略について【3/25 マーケット見通し】

【米国債券投資】‌6月利下げの可能性が高まる中、利下げ開始後の債券ETF投資戦略について【3/25 マーケット見通し】

先週のFOMCを受け、6月の利上げ可能性が高まってきました。その影響で、今後の長期金利低下などが期待される中で …

【米国株】‌いよいよ米国経済に変調の兆し。3月FOMCが米国株へ与える影響に注意【3/18 マーケット見通し】

【米国株】‌いよいよ米国経済に変調の兆し。3月FOMCが米国株へ与える影響に注意【3/18 マーケット見通し】

先週の経済指標のいくつかは、アメリカの経済に、いよいよ変調の兆しがありと考えさせられるものでした。本日は、先週 …

【米国株】‌米国の雇用は本当に強いのか?それとも弱いのか?株価に与える影響大【3/11 マーケット見通し】

【米国株】‌米国の雇用は本当に強いのか?それとも弱いのか?株価に与える影響大【3/11 マーケット見通し】

先週金曜日、アメリカの雇用統計が発表されました。それ以外にも、先週は、JOLTSやISM非製造業の雇用など、雇 …

おすすめ記事