アクティビストはイベント・ドリブン型のヘッジファンドの事です。近年、株式市場で存在感を増しています。
投資対象は主に上場企業で、これまでもソニーや東芝、オリンパスなどの名門企業を次々とターゲットにしてきました。そして2020年になっても、ソフトバンクグループの株式を取得したエリオット・マネジメントや、任天堂株を取得したバリューアクト・キャピタルが注目されています。
「最強投資家」とも呼ばれる彼らの狙いは何なのでしょうか。
アクティビストとは
アクティビストとは、株主の権利をフルに活用し、「モノ言う株主」として事業提案をおこなうなどして、経営陣に積極的に働きかけます。投資対象は主に上場企業で、割安感のある株式を取得し、株価が上昇した段階で売却して利ざやを稼ぎます。
日本では、元通商産業省官僚の村上世彰氏が率いた「旧村上ファンド」や、世界最大手でソフトバンクグループの株式を取得した「エリオット・マネジメント」、香港に本拠地を置く「オアシス・マネジメント」が有名です。
アクティビストはヘッジファンドの一種
アクティビストはヘッジファンドの一種で、バイアウトファンドや企業再生ファンドとは違います。アクティビストファンドは数%から20%程度の株式を取得しますが、バイアウトファンドや企業再生ファンドは株式の50%以上を取得して経営権を握ります。
バイアウトファンドや企業再生ファンドは経営権を取得した上で企業価値を高めて売却するのに対し、アクティビストファンドは、短期の値ざやを狙っているにすぎません。株主の権利を活用して配当金を増額させたり、企業価値のアップを狙ったりして株価上昇につなげるのです。
アクティビストは高い利回りが要求されている
アクティビストは、ムリな増配を要求したり、リクエストが通らないと取締役の解任を迫ったりすることがあります。これは、アクティビストファンドが高い利回り(年率20%以上)を期待されているからです。年率20%以上の利回りを達成するために、企業に対してあらっぽい態度になるケースもあります。株価低迷の責任追及や株主総会の委任状の争奪戦(プロキシーファイト)、役員報酬への反対など、米国ではさまざまな手口で経営陣に圧力をかけるのです。
ときには横暴な態度や姿勢を見せることから、日本ではかつての「総会屋」と比べられることもあります。総会屋は、株主総会出席のためだけに少数の株式をもち、株主総会で発言して議事を混乱させることが狙いです。
米国でも「単なるグリーンメーラー」との批判があります。グリーンメーラーとは、経営に参加する意思がないのに経営陣に揺さぶりをかけ、割安な価格で入手した株式を高値で買い取らせて利ざやを稼ぐ業者のことです。
ただ、最近は「対話型」のアクティビストも増えています。2019年6月には、米国を拠点とするバリューアクト・キャピタルのパートナー、ロバート・ヘイル氏がオリンパスの取締役に就任しました。バリューアクトはオリンパス株を5.5%保有していますが、日本企業が米国のアクティビストから取締役を迎えるのは異例です。
アクティビストは、これまでのような多額の特別配当金や企業分割を迫るのではなく、外国人を取締役に起用するなど、より穏やかな提案から入るケースも増えてきているのです。
日本を狙うアクティビスト
日本はかつて、「アクティビストの不毛地帯」と呼ばれていましたが、日本企業が株主重視に動き、もっとも有望な市場の1つとして注目されるようになりました。
アクティビストは、米国で生まれ育った投資手法です。アクティビストから提案を受けた社数ベースで見ると、米国が世界の半分を占めています。米国以外ではイギリスやカナダといった英語圏諸国で活発ですが、日本も負けず劣らずのアクティビスト大国になりました。
日本市場が、アクティビストにとって稼ぎやすい環境に変わったからです。 まず持ち合いがとけて海外株主が増えました。そして、国内の機関投資家も運用者としての責任を問われるようになり、経営者にノーを突きつけるようになりました。
経営者は総会で再任されないリスクを恐れ、株主に耳を傾けるようになったのです。野村證券の調べによると、2019年末のアクティビストの日本株保有株は約3兆4千億円と、2015年6月の企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)導入から約5年で2倍になりました。
2020年1~3月期にアクティビストから提案を受けた企業数は、日本が米国外では3番目に多くなったのです。これは、企業文化や市場構造が似ているドイツをはるかに上回っています。
コロナショックで株価が大きく値下がりした日本企業は、安く買った後に経営改善で企業価値を高める手法のアクティビストの動きを、さらに活発化すると見られています。アクティビストの影響の高まりは、日本企業の資本効率改善意識を着実に高めていくでしょう。
アクティビストの目線で投資先を探す
アクティビストは企業にとって「もろ刃の剣」ですが、企業が現金を抱え込まずに投資還元に使えば経済全体にとってもプラスで、業界再編など産業全体の活性化に結びつくケースもあります。
今後は企業との対話をベースとし、事業の競争力を高めようとしていくアクティビストが増えるでしょう。コロナショックにより痛手を受けた企業の建て直し案を提案するアクティビストは、企業にとって必要な存在ですらあります。
ただ、企業は株主が納得する経営を目指すとともに、乱用的な買収者から身を守る仕組みも必要です。
また、投資家である方は、アクティビストが狙う企業の特徴から自分の投資先を再点検・分析してみてはいかがでしょうか。
アクティビストが仕掛けやすい銘柄の特徴は、
・自己資本比率が高い
・流動資産比率が高い
・機関投資家の保有比率が高い
などとされています。
このような企業は、アクティビストに狙われることを意識しROEに意識を高く置いた経営を行うカタリストになり企業価値が急上昇する可能性もあります。
是非、確認してみましょう。
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