23日、カンファレンスボードによる景気先行指数(LEI)が発表されました。今後の先行きを見通すものとして注目されていましたが、結果は予想を上回るマイナスとなりました。米企業決算においても、テキサス・インスツルメンツや3M、マイクロソフトの決算ガイダンスはあまり良くありませんでした。
ということで、本来であれば株価が下落する局面でしたが、株価は下がることなく、上昇をしています。本日は、景気指標、ガイダンスが悪化する中でも、なぜ株価が大きく下がらないのか、また、いつ影響が出てくるかを見ていきたいと思います。
[ 目次 ]
こちらは、カンファレンスボードによる景気先行指数です。事前予想マイナス0.7%が、結果はマイナス1%。景気先行指数が10ヶ月連続でマイナスと、非常に厳しい状況です。
10項目からなる景気先行指数は、今後の景気動向に先駆けて動く指標を加重平均して算出しています。具体的な10項目の内訳は、製造業の週平均労働時間、週平均失業保険申請件数、消費財新規受注、入荷遅延率、非国防資本財受注、新規住宅着工件数、S&P500(株価)、実質マネーサプライ(M2)、長短金利スプレッド、消費者期待度指数。
では、この指標が10ヶ月も連続でマイナスになったとき、景気にはどういう影響があるのでしょうか。
右のチャートをご覧ください。縦軸は、過去何回連続でマイナスになったかを表しています。今回は10回連続ですから、10回に赤線を引かせていただきました。過去10回以上連続でマイナスとなった月は、100%リセッションに入っています。10回連続マイナスという結果だけでも、本来は株価にはマイナスの材料といえます。
さらに、こちらをご覧ください。景気先行指数の6ヶ月間の変動率です。6ヶ月の移動を年換算で示したものが青いチャートになります。カンファレンスボードによると、黒線は危険水域で、赤線はリセッションのシグナルです。現在は、危険水域の-5%を下回り、今の水準は約10%です。危険水域を下回ると、過去は全てリセッションに入っています。
10ヶ月連続でマイナスとなったこと、また、-5%のマイナス率であることから、リセッション入りの可能性はかなり高いと言えます。この指標は、月曜日に発表されたため、本来は株価が大きくマイナスに反応しても良いところでしたが、実際には株価は大きく上昇しています。
さらに、こちらをご覧ください。FRBが最も重要視しているイールドスプレッド、3ヶ月-18ヶ月後の3ヶ月金利です。マイナスに入ると、過去リセッション入りしていることが確認されています。
このイールドがマイナスになれば、リセッション入りすると認識して利下げすると、パウエル議長は過去言及していました。しかし、これだけマイナスになっているにもかかわらず、2月は0.25%の利上げ予想。今後も抑圧的な金利状態が続けば、さらにリセッション入りする確率は高まると考えられます。
こういった状況がそろっているにもかかわらず、株価が上がっている背景は何でしょうか。こちらの2023年、2024年のEPS予想をご覧ください。23年のEPS予想が緑のチャート、24年のEPS予想が赤い点線です。今年に入ってからも、EPS予想は下がっています。しかし、リセッションに入ったような下落率ではありません。リセッションにおけるEPSは、過去平均で15~20%近く下落しています。
今年に入り、23年、24年EPSは確かに低下しています。しかし、過去平均の下落割合から見ると、まだ小さなものに留まっています。このことから、現在のマーケットのEPS予想は、リセッションを織り込んでいません。
注目すべきは、アナリストによる企業のEPS予想です。3M、マイクロソフト、テキサス・インスツルメンツといった、影響の大きな決算ガイダンスが悪化しました。そのことで企業EPS予想が低下すると、S&P500のEPS予想も低下を始めますが、まだ企業のEPS予想の低下は始まっていません。そのため、なかなか株価が下がりにくいというのが、一つ目のポイントです。
二つ目のポイントです。1年間のEPS予想の期間は、本日時点では23年1月25日~24年1月25日になります。このように、日が進むにつれて徐々に1年後のEPS予想に24年EPS予想が組み込まれていきます。24年EPS予想がもし高止まりするようであれば、予想EPSも上昇することになります。つまり、時間の経過と共に、24年EPS予想が下がるかどうかも注目で、もしEPS予想が下がらなければ、株価が崩れにくい状況が続くと言えます。
今後の注目点は、企業決算ガイダンスが、23~24年EPS予想にどう影響するのかです。株価のバリュエーションに大きな影響を与えます。今後の決算発表については、ガイダンスを見ながら判断いただければと思います。
業績悪化が長くなるようであれば、24年EPS予想は下がります。一方で、業績悪化が短期的なものになり、年後半には回復トレンドに入るとなれば、24年のEPS予想は高止まりし、今後、株価は下がりにくくなります。今後は、23年、24年EPS予想の両方を見ていただければと思います。
ファミリーオフィスドットコムでは無料で⾃信で⾏っていただける資産管理から、
エキスパートによるオーダーメイド型の資産管理まで、様々なサービスを提供しています。
11月に入ってからの株式市場の大幅な上昇の背景には、2024年6月に利下げが開始されるという市場予想による、緩 …
23年の第4Qの予想EPSが下落をしています。下落した背景、そして今後も続くのかどうかを、今週のスケジュール等 …
米国のメガテック企業、「M7」と呼ばれる企業の株価が好調である一方、小型株のラッセル2000は軟調に推移してい …
11月3日、バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが決算発表を行いました。同社が米国株の保有割合を減らし、 …
今回のテーマは『今週も米国の長期金利の低下が持続できるのか』について見ていきます。 長期金利の動向は、今後の株 …
10月27日時点で、S&P500の約半数の企業が第3Qの決算発表を終えました。この結果を見ながら、今後 …
今週は中銀ウィークです。日銀の金融政策決定会合、米FOMCの開催が予定されています。先週、ECBが終了しました …
本日のテーマは米国株式市場です。この1週間、多くの方がご存知のように、メガテックの決算発表が続きました。決算内 …
もし今後、長期金利が低下するような状況が訪れたら、ハイイールド債券は買い場なのかどうかを本日は見ていきたいと思 …
本日は、アメリカの長期債券について見ていきます。前回の記事でも、長期金利について確認しましたが、今回は2つのポ …
本日は、米国債投資についてお伝えします。17日、米10年金利が4.85%を超えてきました。2週間前には4.88 …
10月13日から、アメリカの決算発表が本格的にスタートしました。今週の注目材料もアメリカの決算発表となりますが …
先週末に起こったイスラエルとパレスチナの紛争により、今週のマーケットは警戒感が高まりました。しかし、まずは初期 …
昨年、特に話題になった逆イールドについて取り上げます。ここ最近の長期金利上昇によって、10年-2年の逆イールド …
今週に入っても米金利上昇が続いていることから、アメリカの株式は軟調に推移しています。下落幅も大きくなっています …
資産管理に正しい見積費用はあるのでしょうか? 例えば、資産運用の金融商品だけみても相当数あり、手数料は個別に異 …
ファミリーオフィスをつくりファミリーの資産管理を永続的に成長させる。 これがファミリーオフィスの究極的な目的で …
ファミリーオフィスとは、欧州や米国では広く認知されており、資産管理においてはとても優れたシステムだと周知されて …
ファミリーオフィスに依頼をすると費用が高いのではないかといことを良く質問されます。欧米からスタートしたファミリ …