4月7日、マーケットで注目されていた雇用統計が発表されました。雇用統計の中身を見ると雇用者数、失業率の低下と、引き続きアメリカの労働市場が強いことが確認できました。
とはいえ雇用統計は、遅行して発表される統計であり、今後の株価の転換点を判断するには材料としては弱いことも知られています。本日は、雇用統計の中でも失業率に注目し、失業率が今後の株価の転換点のシグナルになることをお伝えします。
3月の雇用統計
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簡単に雇用統計を振り返ります。3月の雇用者数は、予想の23万人を上回る23.6万人。雇用者数は、大きくは崩れていないことが確認できました。
失業率は前月3.6%から3.5%まで下がっています。FRBの次回利上げを正当化する内容だと言えるでしょう。
労働参加率は62.6%。前月の62.5%から、僅かですが上昇しました。労働参加率はここ数ヶ月連続して上昇していますから、こちらも次回のFOMCの利上げを正当化する内容になっています。
平均時給も前年比で+4.24%。前月比では+0.27%と、前月の+0.21%に比べても上昇スピードが上回っています。労働参加率、失業率から見ても、雇用はおおむね好調で、次回のFOMCで0.25%の利上げが実行されるのではという市場の折り込みに沿った内容のため特に大きな波乱もない結果となりました。
次に下のチャートをご覧ください。こちらは失業率を表しています。3月は3.5%という結果が発表されましたが、1940年代から見ても3.5%の失業率はとても低い水準です。
失業率が上昇する局面は、景気後退の開始時期と重なります。今回、失業率が3.6から3.5に下がったことで、まだ景気後退が先ではないかという期待感がもたれています。では、失業率が低いままでこのまま続くのでしょうか? こちらをご覧ください。
失業率と株価の関係です。結論から言いますと、失業率を表した黄色いチャートが上昇したときは、グレーのS&P500のチャートが下がっていることから強い相関関係にあると言えます。
黄色いチャートの失業率が大幅に上昇したときには、S&P500は大幅に下落しています。そのため、今後、失業率が上昇するのかしないのかが、とても注目されているわけです。先月3.6%から3.5%に下がったことで、まだ株価はそんなに大崩れしないと考えるマーケット関係者もいるでしょう。
次に、失業率が今後どうなるかを確認します。まず実は失業率に関係があることから見ていきます。こちらの資料は、銀行の貸出態度を調査したものです。
40%を超える水準というのはグレー網掛の景気後退局面では貸出態度が厳しくなることが分かっています。その意味では、今後景気後退に突っ込んでいくような貸出の厳格化が進んでいると分かります。
さらにこちらをご覧ください。こちらは貸出のボリュームがどうなったかを表しています。
3月下旬の2週間、アメリカの商業銀行のローンとリースの残高、貸出が大幅に減少したと報告されています。減少の幅は、ITバブルやリーマンショックを上回るほどの急激な信用収縮とのことです。貸出態度もさることながら、実際の貸出も減ったことが確認されました。
では、貸出態度はS&P500に大きく影響する失業率に、どのような影響があるのでしょうか。こちらをご覧ください。
こちらのチャート、黄色いチャートが失業率で、上昇は失業率の上昇を表します。青いチャートは銀行の貸出態度を表しています。貸出態度が上に向いた後、失業率は遅れて上昇する傾向があります。1999年も貸出態度が2000年に向かうにつれて上昇し、2000年に入って失業率が上昇する。リーマンショック時も2006年から貸出態度が厳格化し、その後2007年から失業率が上昇しています。コロナショック時も同じように、まず貸出態度が厳格化し、失業率が上昇する傾向がありました。今回も40%を超える貸出態度の厳格化の水準となっています。今後おそらく失業率が上昇してくるというのが、1つ目のポイントです。
2つ目のポイントです。失業率は確かに貸出態度に遅れて上昇しますが、過去を見ると、かなりタイムラグがあると確認されています。まだ失業率は低いまま推移するのではないか。株価はそんなに大きく崩れないのではないかと、お考えの方もいるかと思います。しかし、よくよく見ると、貸出態度が40%を超える水準の後は、早々に失業率が上がる傾向があります。今回、貸出態度が40%を超えてきましたので、来月以降の失業率は、もしかしたら上昇に転じる可能性があると意識しておく必要があります。今回3.6%から3.5%に下がったので、株価にはそんなに影響がない失業率水準だと考えると、そろそろ転換点を迎える可能性があることには、注意が必要でしょう。
さらに失業率が上昇するかもしれない背景として、こちらもご覧ください。下のグラフはジョブレスクレーム、新規失業保険申請件数を水色のチャートで表しています。これは逆メモリですから、チャートが上に行くほど失業率の申請件数が少なく、下に行くほど失業保険申請件数が多いことを表します。
これと相関が高いのが、濃い青のチャート、融資の貸出態度です。貸出態度が下に向かう(厳格化する)ようであれば、失業保険の申請件数が増えると確認されています。こういったギャップが生まれている状態ではありますが、引き締めが続くとなれば、いずれ失業保険の申請件数が増えてくるのではないかと言われています。
新規失業保険申請件数に注目する理由です。新規失業保険の申請は、失業率とすごく相関が高いです。そのため、月に1回発表される雇用統計よりも、毎週発表される新規失業保険件数に、今後マーケットがさらに注目する可能性があります。4週移動平均の23.7万人という数字が上昇するようであれば、失業率上昇につながると、今後見ていただければと思っています。
では、実際に上昇してくる可能性があるのでしょうか。インディードの求人件数は減少傾向にありますし、チャレンジャーが公表している人員削減の数字もかなり増えています。労働需給は改善してきている状況で、申請件数が増えてくる可能性が高いというのが1つです。
さらに、雇用統計で発表された週平均の労働時間は34.4時間。前月から、さらに減少しています。20年4月以来の低水準と、仕事をもらっている方の平均時間は34.4時間まで減っています。雇用主は人員削減を行う前に、従業員の勤務時間を短縮することで、まずはコスト削減を行う傾向があります。Indeed、チャレンジャーが公表している人員削減計画に加え、雇用統計で出た週間平均労働時間の減少、短縮は、今後の雇用者数減、失業率上昇の兆候にも見られます。今後の失業率には、注目が必要です。
7日に発表された雇用統計で、ある程度の顕著な数字が確認でき、安心材料になりました。ですが、失業率が3.5%に下がったことで、失業率上昇の材料も徐々に増えています。
銀行の貸出態度は、これから厳格化が進むと予想されます。そうなると、失業率上昇は株価にも大きなインパクトを与える可能性があります。毎週の新規失業保険申請件数、雇用に関するニュースが、これから注目される局面になってきます。今後もそういったところの情報を収集していただきたいと思います。
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