今週、最も注目されていたFOMCが木曜日の早朝終了しました。結果はタカ派的だと報じられている一方で、これはあくまでもポーズだという意見もあります。そこで今回は、タカ派はポーズであるか、どうかをお伝えしたいと思います。
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まずは左のドットチャートをご覧ください。青のドットは、今年3月FOMC後に発表されたもので、白が今年6月のドットです。赤丸、赤矢印で示したように、2023年は0.5%のターミナルレート、利上げ最高到達点の見通しを上げてきています。24年も0.25%の上方修正となっています。FRBメンバーは、23年、24年共にインフレが鎮静化していないため、ターミナルレートを上げてくる、タカ派な内容になっていることが分かりました。
また発表において、「今後の利上げは1回おきに状況を見ながら行う」とのコメントがありました。今回の6月は見送り、7月に利上げ、9月は見送り、11月に利上げすることとなります。7月、11月に各0.25%の利上げがヒントとして与えられている状況です。
それを受けて、Fed Watchがどうなっているか。右をご覧ください。市場予想としては、7月利上げ予想は71%近く織り込んでいますが、右の図表、赤括弧で示したように、11月の利上げはほぼ予想していません。9%しか織り込んでいない状況です。マーケットは、2回の利上げはタカ派的ポーズではないかと考え、市場としては、さほど警戒感を持っていない状況です。
FRBがなぜそういったことを言っているのか。0.5%の利上げに実現性があるのかを見てみましょう。
3ヶ月に1度発表されるSEP(経済見通し)が発表されました。中身を見ると、今後、注目すべき内容が明らかになった印象があります。下の図表、左が3月に発表されたSEP、右が6月に発表されたSEPです。
まず見ていただきたいのが、右の図表の青枠と黄色枠です。青はターミナルレートで、23年が5.1から5.6、24年が4.3から4.6に上方修正されていることが分かります。
上方修正の理由です。もともとFRBは、政策金利を引き締め的に行う場合、コアPCEに対して、約2%程度上に金利を持っていくことで引き締めた状態にするというのがベースにあります。今回3月のコアPCE見通し、23年が3.6%から3.9%に約0.3%引き上げられています。フェデラルファンドレートのターミナルレートも5.1から5.6に引き上げられたということは、正当化できる内容になっています。
コアPCEが3.9%を下回ることがあれば、マーケットが言うように、ポーズに終わる可能性もあります。もし23年末が3.9%まで鈍化してくると、0.5%の利上げはポーズではない、実際に起こり得ることを警戒しておく必要があります。
今後ライブで行うと言っていますから、PCEが常にヒントになる可能性があります。まずは物価がどうなるのか、コアのPCEがどうなるのかに注目が必要です。ちなみに前月は、前月比+0.4%でした。このペースが続くようであれば、PCEはそこまで鈍化しません。ここまで下がるかどうかの確信は、マーケットは持てていない状況です。
インフレは明らかに低下傾向ですが、コアPCEは横ばいが続いていることに、ぜひ今後注目していただければと思います。
コアPCEが高くなり、フェデラルファンドレートを上げたとしても、FRBメンバーはGDPの前提として、3月時点で0.4%を1%に上方修正し、失業率も4.5%まで上昇とされていたものを4.1%まで下げています。
経済に対する見通しの強さを表したことも、マーケットにはプラス材料になっています。PCEが高止まりし、GDPが低下する、失業率が上昇する場合、FRBはどういう政策を取ってくるかが余計に注目されることとなっています。物価が高いこと、PCEが3.9%になったことに対して、引き続きタカ派的にいくものの、経済が予想ほど悪化せず、失業率も予想ほど上昇しないことを前提に政策を判断しています。ある一部の金融機関では言われているように、今後マーケットで7~9月期以降リセッションに入る状況になったり、失業率が上昇する状況になったりした場合、本当にタカ派を貫き通せるのかどうか。物価を優先してタカ派になった場合、経済や失業率が大きく上昇するのではないかが、今後注目されます。
コアPCEだけではなく、失業率とGDPにも注目が必要だと分かりました。今後も失業率や経済について、しっかりと見ていく必要があると改めて浮き彫りになっています。
15日、失業保険の申請件数、雇用に関する指標が出されました。15日に発表された新規失業保険の申請件数は26.2万件。予想の24.5万件を上回る結果に。前回と変わらずではありますが、明らかに上昇トレンドになっていることが分かります。左の図表、新規失業保険の申請件数は、21年10月以来の高水準となりました。
右は4週平均で、24.6万人と上昇。こちらも21年10月以来の伸びとなっています。マーケットでは、新規失業保険の申請件数が40万件を超えてくると、雇用創出の分岐点でマイナス雇用になると言われています。一方、3万件の増減は雇用情勢を反映していますから、申請件数3万件の増加は、雇用条件が悪化していると認識されています。
ブレ幅の少ない4週平均を見ると、今年頭には20.9万人だったものが、現在は24.6万人と、既に3.7万人以上増加しています。雇用情勢がタイトな状態から少し緩んできていることが分かります。今後雇用者が減ってくるということは、失業率が上昇する可能性があります。FRBの予想失業率4.1%に、3.7%まで上昇している失業率が肉薄してくれば、マーケットはどう反応するのかに注目が必要です。
さらに、こちらをご覧ください。新規失業保険申請件数です。景気のボトムに対して、2ヶ月の先行性があると言われています。ボトムアウトする場合、新規失業保険申請件数がピークアウトすることが条件となります。過去、長い期間を取ったものをご覧ください。グレーの網掛けがリセッション(景気後退)、赤い矢印は新規失業保険申請件数がピークアウトした後、景気がボトムアウトしていることを示しています。現在、新規失業保険申請件数が増えていることから、今後景気後退を迎える可能性があり、景気後退のボトムをまだつけていないのではないかと考えられます。
最後にこちらをご覧ください。今回のタカ派がポーズなのか、そうでないかは今後の経済指標次第となりますが、もしもターミナルレートが今から0.5%、もしくは0.25%となって引き上げが続く場合、どこに警戒が必要か、別視点からお伝えしたいと思います。
左はFinancial Timesから得た資料です。投資適格でない企業に対して銀行が向けたローンを、レバレッジド・ローンと呼びます。ピンクのチャートはレバレッジド・ローン、青はハイイールド・ボンドです。こちらが示しているものは、デフォルト率です。同じものを企業は対象にしていますから、レバレッジド・ローンもハイイールド・ボンドも、デフォルト率は同じく上昇する傾向があります。レバレッジド・ローンは変動金利、ハイイールド・ボンドは固定金利で構成されていますから、レバレッジド・ローンは変動金利の影響を受けやすいことが特徴です。ピンクの部分が示すように、金利上昇を受け、デフォルト率が大幅に上昇しています。
今後もこれが続くようであれば、ハイイールド・ボンドにもマイナスの影響が出る可能性があります。ただ、現状HYGなどの価格が堅調に推移していますから、警戒感は非常に薄いです。もし顕在化してくるようであれば、マーケットには大きなマイナスのインパクトになり得ます。炭鉱のカナリアがどういう動きをするか、引き続き注目いただきたいと思います。
最後に、右の図をご覧ください。みずほリサーチから手に入れたこちらの資料では、レバレッジド・ローンのデフォルト率とEPSの関係が示されています。横軸は4半期を表しており、レバレッジド・ローンのデフォルト率が上昇すると、EPSには1年半近くマイナスの影響が続くことが読み取れます。
EPSの上方修正が続いていることで、株価の上昇を牽引しているところがありますが、レバレッジド・ローンのデフォルト率が上がってくるようであれば、EPSにマイナスの影響があると確認できています。EPSの上昇を前提としたマーケットも転換点があるかもしれないということには、注目いただければと思います。
本日は、FOMCにおいて示された0.5%の利上げが本当にタカ派的なのか、それともポーズなのかを分析しました。レポート等を見ると、タカ派的なポーズではないかとする向きもあります。マーケットとしても、11月の利上げはまだまだ折り込んでいない状況です。コアPCEが下がってこない状況が続くようであれば、FRBが0.5%の利上げを行う可能性があります。それを折り込んでいないのは、金利が上昇することが企業業績にマイナスのインパクトを与える、レバレッジド・ローンのデフォルトが増えることも理由となります。
FRBが金利を上げても耐え得ると考えている、失業率4.1%に収まるとの前提、GDPが予想よりも少し良いという前提が崩れてくるようであれば、本当にかじ取りの難しい状況となり、マーケットは混沌としてくる可能性があります。FOMCは、今後ライブで判断していくと言っているように、その都度マーケットがざわつく可能性があります。決め打ちすることなく、しっかりと経済指標を見ていく必要があるでしょう。
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